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第百七十三話 体格差では判別不能な種族だな、エルフって

お待たせしました(コミケに行ってたんです)。

三日間の連続更新第一弾です。


 

 歓迎されていない空気ではあったが、それは雰囲気的な意味だけに限った話。


 俺たちディアガル帝国の一行が滞在する場所として、エルダフォスの最高級宿が用意されていた。他にも、ある程度の自由な外出許可も出されたりと、曲がりなりにも友好国の一行を出迎えるに相応しい対応であった。


「何でこうも短期間に皇帝やら王様やら、雲の上にいるような存在と顔を合わせなきゃならんのよ。俺もファイマやクロエと一緒に観光したかったよ」

「護衛が護衛対象を放ってほっつき歩けるわけ無いだろ、馬鹿者」


 エルダフォスの王城の中を歩きながら俺がぼやくと、少し前を歩くレグルスレアルが咎めるように言った。


 俺が今言った二人とエルダフォスに来た帝国軍の大半は、先ほど述べた宿で待機だ。大人数でぞろぞろと王城に向かうのは相手の警戒心を刺激すると言うことで人数を絞ったのだ。ともあれ、人員を選別したのは団長レグルスその人。戦力的な不安は皆無であろう。


 お留守番ではあったが、ファイマにとってはむしろ僥倖。外出許可も出ているので、早速エルダフォスの書店周りを行うと言っていたな。こちらにはクロエとキスカ。それと帝国軍人数人が付くことになっているので不安は少ない。普段はポンコツでもクロエの戦闘能力は高いし、前衛さえいてくれるのならばファイマも魔術士として戦える。


 それに、ファイマには幾つか氷結界の結晶を渡してある。最悪場合、それが発動した時点で俺にそれが伝わってくる。


「これより先、エルダフォス王がお待ちです。皆様、ご準備をお願いします」


 大仰な扉の前に到着すると、アラムが少し緊張を孕んだ声でこちらに言った。いよいよ、エルフの王様とご対面か。


 ふと、興味本位に意識を集中し、扉向こうの気配を探ってみる。一応、護衛としての役割もあるため警戒するのは自然だろう。


 ただ、俺は眉をひそめた。


 ──なんか、気配ひとの数が凄いことになってるんですけど。


 五人や六人、という数では無い。それこそ二十を軽く越える人間が扉の向こうに存在している。正確な人数は数が多すぎて判断できない。


 考え直してみると、友好国とはいえ外部の人間を呼ぶのだ。王を守護する人員を多く配置していても不思議では無い。


 だからといって、気を緩めて良い理由にはならない。最低限の緊張感は必要だ。ただでさえ今まで友好的な雰囲気とは言い難かったのだ。突然暴挙に出る輩がいないとも限らない。


 レグルスレアルが視線で『異常は?』と問いかけてくると、俺は首を横に振った。


 ただ、小声で「扉の先に大人数。多分護衛だと思うが」とだけは伝えておく。レグルスレアルは特に驚いた風も無く頷くと前を向き直した。


 こちらの準備が整ったのを見計らい、アラムが扉を軽くノックした。


 ──いよいよ、エルフの王様とご対面か


 合図から少しの間をおき、扉が内側から両開きになる。


 俺たちはレアルを先頭にして広間へと足を踏み入れた。


 入り口から仕立ての良さそうな敷物カーペットが伸び、王座へと一直線に伸びている。


 その両脇に王を護衛する騎士だ。


 数は予想通りかなり多い。ディアガルと様式は異なりながらも美麗と屈強のイメージを併せ持つ鎧を纏った兵が剣を眼前に構え、切っ先を真上へ向けている。


 こちらは良いのだが、問題は並ぶ騎士たちの背後だ。


 街を歩いていた市民よりも明らかに身なりの良い格好をしたエルフイケメンたちが、揃いも揃ってこちらを注目している。それも一人や二人などと言う生やさしい数では無く、ぱっと見でも百人近くはいる。


 この数にはさすがにレグルスレアルも驚いたのか。先を歩くその肩が若干強ばったのが背後でも分かった。


 小さな喧騒の中、敷物カーペットの柔らかい感触を足裏に感じ歩を進めながら、首が動かない程度に視線だけで周囲を観察。気配を探る感覚を最大限に高める。


 視線の中に強い敵愾心は少ない。ただ一方で、疑惑や戸惑いの色が空気に滲んでいる。その矛先は──レグルスレアルが中心だ。


 確かにレグルスレアルは公務の最中は常に顔すらも覆う全身鎧を纏い、注目を集める格好をしている。だが、それを差し引いたとしてもこの状況には疑問を感じる。


 そんなことを考えていると、やがてレアルが足を止めた。目を前方に向けると、視線の先にいたのは三人のエルフ。


 中央にいるのは玉座に構えるエルフ──おそらくエルダフォスの王だろう。


 正直に述べてしまうと、年齢不詳はともかく性別不詳な顔たちだった。


『男』と見れば端正な顔たちのイケメンだし、『女』と見れば男装のご令嬢と称しても間違ってないほど顔が整っている。一つの例外レアルを除けば、俺が今まで見てきたどのエルフよりも美しい存在だ。


 その脇に控えているのが、二人のエルフ。


 片方はこれまた整った顔たちをしていたが、王よりかは強面で男性的な印象が強い。


 もう片方は──そもそも性別からして不明だ。


 顔を仮面で覆い隠しているのだ。そもそも、エルフは男性も女性も、良くも悪くも躯の線が細いので体格から男性か女性かの判断がしにくい。


 余所様の事を好き勝手に言えるような立場では無いが、仮面で顔を隠す相手に注意を向けるのは当然。どうにか気配の質を探ろうと意識を傾けるが、距離が離れている上に一つの空間にこれだけの人数がいると、一人の焦点を当てて気配を探るのは難しい。


 帝国軍の面々が一斉に膝を突き、俺も遅れないように膝を地面に突いた。


「お初にお目に掛かります、エルダフォス王」


 先頭にいるレグルスレアルが、良く通る声を発すると、広間の内部に残っていた喧騒が無くなり、静まりかえる。 


「ディアガル帝国軍所属幻竜騎士団団長『竜剣』レグルス、ディアガル皇帝陛下より親書を預かりここに参上いたしました」

「うむ。よくぞ参られた、帝国軍の将よ。そなたの武勇は隣国であるこのエルダフォスにも伝え聞くところだ」

「はっ、恐縮であります」


 一国の王というだけあり、エルダフォス王からはディアガル帝国の面々に対する強い警戒心や嫌悪の色は感じられない。友好関係を結んだ隣国の使者を迎えるに相応しい態度であろう。


 王様相手に上から目線の判定だな──と、微妙な気分になる俺である。


長々と街並みの説明とかするのもあれなので、早速王城に突撃です。

なお、今回の連続更新の最後で重大な事実が一つ明らかに。

お楽しみに。



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