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第百話 ニャンニャンタイム★

記念すべき百話目がこんなんなったのは偶然です。本当にたまたまです。


注)この回には確実にR15の表現が含まれています。それ以下の良い子は百一話が更新されるまで待ちましょう。

注:2)この回には盛大に糖分を含めました。それが耐えきれないピュアな子は百一話目が(以下同文


 話を理解できていない俺は頭に疑問符を浮かべる。そこにキスカは、さらっととんでもない答えを出した。


「つまり、カンナ君とお嬢様がヤっちゃえばいいのですよ」


 ………………………………。


「…………ホワッツ?」

「ですからカンナ君の『雄しべ』とお嬢様の『雌しべ』をドッキングさせ(ゴンッ)てぇッ!?」


 無言で振り下ろされたランドの拳骨に、キスカはタンコブのできた頭を抱えてしゃがみ込んだ。ただ、言葉は中断されてしまったがその意味は俺でも理解できた。けど、いやまさか……。


 ファイマに視線を向けるが、彼女はゆっくりと、だが覚悟を決めたような表情で頷いたのだ。


 要するに、媚薬で強制的に高ぶった興奮を、素直に解消してしまおうというお話──。


「──って、ちょっと待て。年頃のお嬢様がチョメチョメでニャンニャンでナニなアレに興味津々なのは理解できるが、知的好奇心の延長で済むような話じゃないだろこれ」


 据え膳は美味しく頂く派だが、これはさすがに戸惑う。


「どう……かしら……カンナ。私と……契りを交わして……もらえないかしら?」


 お嬢様の申し出に、俺は少し表情を険しくして言った。


「……衝動的に事に及んだら、後で確実に後悔するぞ」

「意外ですね。カンナ君ならお嬢様ほどの美人からのお誘いであれば、二つ返事で頷くと思っていたのですが」

「うるさいぞキスカ」


 本来なら止める立場であるはずのキスカが口にしたあっけからんな物言いに俺は半眼になる。そんな俺をよそに、ランドは険しい表情をファイマに向けていた。


「……お嬢様──いえ、ファルマリアス様。聡明であるあなたは、ご自身がどのような立ち位置にいるかを誰よりも理解していらっしゃるはずです。とてもではありませんが『火遊び』の一言ですませられるような問題ではありません」


 ファイマは(祖国でだが)力を持った貴族のご令嬢。遊び半分で一般庶民と伽を交わしてよい身分ではない。しかも彼女は帰国すれば親の用意した相手と婚約しなければならない。お嬢様の貞操はお嬢様だけのモノではないのだ。


 ランドはそのことを口にしているのだろうが、俺の中に違和感ともいえない感覚が頭をもたげた。彼の言葉に偽りは無かろうが、含められた感情の重みがこれまでと比べものにならなかった。事が事だけに当然なのだろうが、それだけではないような気がした。


「そうね……。己の身分を……自覚してから……──としての義務は……承知していたわ。……覚悟だって……ある」

「ならばっ」


 声を荒げそうになるランドに対して、ファイマは真剣な瞳をランドに向けたまま言った。


「でも……『最初』を……捧げる相手くらいは……自分で決めたいのよ」

「……………………それが、『彼』であると?」


 こくりと、彼女は首肯した。儚げな瞳でありながら、その内には強い意志の光が宿っていた。


 ランドは目を閉じ、少しの間をおいてゆっくりと開いた。結論が出たのだろう。


「……お嬢様のことを、頼めるか?」


 驚くことに、ランドはあっさりとファイマが俺に『抱かれる』事を承諾したのだった。本来であるのならば、是が非でも守護対象の貞操を守るだろうと思っていたのに。


「俺ぁまだ了承してないんだけど」

「……他の男であれば──たとえアガットであろうとも、断固として阻止し、お嬢様の意に背いてでも医者の元に連れて行っただろう。だが、君ならばお嬢様のことを任せることができる」


 忌憚のない信用の言葉がどうにもむず痒いな。恋人の両親と顔を合わせ、「娘を頼む」と言われる気分とはこのようなものだろうか。


「お嬢様もそろそろ『限界』だろう。我々は部屋の外で『事』が済むまで待機している」

「ドリスト家の者には上手く言い含めておくわ。外のことは気にしないでもいいから、お嬢様の中にある薬がヌけるまで、存分にヤっちゃって頂戴♪」


 さっきから、キスカのノリが場違いなほどに軽いな。語尾に音符がくっついている。普通、お前もランドと一緒にいろいろと止める役だからな?


