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第6話 張飛、馬超と相打つのこと

今回は日向の出番が少く、鈴々の出番が多いです。



それではどうぞ。

ここは冀州の太守の屋敷、その屋敷の浴室には一人の女性が風呂に入って居た、彼女の名は袁紹、ここの領主である。



袁紹「ふぅ」


袁紹は風呂から出て脱衣室に向かい、そこで待機している侍女達にバスタオルを身体に巻かせてから椅子に座ってお湯で暖まった身体を冷ましていると脱衣室に二人の女性が臣下の礼をとりながら入ってくる。彼女達の名は文醜と顔良、袁紹の家臣である。



袁紹「猪々(いいしぇ)斗詩(とし)、二人揃ってどうしましたの?」


袁紹は二人の真名を呼んで何の用事か聞く。



文醜「麗羽(れいは)様、曹操が御目どうりしたいと出向いて来ておりますが?」


袁紹「お風呂に入ってようやく目が覚めたとこなのに、朝からあんないけ好かない小娘と顔を会わせなきゃならないなんて」


文醜「って、もうお昼ですよ麗羽様」


袁紹「睡眠不足はお肌の対敵なのよ」


顔良「と、とにかく我領内に乗り込んだ賊を征伐するため、わざわざ都から参られたのですからご挨拶しない訳には・・」


袁紹「分かってますわよ!服を着たらすぐに行くからもう少し待たせておきなさい!」





しばらくして袁紹は服を着たあと王座の間に入って王座に座る、その隣には文醜と顔良が側に立つ。袁紹達の前には金髪が短く、ツインテールを縦ロールにした髪型の女性、曹操が居た。



袁紹「都からわざわざ賊退治とはご苦労な事ね、曹操」


曹操「ええ、本来なら私が出向く事は無いのだけれど、賊共が貴女の領地に逃げ込んだとなれば話は別」


袁紹「ん#」


曹操「放って置けば見す見す逃がしてしまうようなものですからね」


袁紹「ちょっと、それはどういう意味かしら#」


曹操「袁紹、貴女が賊一匹退治できない無能な領主と言っているのよ」


袁紹「なっ!?」


文醜「曹操!袁紹様に向かって無礼であろう!」


自分の君主が侮辱された事に文醜は怒鳴る。



文醜「いくら本当の事でも!面と向かって言って良い事と悪い事があるんじゃあ・・」


袁紹「ちょっと!それってどういう事ですの!」


文醜「い、いや、とっさの事でつい本音が・・」


袁紹「何ですってっ!#」


曹操「ふっ、無能な領主にマヌケな家臣とは良い取り合わせね、恐れ入ったわ」


文醜「へん!参ったか!」


文醜は得意気に胸を張る。



顔良「ちょっと、今のバカにされてるのよ!私達!」


文醜「そうなの?」


顔良「あ~も~」


曹操「ぷっ、ふふ」


文醜と顔良のやり取りに笑う曹操。その後、曹操は用事がすんで帰り。袁紹達は屋敷の廊下を歩いていた。



袁紹「まったくもう、貴女達のせいで大恥かいたじゃありませんの#」


曹操の前で恥をかいたことに袁紹は怒っていた。



顔良「貴女達って、私は何も」


文醜「けど、良いんですか?いくら曹操が来たからって賊の事を全部任せちゃって」


袁紹「良いんですのよ。賊退治なんて汚れ仕事、あの小娘にやらせておけば」


すると袁紹は立ち止まって後ろに居る二人の方へ振り向く。



袁紹「そんな事より、武踏大会の方はどうなっていますの?」







袁紹の屋敷を後にした曹操は馬に乗り、その隣には黒髪の長い女性、夏候惇と共に街の中を移動していた。



夏候惇「華林(かりん)様、袁紹殿はいかがでしたか?」


曹操「相変わらずよ、名門の出であることにあぐらをかいて己の無能さに気づきもしない、あんな愚窟が領主として踏ん反り返っていると思うと虫唾が走るわ。春蘭(しゅんらん)、兵達はどうしていて?」


