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第百九十五話 新たなる『理』

日本語ってむつかしい。


「あー清々しい! 長い間一カ所に閉じ込められちゃって退屈してたんだよ! 本当に、解放してくれてありがとう!」


 シルヴェイトは俺の周りを嬉しそうに飛び回っている。


(……この組み合わせは思っていた以上にやばいな)


 ロリ枠は俺の中では対象外だったのだが、そこに巨乳おっぱいが追加されると、想像をはるかに超えた破壊力を発揮するのを今この瞬間に思い知った。小柄な体躯ながら着物を窮屈そうに押し上げるたわわの対比が凄い。大きさ的にはこれまで見てきた『たわわ女性』の中でも下のほうだろうが、比率で言うとトップクラスでは無かろうか。


 纏っているのは子供用の着物のような風だが、何故か丈は短くミニスカート状。色気は無いが健康的な足つきが逆にまぶしい。でも不思議とその中身が見えそうで見えない。チラリズム趣味は無いが気になって仕方が無い。


「……あんまりエッチな目で見ちゃ駄目だよ。これでも私、君の数百倍以上も生きてるんだから」


「見た目が若くて綺麗でおっぱい大きければ歳なんてどうでも言いのじゃぁぁ!」と喉まで出かかった叫びを堪えた。俺がのじゃロリ口調で憤ってどうするんだよ。


 気を取り直すと、シルヴェイトが申し訳なさそうに言った。


「君に触れて貰うまで思うように『声』が伝わらなかったの。本当はもっと早くにこうして会いたかったんだけど、ごめんね」


 魔杖を直接目にしてから感じていた不思議な感覚は、おそらくシルヴェイトからの『声』だったのだ。


 最初に魔杖に触れたときに俺の中に流れ込んできたのが『風のことわり』──の一部。それから彼女シルヴェイトの──風の精霊を明確に感じ始めたのだ。氷の精霊術を会得したとき同じだ。


「あの魔杖は精霊わたしたちを封印し、魔力で隷属させるためのものだったんだよ」


 シルヴェイトの話を聞いて、俺は確信した。


 セリアスが今まで使っていたのは魔術式ではない。


 上っ面だけ魔術で覆った『精霊術』だ。


 魔力だけを読み取っても全貌が読み取りにくかったわけだ。なにせその本質は精霊術であり、魔力は単なる呼び水に過ぎなかったのだ。


「お前も、このオウジサマが持ってる『魔杖』って奴に封印されてたのか。氷の婆ちゃんと同じだな」

「私も……か。氷の精霊術を使ってるからもしかしてと思ったけど、セラファイドと会ったの?」


 俺は氷の大精霊は霊山にあった『魔槍』によって封印されていたこと、そしてそれを解放した事をシルヴェイトに告げた。


 ──そういえば婆ちゃんの名前を今知った気がするな。


「そっか……封印されている間にも彼女が封印されたのは風を通じて分かっていたけど。君が無事に解放してくれたんだね。ありがとう」

「成り行きっつーかやらされた感があるけどな」


 それでも、今の今までこうして無事でいられるのは間違いなく氷の婆ちゃんセラファイドのおかげであるし、文句は無い。


「──と、積もる話はあるにはあるけど、そろそろ限界かもね」


 シルヴェイトが辺りを見回しながら言った。俺には特に変化が見られないが──。


「もしかしたら知ってるかもだけど、今の君は精神だけが百倍以上の速度で加速している状態なんだよ」

「ああ、婆ちゃんの時も似たようなこと言ってたな」

「実はこれ、あんまり長時間続けるのはよろしくないんだよね、君の体感での話だけど」

「あら、そうなの?」


 俺的にはさほど違和感は感じていないが。


「あまり長いこと続けてると、心と体のバランスが崩れて、下手すれば発狂しちゃう」

「マジでか!?」

「と、言うわけで早速『理』を渡しちゃおう」

「ノリが軽いな!」


 そういうのって、もっと厳かな雰囲気でやるもんじゃねぇのか!?