「……外に出るなら、あのチャラ男もついでに捨ててきてくれ。あ、どうせなら──」


 俺はキスカに簡潔ながら指示を出した。ランドはおろかキスカまでも顔をひきつらせていたが、特に異論を挟むことなく頷いてくれた。


 もし万が一にチャラ男がファイマに傷の一つでも付けていれば、俺はチャラ男の息の根を確実・・に止めていただろう。命があるだけでも、ありがたいと思ってほしい。


 ……尻にサウザンド・ブレイカーが深々と突き刺さっている時点で、男性機能が物理的に死んでいる可能性もあるが、自業自得だ。


 とりあえず、チャラ男は社会的にぶっ殺しておこう。




 チャラ男を肩に担いだランドと「お嬢様をヨロシクね♪」と言い残すキスカがいなくなれば、当然部屋に残されるのは俺とファイマだけになった。


 二人(+α)の出て行った扉をしばし眺めてから、俺は改めてソファーに横たわるファイマに視線を投げた。


 薬で高ぶった衝動をどうにか沈めようと悩ましく閉じられた瞼。時折に籠もる吐息を艶ある声と共に漏らす薄く開かれた唇。高ぶる鼓動に耐えるように心臓部を押さえようとする腕に押しつぶされる、柔らかくもたわわに実った二つの果実。美しい衣装をまとった今の彼女は、どの部分をとっても、男の理性を切り崩していくには十分な『威力』を秘めていた。


 今から、この極上の美女と、と考えると俺の胸の動悸も高ぶりを見せる。血が一点に集中するのを自覚しながらも、俺は努めて冷静に口を開いた。


「……本当にいいのか? 今ならまだ強引にでも医者に連れてってやれるぞ」

「……キスカの言うとおり……あなたなら……二つ返事で……頷くと思って……いたんだけど……ね」


 普段の俺は人様にどのような目で見られているのだろうか。


 ……あれだけ「おっぱい」を連呼してたらそう見られても当然か。


「やっぱり……貴族の娘に……手を出すのは……躊躇われるかしら?」

「無い……と言い切れないが、多少はな」

「安心して……。何があっても……あなたに不利益になるような……事態には……させないから」


 どうやら『理性』の上では覚悟が決まっているらしい。


 だったら、もう一つ・・・・の覚悟も問うべきかな。


 俺はファイマの背中とソファーの間に手を差し込むと、彼女の上半身を起こした。服越しとはいえ、敏感になったファイマには強い刺激だったか、肩が震えた。


 ファイマの頬に、刺激を与えないようにゆっくりと手を伸ばした。手の平から伝わる彼女の体温は、既に火傷しそうなほどに熱を持っていた。


「あ……っ」

「ほんの少しでも嫌になったらビンタでも魔術でも何でも使って俺を吹き飛ばせ。それがない限りは絶対に途中で止めないからな」

「ま、待ってっ。その前に、私からも……一つだけ確認させて」


 俺は宣言してから顔を近づけようとするが、彼女は慌てたように俺の胸に手を置き、その動きを押しとどめた。やはり、ここまで来て躊躇いが出てきてしまったか。だが、彼女の口から出たのは予想外の言葉だった。


「……あなたこそ……本当に私で良いの?」


 ……今更何をいっているのだろうかこのお嬢様は。


「こんな……魔術にばかり興味を持って……。可愛らしい……格好にだって……無頓着で……」


 この期に及んで、ファイマは自身がいかに『女らしくないのか』をアピールしてきた。どうやらこの女は、自分がいかに希有な美貌を持っているかを自覚していないらしい。や、というか、俺の周囲にいる美人達はほぼ全員がいかにハイレベルな美女であるかの自覚が無い。


「それから……えっと……それから…………ンンッッッ!?」



 長々と己を卑下する言葉を重ねていくファイマに痺れを切らし、俺は己の意志を伝えるため、強引に彼女の唇を奪った。



 まさしく唇が重なり合う距離で、ファイマの瞳と俺の瞳が互いを写す。彼女から拒絶する気配はない。ただ驚いているだけかもしれないが、少なくとも至近距離から覗ける彼女の瞳に嫌悪の色は無かった。