夏候惇「はっ、既に門外にて待機しております、合流し次第すぐにでも出発出来ます」


曹操「そう」


鈴々「うわぁ!」


大きな声が聞こえ曹操が声のする方を向くと張飛が曹操に指を差していた。



鈴々「あの人、頭すっごいクルクルなのだ!」


日向「プッッ!!ク、クルクルって・・プッ!」


劉備「ちょ、張飛ちゃん!」


張飛の言葉に日向は噴き出して笑い劉備は驚き、隣に居た関羽は慌てて張飛の口を手で塞いだ。



関羽「っ!!し、失礼した!この者は髪の事を言ったのであって、その、別に頭の中身がどうという事ではなく・・」


劉備「ご、ごめんなさいっ!」


日向達も袁紹が治める街に来て居て偶然にも曹操と鉢合わせしたのである。曹操は日向達をじっくりと見る。



鈴々「ん~~!ん~~~~!」


関羽「あ、あはは・・」


曹操「ふっ、子供の戯言、咎めるつもりはない」


関羽、劉備「「ふぅ~」」


鈴々「子供って」


ホッと安堵する関羽と劉備に子供と言われた事にむくれる張飛。



関羽「いいから」


曹操「髪と言えば」


関羽「え?」


曹操「貴女も中々、美しい物を持っているわね」


関羽「い、いや、これは他人に褒められる物では・・」


曹操「下の方もさぞかし美しいのでしょうね///」


関羽「な!?/////」


鈴々「そうなのだ!愛紗の下はしっとりツヤツヤなのだ!」


関羽「コ、コラ!///焔殿の前で、な、何を言って!///」


曹操「ふ~ん、それは是非に拝んで見たいものね」


関羽「い、いや!///あ、あの!///そ、その!///」


関羽は否定しようとしたが中々言葉が出ずに戸惑っていた。



曹操「けど、今は野暮用が有って残念だわ。我が名は曹操、縁があったらまたいずれ・・・・ああ、それと・・そこの男!」


曹操は去ろうとしたが何かを思い出して突然日向を呼ぶ。



日向「え?どこどこ?」


日向は自分が呼ばれた事を知っておきながら、ワザとらしく左右を見渡して他の男を捜す。



曹操「・・・・・貴方に言ってるのよ#」


そんな日向の態度にイラついた曹操は日向を睨みつける。



日向「あっそっ。で、何か用か?」


曹操「先程、私を笑った件。本来なら貴方の首を切り落としてるところだけど、さきも言ったとうり私には野暮用があるの。今回は見逃してあげるけど・・・次は無いわ」


そう言ってる間も曹操は睨み続けるが日向はまったく動じなかった。



日向「そうか。なら、次からは気を付けるようにしよう。まぁ、次が有ればの話だけど」


曹操「・・フン」


曹操は鼻を鳴らして、至極どうでもいいと思うような態度をとって夏候惇と共に去って行った。



関羽「な、何なんだ?」


星(あれが最近噂の曹操か、侮れぬ奴)