 ──と思ったが、最初に不意打ちで『理』を会得させられたときよりも遙かにマシか。


 あの時は本気で死ぬかと思ったからな。


 また同じような思いをするのは仕方が無いにしても、前置きがあるのと無いとでは違ってくるだろう。


 それに──。


 俺は時が止まった世界で、レアルの方に顔を向けた。


 周囲の人間が驚きや熱気に包まれている中、彼女は真っ直ぐにこちらを見ている。


 何の不安も無く、一片の憂いも無い。


 浮かんでいたのは混じりけの無い信頼感のみ。


 俺が負けるという可能性を、微塵も考えていない顔。

 

「ふぅ……」


 俺は覚悟を決めてシルヴェイトに向き直った。彼女も俺の視線を受け止めると、柔らかい笑みを浮かべた。


「うん、いいよ。さすがは『純白の魂』を秘めた者。強い意志の力を感じる。そうでなくっちゃね」


 シルヴェイトが手を差し伸べてきて。


「──あ、ちょっと良いか?」


 厳かな雰囲気がちょろっと出てきたところで、俺は待ったを掛けた。シルヴェイトが少しだけ『ガクリっ』となる。


「…………君も大概にノリが軽いなぁ」

「よく言われるよ。それよりも、実は前に氷の婆ちゃんを解放したときに封印していた槍がへし折れちまったんだけど──」


 今回も同じように魔杖が折れるとヤバい。なにせエルダフォスの国宝なのだ。俺が壊したと発覚したら、その場で処刑されてもおかしくは無い。


 その事を伝えると、シルヴェイトは困ったように苦笑する。


「普通は私たちを封印できるほどの器が物理的に折れるのはあり得ないんだけどね。……でも分かった、何とかしてみるよ」


 でも、とシルヴェイトは神妙に言った。


「魔杖のことが無くても、間違いなく君の前には苦難が待ち受けてる。この国には『あいつ』の手先がいるからね」

「──あいつ?」

「でも大丈夫。なんてったって、私が力を貸すんだから」



 俺が更に問いかけようとするよりも早く──始まった。



 ──どれほどの屈辱に塗れようとも、決して色褪せない魂。



 ──何人たりとも犯すことの無い、絶無の純色。



 ──神に愛されなかったが故に、神の埒外にある忌み子。



 ──けれども、この世の誰にも束縛されぬ、孤高の王。 



 シルヴェイトは俺に問いかけた。


「君は『理』を得て何をする? 何を願う?」

「そんなの決まってんだろ」


 俺は拳を握りしめた。


 今この瞬間に、最も強く願っている事。


 それは──。


「惚れた女との逢瀬を邪魔してくれた、そこの馬鹿王子をぶっ飛ばす! 今はそれだけだ!」


 俺の答えを聞いた瞬間、シルヴェイトはいよいよ高らかに笑った。


「あはははっ! そうだ! 君はそれで良いんだ!! だからこそ精霊わたしたちは君を選んだ!!」


 『風の大精霊シルヴェイト』は手を差し伸べ、俺はそれを──力強く握りしめた。


 「『かんな』の子よ!! 君は君らしく、君の思うままに行くが良い! さすれば『風』は君の願いに応えるだろう!!」


 最後に輝かんばかりの笑みを浮かべたシルヴェイトが言葉を放ち。


 俺の意識は弾けた。


 


熱く盛り上げる演出ってめちゃくちゃ難しいと、毎度思うナカノムラです。

それはそうと、いよいよ『小説家になろう公式生放送』の出演が迫ってきております。

人生で一度あるかないかの機会ですので、楽しみつつ頑張っていきたいと思います。



『カンナのカンナ』を読んでいただいた方、ありがとうございます。

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作品への感想やレビューも大歓迎です。


では以上、ナカノムラでした。

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