 触れあうだけの優しい口付けだ。唇を話すと、熱のこもる両者の吐息がそれぞれの頬を撫でた。呆然としていたファイマは、己の唇に手を伸ばした。寸前に触れていた異性の感触を確かめるように唇をなぞる。


「これが俺の答えだ」

「カン…………ナ?」

「お前に──ファイマに女としての魅力を感じてなきゃ、キスなんてできる訳ないだろ。むしろ、俺みたいな奴がファイマを抱けるなんて、恐れ多いとさえ思える位だ。そう自分を卑下するな」


 俺は率直な本心を彼女に告げた。


 ただ触れあうだけのキスで、俺の興奮は既にレッドゾーンに突入し始めていた。まだ限界に到達してはいないが、僅かな切っ掛けでもあれば、ファイマを滅茶苦茶・・・・にしてしまいたい衝動に支配されそうだ。それほどまでに、目の前の相手は魅力的なのだと改めて思い知った。


 ……ところが俺は大きな失念をしていた。


 この状況で高ぶるのは、何も男に限った話ではない。そして、『彼女』は決してまともとは言い難い状態であることを。


「……………………」

「……ファイマ?」


 彼女は己の唇を指先でなぞりながら、俯いたままだ。まさか、俺の唇がそんなに嫌だったのか? 先ほどの様子を見るとそれほど嫌がっている素振りは無かったのだが。や、断りを入れずにしたのが悪かったのかもしれないな。


「ファイ──」


 ドンッ!


 言葉を考えるよりも早く、胸元に強い衝撃。その勢いは決して弱くはなかったが、それでもどうにか床に尻餅をつく程度にとどめた。


 ファイマがソファーから身を乗りだし、俺の躯に抱きついてきたのだ。


「……もう、我慢しなくても良いのよね? 頑張って堪えなくて良いのよね?」


 彼女の口調から途切れはなくなり、流暢なものへと変じていた。元々、薬のせいでいろいろ我慢したが故の弊害だったのだが……。


「…………あ」


 言葉の意味に合点がいくのと同時に、顔を上げたファイマと目があった。そこに浮かび上がる『笑み』に、背筋がゾクリと震えた。


 人見知りをこじらせた高慢な時でも、興味の対象を目の前にした時でも目にしたことのない、この瞬間に初めて彼女が見せた顔。


 情欲に溢れる『女』の顔をしていた。



 理性の鎖によって押さえ込んでいた情欲を、ついに解放したのだ。



「もう我慢する必要がないって思ったら、急に頭の中がすっきりしたわ。驚くほどにね……ん」

「────ッ!?」


 息苦しい拘束から解放されたような顔になった彼女は、流れるような動作で俺の唇を奪った。それまでの彼女からは考えられない淀みのない動きに、今度は俺が目を見開く番だった。


「ぷは……。もう、キスをするときは目を閉じるのがマナーだって知らないの?」

「いや、ファイマだってガン見だったじゃねぇか」


 咎めるような言葉に反論をすると、彼女は「それもそうだったわね」と小さく笑い、またも唇を寄せてきた。今度は互いに触れあう瞬間に目を閉じる。視界が瞼に覆われる中、唇が重なり合う感触だけがよりはっきりと感じ取れた。


「男性とのキスは初めてだけれど、なかなかにいいものね。恋愛小説で知識としては知っているつもりではあったけれど。『百聞は一見にしかず』とはこのことね」

「一見つーか……実際にしてる・・・がな」

「無粋な事は言わないの」


 薬で熱に浮かされていたとしても、今のファイマは普段の様子からはまるで想像できない雰囲気を纏っていた。ここで気の利いた野郎なら、ロマンチックな言葉の一つや二つも囁いてるところだが、経験の浅い俺にそんな甲斐性を求められても困る。


「……本当に、不思議だわ」


 俺の胸元に躯を預けながら、ファイマが呟く。


「躯が変になってから、カンナを見る度に、あなたの声を聞く度に、胸の高鳴りが大きくなっていくの。あのチャラ男に触れられたりしていた時は、嫌悪感しか湧かなかったのに」

