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第百二十五話 ボイコットしてボッコボコにしたい

連続更新三日目ぇぇぇぇ!


サブタイトルは最後まで読めばとりあえず分かるかもしれない。

「あの者は……」

「今回の事件の黒幕だ。それに──」

「──以前に、私を操っていた外道ですか……」

「ファイマから聞いてたか?」 

「いえ。……ですが、これ・・が疼くのです」


 爪を立てるように、クロエは己の胸元に手を当てた。かつてそこには、彼女を支配し、傀儡としていた忌まわしき宝石が埋め込まれていた。既に取り除かれはしたが、傷は未だそこに残っている。


「私の中に、操られたときの記憶はほとんど残っておりません。ですが、姿を目にし、声を耳にし、魔力を感じ取ると、この傷が教えてくれるのです。私を傀儡にしていた外道は、間違いなくあの者なのだと!」


 犬歯をむき出しに、怒りをあらわにするクロエ。彼女に〝火〟がついているのは、口調が変わっている時点で察していた。


「怒りは奴に刀をぶっ込む瞬間に爆発させろ。俺が許す」

「──怒るな、とは仰らないのですね」

「事情は知ってるからな」


 間違えてはならないのは、怒りを向ける相手だ。それさえ誤らなければ、怒りはモチベーションの大きな原動力になる。


「でもってファイマ、お前は何で手ぇ出してんだよ。あのショタが一番に狙ってるのは間違いなくお前だぞ?」


 俺はファイマは咎めるが、彼女は彼女で険しい顔をラケシスに向けている。表情には隠しようのない焦燥が浮かんでいた。


「魔術士の視点から見て、あの子──いえ、ラケシスあいつは間違いなくAランクに匹敵する実力の持ち主だわ」

「マジか……や、当然といえば当然か」


 ラケシスが大いなる祝福アークブレスに属するものならば、シュライアと同等の実力を秘めていたとしても何ら不思議ではない。


「カンナとクロエさんの実力を疑っているわけではないわ。けど、常識的に考えて、BランクとCランクのコンビじゃとても太刀打ちできない相手よ。なら、手は一つでも多い方がいいでしょう?」

「そりゃそうだが──」

「私は、守ってくれる仲間が入るならBランク冒険者にも引けをとらない。足手まといにはならないわよ」


 先ほど放った『暴風の槍』は俺の氷砲弾を大きく上回る威力を秘めていたし、魔術式を行使したファイマも魔力の消費で疲労している様子はない。たしかに、心強いのだが。


「だったら、アガットやランドも一緒の方が……」

「残念だけどそれは出来ないわ」


 ファイマは首を横に振った。


「細かい理論の説明は時間が足りないから要点だけ言うわよ。ラケシスの操る糸の一本一本には、尋常じゃないほど緻密な魔術式と魔力が込められているわ。あの糸は武器であると同時に、相手を傀儡とする触媒である可能性が高い。あの糸を打ち込まれたら、ラケシスの操り人形にされる恐れがあるの」

「……なるほど、『糸使い』とは言い当て妙だな」

 

 もちろん、ほめ言葉ではない。


「ランドもアガットも優秀な前衛だけど、ラケシスの糸に対抗できるほど魔術士としての能力はない。下手したらあいつの戦力を増やす結果になるわ」


 ミイラ取りがミイラが、という展開か。ゾンビが出てくるパニックホラー映画の定番だな。


「普段から魔術を扱っている私たち・・・なら問題ないわ。外部からの魔術に耐性があるもの。少なくとも即座に操られる心配はない」


 時間を掛ければその限りではないでしょうけど、とファイマは最後に付け足した。


「私は大丈夫でしょうか? 魔術士ではありませんが……」

「クロエさんもおそらく大丈夫。精神作用の魔術は、一度克服すると耐性が出来やすいの。黒狼族の強靱な肉体ならなおさらね。私たちと同じ、短時間で操られる可能性はないと思って良い」


 つまり、ラケシスとまともに戦える人間はこの三人しかいないのか。


 Aランク冒険者の実力は骨身に染み着いているが、Aランク冒険者の〝本気〟は体験したことがない。そのため、この人数で果たしてラケシスに対抗できるかは未知数。旗色の悪さは変わらないな。


「クロエ、お前さっきあいつの糸を斬り裂いてたよな」

「『雷刃』を使用すればどうにか。ただ、やはり長時間の使用は出来ません」


 クロエの使う魔術式『雷刃』は、斬撃の威力を飛躍的に増す効果があるが、使いすぎると刀全体が高熱を帯びる欠点がある。


「ファイマ、お前は後方から援護に徹してくれ」

「自分の運動能力の低さは自分が一番知っているわ」


 俺はラケシスを正面に、クロエたちに背を向けた。


 ……俺は考え込むように口元に手を当てる。


 冷たい空気と沈黙が漂う。


 しばしの間、場には遠くから聞こえてくるのは飛竜の咆哮と魔獣の断末魔だけが響いていた。


 ──これでいくしかないか。


 俺は口元から手を離す。


「クロエ、お前はファイマの前を固めろ。前衛は俺がやる」

「それだとカンナが一番危険にさらされるけどいいの?」

「クロエの『雷刃』は使いすぎると刀が熱を発して柄が握れなくなる。武器が使えなくなったら、さすがにあの糸の攻撃を捌くのは無理だろ」

「……悔しいですが、その通りです」


 よく通る声で返事が返ってきた。


「その点、俺ならある程度融通が利く。それに、ファイマは魔術式の詠唱中は身動きとれないだろう?」

「──ええ、あいつに通用するほどの強力な術式を行使するなら、相応の時間が必要になるし、その間はほとんど無防備になってしまうわ。更に言えば、手持ちの魔術だと最大限に威力を発揮できるのはこの距離が限度よ。これ以上離れるとどんな魔術でも通用しないでしょうね」


 ならば、ファイマを護衛できる者が必要になってくる。しかし、ランドやアガットでは、彼女の仮説が正しいならばラケシスに操られる可能性がある。この場でもっとも適任なのはクロエだ。


「相談事は終わりましたか?」


 余裕の表情でラケシスが言った。


「話し合いを悠長に待ってくれるなんて、随分と親切だな」

「手応えのない者を相手にしても、溜飲が下がりそうにないですから。どうせなら歯ごたえのある者を返り討ちにしたい。なので、いくらでも相談してかまいませんよ。結果は変わりませんけどね」

「じゃぁ、あと丸一日ぐらい相談しなきゃいけないから、今日はもう帰ってくんない? あ、次の明日の昼頃で集合場所はここでお願いします」

「……明らかに戦場放棄ボイコットする気満々ですよね、あなた」


 ──ちっ、バレたか。

『カンナのカンナ 異端召喚者はシナリオブレイカー』の発売を十一月七日に控えたナカノムラでございます。


 ……よく聞く話なのですが、ライトノベルの重版や続刊は、発売日からの一週間ぐらいが山場だそうです。

 

 というわけなので!

 みんな! 赤い本を見て後で買おうとか思わずに、一期一会の気持ちで『カンナのカンナ』を片手にレジへGoっすよ! 

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