日向「なんか変な奴に会っちまったな」


星「おそらく向こうもそう思っていますよきっと」







関羽達「「「「お帰りなさいませ、ご主人様(なのだ)」」」」


曹操と別れてから日向達はメイド喫茶で働く事になったのである。関羽、張飛、趙雲、劉備はメイド服を着て接客して、日向は厨房で料理を作っていた。



関羽「・・・・・・どうして私がこんな事を」


関羽は店の隅で壁に手を当てて落ち込む。



星「今日の宿代にも事欠く有り様なのだ、やむ得まい。探した中ではこの仕事が一番給金が良かったのだ」


関羽「しかし!主でもない相手にご主人様ぁ~などと言わねばならぬとは・・・」


星「お帰りなさいませぇ~ご主人様ぁ~どうぞこちらへ、さぁ、ご主人様ぁ~」


入って来た客を相手にしてきた趙雲は関羽の隣に戻ってくる。



関羽「星、お主ちょっと上手くやり過ぎではないか?」


星「腹が減っては戦は出来ぬ、先立つ物が無くてはこの先旅も間々ならん。これも軍略の内だと思えば何て事はない」


関羽「う~む」


女性A「ねぇねぇ」


関羽「ん?」


関羽が唸って悩んでいると近くの席に座っている若い女性客達の会話が耳に入った。



女性A「あの厨房に居る人、結構かっこいいと思わない?」


女性B「確かにかっこいいね。この料理もあの人が作ったのかな?」


女性C「顔も良いし料理もうまいなんて、私惚れそうだよぉ~////」


客席から厨房は丸見えで料理を作っている日向の姿を見ていた女性達はうっとりしていた。



関羽、星「「む」」


そんな会話をしていた女性達を関羽と趙雲は睨みつけるのであった。



日向「ラーメンと餃子、それから炒飯の大盛り出来たぞ、運んでくれ」


劉備、鈴々「「はーい!」」


日向は次の料理を作りに戻っていき、劉備はラーメンと餃子を持って客に運んでいくが張飛はジッと炒飯を見つめていた。



鈴々「お待たせしましたなのだ~」


張飛は炒飯を持ってくるがお客は大盛りの炒飯を見て何かに気付く。



男性「え?俺、大盛り頼んだんだけど、これってなんか少なくない」


鈴々「と、当店ではこれが大盛りなのだ」


するとお客は張飛の口元をよく見るとご飯粒が付いていた。



男性「お前~#」


関羽「す、すみません!すぐに代わりをお持ちしますから!」


鈴々「うわぁ!」


関羽は張飛を裏方に連れていった。



関羽「客に出す物に運ぶ途中で手をつけるとはどういう了見だ!」


鈴々「だって、お腹が空いてたからつい・・」


関羽「ついじゃない!ちゃんとやらなきゃダメだろう!」


鈴々「えへへへ♪ごめんなさいなのだ、次からは気を付けるのだ」


張飛は敬礼して笑顔で謝って仕事に戻るが、皿を落として割ったり転んで料理を台無しにしたりして、ついに関羽に追い出されてしまったのである。



関羽「鈴々!ここはもういい!宿に帰って大人しくしていろ!」








鈴々「ちょっと失敗しただけなのに酷いのだ!こうなったら何とかしてお金をいっぱい稼いで愛紗をビックリさせてやるのだ!・・ん?」


張飛はふて腐れながら街を歩いていると、道の脇で人だかりが出来ていて張飛は近付いてみると看板が立ててあって文字が書いてあった。



鈴々「う~ん、難しい字が多くて読めないのだ」


???「冀州一武踏会、本日開催!飛び入り歓迎!優勝者には賞金と豪華副賞有りだってさっ!」


張飛の側で看板の文字を教えてくれたのは茶髪に長い髪をポニーテールにし右手には先の刃が十文字の形をした槍を持った女性だった。



鈴々「優勝者には賞金!じゃあ、これで優勝すればお金がいっぱい貰えるのだな」


???「まぁ、確かにそうなんだけど。まさかお前、本気で優勝するつもりじゃないだろうな?」


鈴々「もちろん!本気なのだ!」


???「大した自信だけど、それは無理だな」


鈴々「どうしてなのだ?」


???「そんなの決まってるだろ、優勝するのはこのアタシだからさ!」








場所は変わり、武踏会会場。そこには多くの観客が集まっていた。



陳琳「さぁ、ついに始まりました!冀州一武踏会!北は幽州から南は江東まで全国各地から集まった腕に覚えがある猛者が最強の座をかけて競います!なお司会はこの私、陳琳(ちんりん)が実況解説いたします!」


観客『わぁーーー!!』


陳琳「それでは、試合開始に先立って本大会の主催者をご紹介しましょう!冀州太守にして超名門!袁家の当主であられる、袁紹様!」


観客『わぁーーー!!』


袁紹が登場し文醜と顔良が声呼歓や掌鼓と書いてある看板を観客に向けて掲げる。


袁紹「皆さん、わたくし主催の武踏会へようこそ。今日は全国から集まった豪傑達の闘いを心行くまで楽しんでいって下さいね」


観客『わぁーーー!!』


再び文醜と顔良は看板を掲げて観客達は声援する。



袁紹「ありがと、ありがと。名族袁家は代々「さぁ、皆さん!袁紹様から有り難いお言葉を賜った所で第一試合の開始でーす!」うぅ~~」


袁紹の長くなる話を遮り司会者である陳琳が話を進める。



陳琳「優勝候補と声もあるマサカリ使いの鉄牛選手!それに対するは今回の参加者の中で最小・・もとい最年少の張飛選手!果敢にも飛び入り参加してきた張飛選手には是非がんばってほしい所ですが、これは相手が悪いか」


張飛の相手の鉄牛は大男で身長が何倍もあり、手には大きなマサカリを持っていた。




ゴォ~~~ン!