「俺は抱かれるあいてとしては及第点ってところか」

「違うわ。私はあなたが良いの──いえ、違うわ。あなたでなければ……嫌よ」


 潤んだ目で見上げてくる彼女の瞳に、俺は吸い込まれそうになった。


「本音を言えば、今私の中にある感情が、男女間にある『それ』だと、自信を持っては言えない。普段の私はあなたに間違いなく友情を感じているけれど、それが恋愛感情に発展しているかどうかはよく分かってないもの」


 友情も愛も無縁すぎて、知識としては知っていてもそれらがどう違うのかを理解できていないのかもしれない。かくいう俺も、恋愛感情とは何かと問われても明確には答えられない。


「もしかしたら、心を許せて話ができる同世代の話し相手が偶然にも男性カンナだっただけなのかもしれない」


 だとしても、と彼女は続ける。


「間違いなく、この瞬間の私はあなたに『奪われたい』と望んでいるわ。恋愛感情の有無はどうだっていいのよ、だって、今の私は正気じゃないもの。……ただ、薬が抜けて正気に戻ったら、たぶん死ぬほど恥ずかしい思いをするのでしょうね。明日の朝は、気恥ずかしさにベッドの中から出られないかもしれないわ」


 未来の己を想像して苦笑する彼女に「確かにな」と俺も笑い返した。


 四度目の口付けは互いに身を寄せ背中に手を回し、求め合うように交わした。唇を重ねる度に、俺の中の興奮が高まっていく。そしてそれは彼女も同じなのだろう。


「ん……にゃう……ん……」


 その証拠に、俺の口内に俺以外の『熱』が侵入してくる。ファイマの舌が、俺の唇を割り開き強引に捻り込まれたのだ。もちろん、彼女を拒む道理はない。俺は喜んで『彼女ソレ』の侵入を受け入れた。


 互いの舌が触れあうと、抱きしめる腕を通して彼女の肩が小さく震えたのが分かった。だが、ソレも一瞬のことであり、ファイマはむしろ積極的に舌を絡めてくる。最初から遠慮などない。相手を屈服させるような激しい舌の動きに、理性を舐め溶かされる錯覚に陥りそうだ。


 数秒とも数分とも分からない時が過ぎると、俺は繋がっていた舌先と唇を離す。深い繋がりの残滓として、混ざり合った唾液が互いの唇の橋渡しになった。


「ふにゃぁ……!」

「ん…………おおっ!」


 前触れもなくファイマの口から男心を直撃するような嬌声が発せられた。いったいナニが起こったのか不明だったが、ふと右手に感じた『極上の柔らかさ』によってすぐに理由が判明した。



 無意識のうちに、俺の右手が彼女の乳を緩やかに揉んでいたのだ。



「……右手よ、先走りすぎだ。せめて俺の許可を待てよ」

「って言いながらも胸から手は離さな……にゃいのね……んにゃっ! そ、そこは普通、持ち主である私の許可が先じゃにゃ……いの?」

「極上のおっぱいが目の前にあるなら、そりゃ揉むしかないだろ」


 登山家に「なぜ山を登るのか」と問うのと同じくらいに愚問だ。


「……私が見てきた中で腹が立つくらいに一番真面目にゃ顔をしているわね……んんっ」


 ファイマの肌は、薬の影響でかなり敏感な状態だ。衣装ドレス越しとはいえ女性的な部分に触れられる事で一気に高ぶってしまったのか、俺が手を動かす度に躯がビクビクと反応を見せる。


 や、よく思い出すとキスをしている最中にも彼女の口から、時折「にゃ」という声が漏れていたな。


 ──クロエとの時間が『ワンワンタイム』なら、ファイマとの時間はさしずめ『ニャンニャンタイム』か。この場に猫耳カチューシャがないのが非常に惜しまれる。尻尾はどうしようか。


「ちょ、左手まで……ふにゃっ」


 おおっと、ここで俺のレフトハンドまでもがファイマのお嬢様なバストに魅了されたらしい。気が付けば両手で彼女の乳をキャッチ&マッサージしていた。


「ど、どれだけ……んにゅ……女性の胸が……好きなのよ……」

「好きな物は何ですか? と聞かれたら脊髄反射で「おっぱい」と答えられるぐらいには超愛している」

「愛してるって…………。だ、だったら……」


 ファイマは己の胸に張り付いてた俺の両手を、手首を掴んで剥がした。少し抗えば拒める程度の力だったが、行動で拒絶を示されれば拒まないと宣言したのは俺自身だ。幸せ・・が両手から失われてしまったが、素直に従うしかなかった。


