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第百四十一話 ルビフリは万能かもしれない

あけましておめでとうございます。

新年初投稿です。今年もよろしくお願いします。


 俺の突発ライブはらのむしが発端ではないが、本日の会談はこれで終了となった。互いに情報を整理する時間が必要ということで、続きは後日ということになった。

 

 謁見の間を後にした俺たちは廊下を歩く。

 

 じんじんと痛む頭をさする俺に、クロエが心配そうに声をかけてきた。


「大丈夫でござるか、カンナ氏?」

「……あんまし大丈夫じゃない」


 扉越しに響くような音の鉄拳げんこつが痛くないはずがない。衝撃がまだ頭の残り、視界が明滅チカチカしているような気さえする。


 痛みはあるが、それと同時に腹が立ってきた。


「しょうがねぇだろうよ。お腹が空いたんだから。生理現象だっつの。どうやって我慢しろっちゅーねん」

「カンナ氏、変な方言が出てるでござるよ」

「なんちゃってござる口調のおまえに言われたくねぇ!」

「カンナ氏はたまに理不尽に怒るでござるな!?」


 緊張感から解放された反動で、俺たちは騒ぎながら廊下を歩く。一国の主こうてい顔合わせは思っていた以上にキツいものがあった。幸い、皇帝は威厳には満ちていたが話しやすい人物のようで助かったが、これで礼儀に厳しい人だったら俺は何度不敬罪で訴えられたか分からない。


「……ねぇ、ちょっといいかしら?」

「あん? どうしたファイマ」


 とりあえずクロエわんこの頭をアイアンクローで締め上げ「扱いが雑でござるワギャァァァァッッ!」ていると、ファイマが複雑な表情を浮かべていた。「さっき言ったわよね。私がユルフィリアの第一王女だって」


「聞いたな」

聞いたでござるぎりぎりしまるぅぅっ!!」


 クロエがルビで答えたな。器用だな。


 俺たちの答えがお気に召さなかったのか、ファイマは額に手を当てながら首を振った。


「……どうしてそれで以前と全く変わらない態度なのかしら。言ったとおり、これでも私は一国の王族なのだけれど。それとカンナはいい加減にクロエさんを解放しなさい」


 言われたとおりに、クロエの頭から手を離す。


 それから、俺とクロエは揃って顎に手を当てて考え込んだ。


 ………………………………。


「「あんまり興味ない(でござる)」」

「いや興味ないってちょっと……」


 しばらくの黙考の後、出た結論は二人とも同じ。それを聞いたファイマがガックリと肩を落とした。


「逆に聞くが、ファイマは俺たちに態度を変えてほしいのか、それとも今まで通りにしてほしいのか。どっちだ?」

「そ、それは今まで通りが良いけれど……」

「むしろ、態度を変えろと言われたら拙者たちが困るでござる」


 ファイマが許してくれるなら、俺としてはこれまで通りでお願いしたい。クロエも同じだった。


「ファイマが王女様だってのはさすがに驚きだったが、だからといって、それで付き合い方を変えるほどおまえとの繋がりは薄いつもりはないぞ」

「拙者もでござる。カンナ氏ほどファイマ殿を知ってはござらんが、ファイマ殿が態度一つで関係を改めるような御仁でないのはわかるでござるよ」

「そう……ありがとう。だったら、これまで通りの接し方でお願いね」


 俺たちの言葉を受けて、ファイマは胸のつかえが取れたような晴れやかな顔になった。俺たちに王女である事実を告白したことが、彼女にとって大きな負担となっていたようだ。


 ただ、ファイマが身の上を明かしたのならば。


 そろそろ、俺も二人に秘密にしていたこと──俺が異世界からの召喚された人間であると告白するべきなのかもしれない。特にファイマは俺をこの世界に呼び寄せた張本人の姉だ。ファイマが俺の召喚に関わっていなかったとしても、あの腹黒姫の思惑に心当たりがあるかもしれない。 


 気になるのは、腹黒姫に感じていた『あの気配』をファイマからは感じなかった点。今でもそれは変わらない。

『あの気配』はおそらく大いなる祝福アークブレスに属しているか、それに類する人間の魔力から発せられるものだ。だとすると腹黒姫も大いなる祝福アークブレスの一員と考えるのが自然だ。


『あの気配』は同じ血が流れていても遺伝するものではないのだろう。『あの気配』が何なのかも非常に曖昧だ。個人的に非常に不快感を感じさせる、という事以外は分かっていない。


 そもそも、大いなる祝福アークブレスにファイマが狙われているのなら、当然その事実を妹の腹黒姫が知らないわけがない。


 元々怪しげな組織という印象が強かったが、知れば知るほどきな臭さが深まってくる。


(ちょっと待てよ? あの腹黒姫が大いなる祝福アークブレスの一員であるのならば)


 ──『勇者召喚』も大いなる祝福アークブレスの計画の一部?


 勢いで考えた割に、とんでもない結論にたどり着いた。


 一度、ファイマと深く話し合うべきだろう。


「カンナッ」

 

 改めてファイマと会う約束を取り付けようとしたところで、レグルスレアルの声に思考が中断した。振り返ると、未だ鎧姿の幻竜騎士団団長様がこちらに近づいてくる。


「申し訳ない。君だけ少しだけ残ってくれないか?」

「……俺はおまえさんに拳骨された頭がまだ痛むんだが」

「あれは──私も些かやり過ぎたと思っている。そのお詫びといってはなんだが、昼食をご馳走させてくれ」

「なんですと?」


 クピキュルル…………。


 おっと、ご馳走という単語に早くも俺のお腹が反応してしまった。頼むから自重しろよお腹の虫たち。


「ただ申し訳ないが、ほかの皆には下がってもらいたい。彼には個人的にしておきたい話があるのでな」

「……了解だ。悪いがクロエ、ファイマ。ここでいったんお別れだ」

「分かったでござるよ、カンナ氏、拙者はこれにて失礼するでござる」


「ファイマ殿もまたでござる」とクロエは頭を下げると早歩きで去って行った。皇帝の面前から離れたとはいえ、皇居内にいるのは落ち着かないのだろう。狼の尻尾がせわしなく揺れている。


「あ、それとファイマ。悪いが後で会えないか? おまえにはいろいろと話しておきたいことがある」

「……ええ、良いわ。私も身の上以外にも話しておきたいこと、あなたに聞いておきたいことがあるから」


 ファイマは神妙な様子で頷いた。


 どうやら、俺だけではなく彼女もまだ大きな『何か』を抱えているようだ。


「私の用が終われば、ファイマ嬢のところに使いを出そう」

「お願いします。じゃあ、カンナ。また後で」

「おう、後でな」


 俺はファイマと分かれると、レアルの後に続いて再び皇居の中へと進んだ。


一日と二日はゲームで遊び倒したのでそろそろ執筆活動再開です。

ルビフリ逆じゃね? というツッコミは無しでお願いします。なるべくならルビ(振りがな)に漢字を使いたくなかったのです。


それはそうと、明日も投稿します。

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