桴で銅鑼を打ち鳴らして試合開始の合図をする。



鉄牛「うおぉりゃあぁー!」


鉄牛は張飛に向けてマサカリを振り下ろした。



陳琳「おっと鉄牛選手!先手を取った!早くもこれで勝負が決まっ・・ああっ!」




ガキィン!



張飛は蛇矛で鉄牛の攻撃を余裕で防ぐ。



陳琳「受け止めたぁ!張飛選手、常人では持ち上げる事の敵わない!あのマサカリの一撃を受け止めましたぁ!」


鉄牛「このガキィ!」


鈴々「この程度なら鈴々には勝てないのだあぁ!どおりゃあぁー!!」


鉄牛「ガハァ!」


張飛の一撃で鉄牛は場外まで吹っ飛んで気を失った。



観客『わぁーーー!!!』


陳琳「や、やりました!張飛選手、優勝候補の鉄牛選手を破りましたぁ!これは序盤から大判狂わせです!」


袁紹「ふぁ~」


袁紹は試合を見ずにあくびをして退屈そうにしていた。




ゴォ~~~ン!



陳琳「さぁ続いては第二試合、既に開始から1分が経過しています。只今絶賛武者修行中の馬超選手は遥か西の西涼よりの参加です」


彼女の名は馬超。先程、張飛と共に居た女性である。



陳琳「一方、相手は槍の名手との事ですが・・」


女性「うりゃあ!」




ガキィン!



槍の名手の女性は次々と突きを放つが馬超は全て防いでいった。



陳琳「おぉと!これは凄い!目にも止まらぬ早技だぁ!馬超選手は防戦一方です!」


女性「はぁ・・はぁ・・」


女性は息を切らして疲れきり、一方、馬超はまだまだ余裕そうであった。



馬超「何だ?もう終わりか?」


女性「なにぃ!」


馬超「ふっ。それじゃあ、今度はこっちがいかせてもらうぜ!でぇええい!」


女性「くっ!」


馬超の猛攻に耐えきれず槍の名手は倒れる。



馬超「安心しな、急所は外した」


観客『わぁーーー!!!』


袁紹「・・・・・・・・・」


袁紹は横になって寝そべっていた。




ゴォ~~~ン!



陳琳「やりましたぁ!張飛選手!見事、秒殺!」


鈴々「にゃはは!」


陳琳「すごいっ!馬超選手、圧勝です!」


馬超「へへへっ」


陳琳「小さな巨人、張飛選手!ついに決勝に王手をかけたぁ!」


鈴々「楽勝なのだ!」


陳琳「準決勝も一撃で決めた、馬超選手!新たな神話の誕生かぁ!?」


張飛と馬超は何の苦もなく次々と勝ち進んでいき、ついに決勝戦へと進んだ。




ゴォンゴォンゴォ~~~ン!



陳琳「冀州一武踏会も等々、最後の試合です!並み居る強豪を打ち倒して決勝の場にコマを進めたのはこの二人ぃ!まずは脅威の小旋風、張飛!それに対するのは西涼の暴れ馬、馬超!こん大会最強を決める闘いも、ついに決着!注目の決勝戦はこの後すぐ!!」


袁紹の席には所厠と書かれた看板が立っており。数分後、戻ってきた袁紹は退屈そうな顔だった。



馬超「まさか本当に決着まで上って来るとはなぁ、ハアァァ!タアァァ!さぁ!かかってこい!」


馬超は自分の得物、銀閃を振り回して構える。



鈴々「お前に勝って、優勝賞金は鈴々が貰うのだ!うりゃあぁぁ!ふんっ!」


張飛も負けじと蛇矛を振り回して構える。



鈴々「たぁ!」


馬超「ハァ!」




ガキィン!