「そんな人生に絶望したような顔をしないでよ。私が悪者みたいじゃないの」


 肩を落として気落ちする俺に、ファイマが軽く唇を重ねた。


 そして──。


「ま、全く、しょうがないんだから……」


 彼女は恥じらいの言葉とともに、自らが纏うドレスに胸元に手を掛けた。


 そして、女としての魅力を十二分に引き出し、だが最も女性らしい部分を覆い隠すためにあった『紅の最終防壁ドレス』を、自身の手で取り払った。


 服を脱ぐ最中の布ズレのせいか、解放された二つの実りが大きく揺れた。同時に、俺の中で辛うじて残っていた最後の理性も大きく揺れた。


 興奮しすぎて暴走しそうになりながらも、俺はあらわになったファイマの胸に手を伸ばした。彼女は俺の動きにピクリと肩を震わせたが、胸に近づいてくる俺の腕を黙って受け入れた。


 たかが布の一枚を取り払っただけなのに、その前後では天と地ほどの差があった。絹のようでありながら、紛れもなく人肌の感触。指先が沈み込む柔らかさと押しのける反発力。優しくしてやりたいと思う一方で、乱暴にしたいという気持ち。様々な矛盾が俺の中を駆けめぐる。


「んんんっ! ……だ、だから……にゃん……ずっと無言で……胸を揉まにゃい……でって……言ってる……にょにぃぃ……」

「はっ!?」と我に返り胸を揉む手を止める頃には、彼女はすでに色々とできあがっていた。潤んだ瞳は情欲に揺れ、力を失った口の端からは唾液が垂れている。

「悪い、ちょっと夢中になりすぎ──んむっ!?」


 謝罪を述べようと口を開くが、ファイマが強引にそれを口付けで塞ぎ、仕返しとばかりに舌を差し込んでくる。思いも寄らない反撃に、今度は俺はなすがままに彼女を受け入れるしかなかった。


 しかも、ファイマはそれだけにはとどまらない。


「────んんんんっっ!?」

「ちゅむっ……ふふふ、あなたも随分と高ぶっている・・・・・・みたいね……むちゅっ」


 彼女は俺の口内を貪りながら、俺の下半身を指でなぞったのだ。ズボン越しでありながらも、己以外の手が触れる感触に俺は反応してしまう。


「凄い……話には聞いてたけど『こんな』になるんだ……」


 俺の口を解放してからも、ファイマは俺の『男性そこ』に触れたまま。ズボンを突き破りそうなほどに俺の興奮は高まっている。


 彼女の指先の感触に、俺の理性はとうとう崩壊した。


「ファイマ、俺ぁもう限界だ」

「え? …………きゃぁッ!?」


 俺は強引にファイマを抱きかかえると、近くにあったソファーにその躯を横たえた。そして、彼女に覆いかぶさるようにしてソファーに身を乗り出す。ズボンは既に下着ごと脱ぎ終えた。


「ちょ、待ってカンナ!」


 仰向けの彼女の唇を奪おうと顔を近づけるが、彼女が悲鳴を上げるように待ったを掛けた。


「最初に言ったはずだ。拒絶するなら言葉じゃなく行動で示せってな」

「違うの! 今更怖じ気付いた訳じゃないの! その……これだけは言わせてほしいの」


 彼女は生で見るだろう男の尊厳を目に唾を飲み込み、それからゆっくりと潤んだ瞳を俺の顔に向け──。 


「カンナ……助けに来てくれてありがとう。私の『初めて』を……貰ってください」


 俺は一瞬、彼女が何を言っているのか理解できなかった。


 ……そういえば、彼女の口から礼を聞いた記憶がないな。しかし、このタイミングで言うか普通。あるいはこのタイミングだからこそ言ったのか。ただ、礼を言われたのならば、俺の返す言葉も一つだ。


「どういたしまして、お嬢様」


 俺たちは互いに笑みを浮かべ、互いに唇を求め合う。


 そして、互いに身も心も重ね合うのだった。

 

 

今回はとりあえず第一稿という形での投稿になります。後日落ち着いてから読み返して、大きく修正を加える可能性があるかもしれません(正直未定です)。

というのも、百話目の原稿の後半部分は、深夜にテンションが上がった状況から朝の5時まで徹夜して書き上げました。しばらくは甘い文章は書けません。無理です。

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