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第九十六話 殺し文句は用法容量と時と場合を考えて安全に使いましょう

区切りの問題で今回は短めです。

PVが遂に10000000(一千万)を超えました!

記念に何かやるわけではないのですが嬉しい限り感無量スパーキングです!



 シュライアと名乗った女は、以前見たような六本の剣は携えていなかった。だが、そうであっても彼女が本気を出せば俺など一瞬にしてモノを言わぬ肉塊に変えることができると、理屈ではなく本能で感じていた。


大いなる祝福アークブレス? 聞いたこと無いな」

「世間一般は元より、各国の重鎮であってもごく一部の者しか存在を知らない組織だからな」


 そんな秘密結社のような存在の名を事も無げに教えてしまっていいのか、と場違いに思ってしまう。


「私は名乗ったぞ。君も、名乗り返すのが筋じゃないか?」

「俺を調べていたんだろ。だったら名前ぐらいは聞いてるだろうさ」

「だとしても、人伝ではなく本人の口から聞くことに意味があると思わないかい?」

「…………カンナ。しがないCランクの冒険者だ」

「『白夜叉のカンナ』……だろ? 『二つ名』を与えられるという事は、冒険者にとって名誉なんだよ。覚えておくと良いさ」


 現代日本から来た身としては、そんな中二病(二つ名)はあまり嬉しくないのだが。


「目的は何なんだ」

「目的? それは当然、君に会いに来たんだよ。私の左腕を潰してくれた張本人の顔を、改めて拝見したくてね」


 彼女はまたも愛おしげに左腕を撫でた。鉱山で最後に放った巨大氷砲弾による負傷だろうか。ただ、その表情はまるで恋する乙女のようだ。


「とてもじゃないが、重傷を負わせた相手に見せる顔じゃないな。それにアンタがさっき言った鉱山事件の裏側にはアンタらが関わってた。俺はその裏側を潰した張本人なんだが、それはいいのか?」

「君の言うとおりだな。本来なら私に傷を負わせ、我々・・の計画を潰してくれた褒美に、きっちり丁寧に切り刻んで殺しているのだろうが……」


 仮に俺が被虐性癖(ドM)であったとしても、命に関わるレベルの折檻は遠慮したい。この女の場合、『殺す』という言葉がその場の勢いで出た冗談ではなく、一々が本気なので尚更に恐ろしい。


「けれど、以前に君が見せたあの『目』が忘れられなくてね」

「『目』?」

「圧倒的な強者を前にしながらも、決して揺るがない強い意志を宿したそのくれないの瞳だ」

「こう見えても小心者でね。さっきからアンタが恐ろしくて、いい加減ちびりそうだ」


 会場の警備にはいる前に一度トイレに行っていて正解だった。少しでもため込んでいたら堤防が決壊していたかもしれない。


「軽口を叩けるのは、心にまだ余裕が残っている証拠だ。私の『殺気』にあてられた者は、『同格』を除けばその殆どが言葉すら発することなく失神するか、発狂するかのどちらかだ」


 殺気がより強く圧を増した。俺は怖じ気付く心を奮い立たせ、氷錘を彼女に向ける。


「今この瞬間にも、君はそのあかい瞳を私に向けている」


 彼女の頬に朱に染まる。


「……本当に、堪らないぞ。やはり会いに来て正解だった。その目を見られただけでもこの相対には価値があった! 君と出会えたことを私は『神』に感謝しよう!!」


 感極まった彼女の表情だけを抜き取れば、恋い焦がれる女性にも見えた。内容も、捉え方によっては求愛プロポーズにも聞こえる。これで絶望を覚えるほどの濃い殺気がなければ、の話ではあるが。


「……さて、怖がらせるのはこのぐらいでもう良いだろう」


 シュライアは唐突に、それまで発していた殺気を霧散させた。俺は逆に彼女の意図を読みとれずに警戒心を強める。


「君を今この場で殺すのは容易い。だが、その紅の瞳を持ったきみを片手間で殺すのはどうにも惜しいと思ってしまってね。……安心していい。今日のところは君とやり合うつもりはない」