二人は空中に跳び上がってお互いに得物をぶつけ合い、そのまま落下しながらも得物を振るい続ける。



鈴々「ふんっ!」


馬超「そりゃあっ!」




ガンッ!ギンッ!ガキィン!



張飛と馬超の激しい攻防戦が続く中、袁紹は眠そうだった。



鈴々「中々やるのだぁ!」


馬超「そっちもな!」


陳琳「いやぁ凄い!これは凄い!正に決勝戦に相応しい激闘です!」


馬超「(なんだ、このチビ!?ちっこいくせにどうして強いんだ!・・・けど、一番強いのは)・・アタシだあぁぁ!」




グゥ~~



馬超「なっ!?」


張飛のお腹が鳴ってしまい馬超は気が抜けて銀閃を床に刺してしまった。



観客『ハッハハハ!!』


鈴々「え、えへへ////」


会場は笑いに包まれ張飛は恥ずかしそうにお腹を摩る。



馬超「えへへ、じゃないだろ!真面目にやれ!」


鈴々「ゴメンなのだ」


馬超「まったく!勝負の最中に腹が鳴るなんて緊張感が足りな〈グゥ~~〉なっ!?////」


鈴々「ああ!」


観客『ハッハハハ!!』


馬超のお腹も鳴って再び会場に笑いが包む。



袁紹「両者そこまで!」


鈴々、馬超「「え?」」


今まで退屈していた袁紹が唐突に二人の闘いを止める。



袁紹「この勝負引き分け!よって両者を優勝とします!」


袁紹の行きなりの行動に文醜と顔良は掌鼓と声呼歓の看板を急いで掲げる。



観客『わぁーーー!!』


袁紹「(やっと私の出番ですわ)それでは皆さん!閉会の言葉を名族たる私が・・えぇっ!?」


袁紹は周りを見るとすでに観客が誰ひとり居なかった。



陳琳「えぇと、次の仕事先は~と」


陳琳は次の仕事に向かい、武踏大会は解散で終わった。







日向「鈴々、戻ったぞ」


仕事を終えた日向達は宿へと戻り、日向は部屋の扉の前で張飛に声を掛けるが。



日向「ん?鈴々?」


返事がなく、日向は扉を開けて入り、部屋の中を見渡して張飛を捜す。



日向「居ないな、アイツ何処行ったんだ・・・・まさか外か?」


部屋の窓から外を見る日向。すでに太陽は沈み外は暗くなっていた。



日向「・・・はぁ。まったく、世話の掛かる妹だ」


そう言って日向は部屋を出ていき廊下を歩いて宿の入り口に着くとそこで関羽と出会う。



関羽「あれ?焔殿、出掛けられるのですか?」


日向「おお。鈴々が居ないから、ちょっと捜してくる」


関羽「ああ、そうですか・・・・って!?鈴々が居ないっ!ホ、ホントですか、焔殿!?」


日向「おお、居なかったぞ。何なら部屋に行って確かめて・・・」


日向が最後まで言い終わる前に関羽は急いで部屋に向かって張飛を確認しに行く、その間に日向は一つ溜め息をしてから外に出て行き夜の街を歩いて張飛を捜すのであった。







場所は変わり。袁紹の屋敷では張飛と馬超が袁紹の屋敷に招待されて食事をご馳走になっていた。



鈴々「ハグハグ!」


馬超「モグモグ!」


袁紹「おっほほほ!良い食べっぷり、沢山召し上がれ。それにしても今日の貴女達の闘いぶり、本当に見事でしたわ」


馬超「いや~♪」


袁紹「そこで貴女達に相談なんですけど、もし良かったら我が袁家の客将になって頂けませんこと?」


鈴々、馬超「「ん?」」


袁紹の言ったことに張飛と馬超は食事の手を止める。



鈴々「客将って何なのだ?」


馬超「う~ん。まぁ、簡単に言やあ、お客さんみたいなもんだなぁ」


鈴々「ふ~ん、客将になったら毎日こんなご馳走が食べられるのか?」


袁紹「おーっほっほっほっ!もちろんですわ!朝昼晩と最高の料理人が腕を振るった料理をお出ししますわよ」


鈴々「だったらなるのだ!」


馬超「少しの間なら良いかな」


袁紹「おーっほっほっほっほっ!」


そんな袁紹達のやり取りを扉の陰から文醜が見ていたのであった。







顔良の部屋。顔良は鏡の前で自分のお腹の肉を摘まんでいた。



顔良「う~ん、ここんとこあんまり出陣してないから、ちょっと運動不足かしら?」




バァン!



文醜「斗詩!大変だ!」


文醜は相手の許可も得ずに扉を力強く勝手に開けると顔良は慌ててお腹を隠す。



顔良「何よ猪々子!急に入って来ないでよ!」


文醜「麗羽様、どうやら馬超と張飛を召し抱えるみたいだぞ!」


顔良「良いじゃない、あの二人強いしきっと戦力の増強に・・」


文醜「何のんきなこと言ってんだ!今でこそアタイらは麗羽様の一の側近だけど!もし、あんなバカ強え奴等が来たら」


顔良「うっ!・・・確かにそうね」


文醜「ど、どうする?」


顔良「どうするって言われても・・・はっ!そうだ!」


顔良は何かを閃いて文醜に耳打ちをする。







張飛と馬超は袁紹の屋敷にそのまま泊まっていき。翌日の朝、文醜と顔良は張飛達について袁紹に話していた。



袁紹「え?張飛と馬超を召し抱えるのをやめろ、ですって?」


顔良「い、いいえ、そうは言ってないですけど・・」


袁紹「あの二人の強さは昨日、貴女達も見たでしょ?あれだけの豪傑を配下にすれば、きっと曹操の鼻を明かしてやれますわ♪」


袁紹は頭の中で曹操が悔しがる姿を思い浮かべる。



顔良「武勇に優れてるのは認めます。ですがあの二人、強く賢く美しく掲げる袁紹軍の将として相応しいかどうか」


袁紹「ふ~ん、確かに余りお上品とは思えないわね」


文醜「ですよね~!」


顔良「(私達も馬族出身で人のこと言えないけど)でっ!そこで一つ提案が有るんですけど」


袁紹「提案?」


顔良「はい、馬超と張飛が麗羽様の配下となるに相応しいかどうか試験をするのです」


袁紹「なるほど、適性試験というわけね」


顔良「はい!」


袁紹「・・・良いでしょう」


文醜(よ~し!これであの二人に無理難題を吹っ掛けて試験に失格したからって言ってお払い箱にするば)