「……信用しろってのか」

「この言葉が真実かどうかは、おそらく君が一番理解しているんじゃないかい?」


 俺は舌打ちをしたくなるのを堪えながら、空中に具現していた氷を全て消滅させた。


 言葉の通りに、彼女が本気で俺を殺すつもりであったのならば、背中を向けた時点で、あるいはそれ以降にいくらでも機会があったはずだ。


「言ったはずだ。君の顔を見に来ただけだと」


 この場で天剣の名を持つ元Aランク冒険者と殺し合いになる事態は回避された。その事実だけは間違いないか。だからといって、この事態を楽観視できるほど俺も楽な人生は送っていない。


 ただ、眼前にチラツいていた『死の気配』が無くなったことに、俺は小さく深呼吸して心を落ち着かせた。


「ずいぶんと余裕を取り戻したな。もしかしたら、私が気紛れで心変わりを起こすかもしれないのに」

「残念ながら、俺にそいつを防ぐ手立てが無い。だったら落ち着いて気持ちを楽にしていた方が無難だ」

「なるほど。それは確かに」


 楽観視はできずとも心の平静を保つ余裕は出来た。


「今のところ君は大いなる祝福アークブレスの明確な敵とは認められていない。少なくとも私以外にはな」


 一番厄介そうなのに目を付けられたな、という悲しい気持ちはここはおいておくとして。


「……そもそも、大いなる祝福アークブレスってぇのは何の組織なんだよ。差し支えなければ教えてもらえませんかね」

「おっと、私と君の仲とはいえ、そう易々とは教えてやれないな」


 どんな仲だよ。殺し殺されの殺伐度百点満点な間柄じゃねぇか。


「だが、忠告はしておくとしようか」


 シュライアはゆっくりと歩を進めると、俺の隣で立ち止まった。


「以降、君が明確に結社われわれへの敵対行為を続けるのならば、私は『カンナ』という冒険者の存在を『障害』として結社へ報告しよう。命が惜しければ、これ以上の深入りは止めておくことだ」


 ただ、と彼女は俺の肩に手をおくと、耳元に口を近づけて囁くように言った。


「叶うなら、深入りしてもらえると嬉しい」


 耳に入り込む声色に艶を感じた俺は図らずも胸の鼓動を高鳴らせた。


「そして、君が明確に『敵』となった暁には、この『天剣のシュライア』がその強い意志を宿す紅の瞳を、心の底から屈服させるだろう」




 そして、と。



「君の身も心も……存在そのものを貰い受ける」



 俺の頬に柔らかい唇を触れさせたのを最後に、シュライアの気配が俺の傍から離れた。




 刹那ほど思考が停止した直後、我に返った俺はハッとなりあたりを見渡した。だが数秒前までは確かに存在していたシュライアの姿はもはやどこにも居ない。


 彼女の形跡は、頬に残る僅かな熱だけだった。


「そういうセリフは、男のセリフじゃねぇのか?」


 俺はそんな言葉を絞り出すのが精一杯だった。

重ね重ね言いますが、シュライアはヒロインではありませんのでご注意を。



代わりと言ってはあれですが……。



遠からず内に! 



なんと! 



待望の!



全米は多分泣かないけど!!



日本も泣かないけど!!



予定の範疇は超えないけれど!!!!



『ニャンニャン(死語)』シーンの予定!!!!



……あくまで予定です。

ただし、現段階では今話より五話〜七話以内を考えています。

誰が相手かは秘密です。

シュライアさんでないのは間違いないのでそこはご安心を。


……とてつもなくでかい大風呂敷を敷いた気がしてならない。



と、とりあえずいつもの宣伝で終わります!

『アブソリュート・ストライク 〜防御魔法で天下取り〜』

http://ncode.syosetu.com/n2159dd/

こちらも連載中です!!


あ、あと新作じゃないけど!

短編2作『異世界に召喚された彼らが手に入れたものシリーズ』

http://ncode.syosetu.com/s7810c/

があるので気が向いたらどうぞ!


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