袁紹「では試験の課題は私が出します」


文醜、顔良「「ええ!?」」


予定外な事が起こって二人は焦る。



袁紹「それで、あの二人と勝負なさい」


顔良「しょ、勝負ですか?」


袁紹「勝って、貴女達があの二人より優れている事をお見せなさい。そうすれば今までどうり私の側近は貴女達・・・・ただし、もし負けたりしたら」


文醜「負けたりしたら?」


不安そうに文醜が聞き返すと袁紹は手で首を切る動作をする。



袁紹「これよ!これ!」


文醜「これってまさか、斬首!?」


袁紹「違うわよ!クビよ!お払い箱って事!」


文醜「なんだ~良かっ・・・えっ!?クビィ!?」







試合会場。



陳琳「さぁ、突発的に始まった!袁紹軍の適性試験!張飛、馬超の新参組とお馴染み文醜、顔良組が!強さ、賢さ、美しさの三つを競います!」


観客『わぁーーー!!』


袁紹「まずは賢さの試験から」


袁紹の合図で舞台にはイス、マジックハンド、吊るされたバナナが用意された。



顔良「え~と、これは///」


文醜「アタイ、こういうの苦手何だよな~」


顔良「いや、苦手とかそういう事じゃなくて」


鈴々「アレを取るぐらい簡単なのだ!こうやって」


張飛はイスを吊るされてるバナナの真下に動かして、イスに乗って手を伸ばす。



鈴々「あれ?届かないのだ」


それを見ていた顔良は呆れ顔になる。



馬超「馬鹿だな!こういう時は道具を使うに決まってるだろ!ほら」


馬超はマジックハンドを拾いそれを使ってバナナを取ろうとする。



馬超「あ、あれ?何だ、届かないぞ」


それを見かねた顔良は我慢ならずに動く。



顔良「あの!これって、こうやってこうやれば簡単じゃないかしら」


顔良はイスを動かしてその上に乗りマジックハンドを使ってバナナを取る。



馬超「おお!!」


鈴々「その手が有ったのだ!」


顔良のやり方を見た張飛と馬超は普通に納得する。



文醜「どうだ!知力34の力を思い知ったか!だーっはっはっはっ!」


自分達が勝った事に高笑いする文醜、だが顔良は複雑な気持ちだった。



顔良「うぅ~。勝ったけど、なぜかあんまり嬉しくない・・」


賢さの試験は文醜、顔良が勝利した。



袁紹「次は我が配下に不可欠な美しさの試験ですわ!おーっほっほっほっほっ!」


張飛、馬超、文醜、顔良は舞台裏にある控室に移動する。そこには色々な衣装が用意されていた。



鈴々「面白い服がいっぱいなのだ!」


馬超「まいったな、アタシおしゃれとかあんまり・・・」


張飛はすぐに服が決まって着替える。馬超は悩みに悩んでから渋々、着替え始める。



陳琳「さぁ!そろそろ準備が出来たようです!それでは最初は張飛、馬超組です!」


鈴々「がお~がおがお~なのだ~!」


観客『ハッハハハ!!』


張飛はピンクの虎の着ぐるみを着て舞台に登場する。観客達に笑われるも張飛は気にすることなく楽しんでいた。すると観客達の笑いが一瞬にして止まるのであった、その原因はかわいらしい服を着た馬超が登場したからである。



観客『おおーー!!』


一部の観客から黄色い悲鳴が飛び交う。



馬超「あ、あんまジロジロ見んなよ。アタシこういうヒラヒラしたのは似合わないって、分かってんだから///」


陳琳「えぇ~、馬超選手、一部の観客に激しく受けてるようですが。それでは!客席の皆さん!審査をお願いします!」


美しさの試験では観客にマルが書かれた札を挙げてもらい、その数で勝負を決める。そして観客達は一斉に札を挙げる。



陳琳「なお、集計は冀州野鳥の会の皆さんにご協力いただいております」


双眼鏡を片手に会員達は札の数を数える。



陳琳「さぁ!集計の結果が出ました!87点!かなりの高得点です!果たして文醜、顔良組はこれを越えられるのか!」


一方、文醜、顔良は舞台袖でコソコソしながら相手の点数を伺っていた。



文醜「ちっ、中々やるな~あの二人~」


顔良「ねぇ、本当にこの格好じゃなきゃダメなの!?」


文醜「今さら何言ってんだ!一か八かこれで勝負だ!」


顔良「でも、やっぱり~」


文醜「行くぞ!」


文醜は舞台に駆け出し、顔良も渋々と続く。



文醜「乱世に乗じて平和を乱す賊共め!」


顔良「漢王室に代わって成敗よ!」


どこかの魔法少女のような衣装を着て登場する文醜、顔良だが完全な場違いで会場は冷める。大人がやるにはあまりにも痛々しい格好に、さすがの袁紹も引いていた。



陳琳「え~、それでは、審査をお願いしま~す」


陳琳はめんどくさくも採点をお願いする。



陳琳「ん~、以外に点数が延びません。87対13で張飛、馬超組の圧勝です!」


鈴々、馬超「「やった~!」」


文醜、顔良「「・・・・・・・・」」


文醜と顔良は色んな意味で死に舞台裏の控室で沈んでいた。



文醜「負けた」


顔良「色々捨てて頑張ったのに負けちゃったぁ~」



袁紹「では最後は!両者に強さを競ってもらいます!」


二組はそれぞれ武装して舞台に立つ。



袁紹「ただし、武器を取って打ち合うのではなく。我が袁家に代々伝わる、この!・・・」


そう言って袁紹が後ろから取り出した物は、股間に白鳥の頭が飾られた、まわしだった。



袁紹「華麗で優雅で壮麗な白鳥のまわしを締めて女相撲で決着を着けてもらいますわ!」


全員『ええぇーーっ!?』


しばらくして文醜、顔良はまわしを着け張飛、馬超が来るのを待っていた。



陳琳「さ、さぁ~盛り上がって参りました~、泣いても笑ってもこれが最後の闘いです張飛、馬超組の登場がまだ「あの・・」ん?・・ふむふむ・・え!?」


陳琳に声を掛けた大会関係者の男は何やら耳打ちをする。



陳琳「え~ここで残念なお知らせです!只今入った情報によりますと張飛、馬超組はこの最終試験を棄権するとの事です!」


文醜、顔良「「ええ!?」」


張飛と馬超の二人は最終試験を辞退したのだった。



袁紹「・・・この程度で逃げるとは華麗で優雅で壮麗な我が袁家の家臣は勤まりませんわ。2対1で文醜、顔良組の勝利とします!」


観客『わぁーーー!!』


顔良「勝った!私達、勝ったのね!」


文醜「ああ!アタイ達は勝ったんだ!」


顔良「代わりに何か大事なものを失った気もするけど!それでも勝ったのね!」


文醜「もちろん!」


文醜、顔良「「うわぁ~~ん!!」」


自分達の居場所を守った事に安心して、二人は泣いて抱き合うのであった。







馬超「いや~、いくら何でもアレは勘弁してほしいよな~」


鈴々「さすがの鈴々もアレはちょっとキツイのだ~」


会場を抜け出した張飛と馬超は張飛が泊まってる宿へと向かっていると。



鈴々「あっ!お兄ちゃんなのだ!お兄ちゃーん!」


張飛は道の向こうで日向を見付けると笑顔で走り出し馬超は跡を追う。



鈴々「お兄ちゃん!」


日向「ん?・・おっと!」


張飛は走りながら日向の腰に抱き着いた。日向は昨日、張飛を見付けることが出来ず。今日も街を歩いて捜していたのである。



日向「鈴々、一晩も宿に戻らなかったから心配したぞ」


鈴々「えへへ♪ごめんなさいなのだ。でもお兄ちゃんこそ何でここに居るのだ?」


日向「迎えに着たんだよ」


鈴々「そうだったのか。ありがとなのだ、お兄ちゃん♪」


馬超「え~と、張飛、誰なんだ?」


馬超は日向の事が気になって張飛に聞く。



鈴々「お兄ちゃんは鈴々のお兄ちゃんなのだ!」


馬超「えっ!?・・・って事は二人は兄妹なのか?」


少し驚いた馬超は二人の顔を交互に見る。



日向「まぁ、本当の兄妹じゃないけど、鈴々の義兄だ。俺は焔だ、よろしく」


馬超「ああ、アタシは馬超。よろしくな、焔」


日向「それじゃあ鈴々、帰るぞ」


鈴々「うん♪あっ、ねぇお兄ちゃん。馬超も一緒に連れてって良い?」


日向「良いぞ」


日向は即答して答える。



馬超「本当に良いのか?」


日向「ああ、鈴々が世話に成ったみたいだしな、遠慮しなくて良いぞ・・・んじゃあ行くか」


日向達はのんびり歩いて宿に向かう。







日向達が泊まってる宿。



鈴々「ただいまなのだ~」


関羽「コラーーーーーッ!!」


鈴々「ふにゃあっ!?」


張飛が部屋に入ると、いきなり関羽が怒鳴って怒っていた。



関羽「いったい今まで何処に行ってたんだ!ちゃんと宿で大人しくしていろと言ったのにフラフラ居なくなって!挙げ句の果てに一晩も帰ってこないなんて!」


鈴々「ごめんなさいなのだ」


関羽「それに焔殿も焔殿です!私が部屋へ行ってる間に勝手に行って鈴々を捜しに行くなんて!私にも手伝わせてくれても・・・」


日向「気にすんな!」


関羽「気にしてください!まったく!」


馬超「あ、あの~」


廊下で待っていた馬超が部屋に入ってきて声を掛ける。



関羽「ん?お主は?」


馬超「あ、どうも。アタシ馬超って言うんですけど」


鈴々「馬超はね、鈴々の新しい友達なのだ!」


関羽「は、はあ」


張飛は関羽達に馬超を紹介するのであった。

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