第5話 日向、関羽と趙雲と死地に赴くのこと (前編)
ついにあの人物が登場します。
新たに関羽と張飛と旅をすることになった日向は。次の街に向かうため歩いていたが張飛が頬を膨らませて不機嫌だった。
張飛「む~」
関羽「どうした、さっきから難しい顔して?」
日向「腹でも痛いのか?」
張飛「二人共、おかしいのだ」
日向「何がだ、張飛」
関羽「そうだぞ、何がおかしいんだ、張飛」
張飛「そこなのだ!」
日向、関羽「「は?そこ?」」
二人は張飛の言ってる事がわからず首をかしげる。
張飛「関羽とお兄ちゃんは姉妹と兄妹の契りを結んだのにどうして鈴々のこと鈴々って真名で呼んでくれないのだ。親しい同士は真名で呼び合うのが普通なのにおかしいのだ!」
関羽「確かにそうだが、知り合ってまだ間もないし」
張飛「鈴々は関羽のこと、ちゃんと真名で呼びたいのに教えてくれないし・・・・お兄ちゃんも教えてくれないし・・・・」
日向「・・・・・・・」
関羽「わかったわかった、それじゃあ・・・んっ・・・私の名は関羽、字は雲長、真名を愛紗と言う。お主には私のことを真名で呼んでもらいたい。これでいいな"鈴々"」
張飛「うん!」
関羽「さぁ、次は焔殿ですよ」
日向「・・・・・・・」
関羽「焔殿?」
日向は先程から喋らずに沈黙していた。
張飛「お兄ちゃん・・・・」
そんな日向を見た張飛は教えてもらえないのかと思って落ち込み、関羽もそう思って日向を説得しようとしたが。
日向「・・・・・なぁ、真名って何だ?」
関羽、張飛「「だあっ!」」
その言葉を聞いて、二人はこける。
日向「どした?」
関羽「知らなかったのですか!焔殿」
張飛「お兄ちゃん、知らなかったら言ってほしいのだ」
日向「すまん」
関羽「いいですか、真名とは、その人の本質を表す本名であり、親しい者以外は知っていても呼んではならない神聖な名前なんです。もし、許されてないのに呼んだらどんな相手でも首を切られても文句は言えません・・気を付けて下さい」
日向「なるほど、分かった」
関羽の説明で納得する日向。
日向「なら俺も改めて名乗るか・・俺は姓が焔、名は日向だ。字と真名は無いから好きに呼べ"鈴々"」
鈴々「わぁ!うん!」
日向と関羽に真名を呼ばれた張飛は上機嫌になり、三人は歩き続け街に到着する。
日向(意外とでかい街だな)
街の入口を入ろうとすると門番に声を掛けられた。
門番「ちょっと待て」
関羽「なにか?」
門番「違っていたらすまぬが。お主、最近噂の黒髪の山賊狩りではないか?」
そう言われて顔が少し赤くなる関羽。
関羽「いや、まぁ。そう呼ぶ者も居るようですが、自分から名乗ってる訳では//・・・」
門番「良かった、近くの村に現れたと聞き、それらしき武人を見掛けたら声を掛けていたのですが、黒髪が綺麗な"絶世の美女"・・っとの事だったので、危うく見過ごす所でした」
ガシャーン!!!
関羽から何かが割れる音がして、赤い顔が一瞬で青くなって落ち込む。
関羽「そ、そうですか・・・」
門番「そうと分かれば、早速我らが主に知らせねば」
関羽「え?」
門番「しばらくここでお待ちを」
関羽「はぁ」
門番の男は街の中へと歩いていった。
鈴々「愛紗は綺麗で有名なのだ」
関羽「ああ、黒髪がな」
鈴々「そうなのか?ねぇお兄ちゃん、愛紗は綺麗だよね?」
張飛は日向にそう聞くと関羽も気になって日向を見詰める。
日向「そうだな、綺麗と言うよりかわいいと思うぞ」
関羽「えっ!・・・・か、かわいいんですか?////」
日向「おお」
関羽「・・・あ、ありがとうございます/////(・・かわいい・・・)フフ」
関羽は上機嫌になり、門番を待ってる間ずっと微笑んでいた。しばらくすると門番の男が戻って来て三人はこの辺りを治めている太守の元へと案内され、三人は屋敷の庭に建ててある東屋で待たされていた。すると二人の女性が近づいて来た、一人は水色の髪で白い服装の女性、一人は赤い髪の影が薄そうな女性。
関羽は椅子から立ち上がった。
???「そのままで結構」
二人の女性は椅子に座る。
公孫賛「待たせてすまない。我が名は公孫賛、字は伯珪。太守としてこの辺りを治めている。こちらはお主と同じ旅の武芸者で」
趙雲「我が名は趙雲、字は子龍。お初にお目にかかる」
日向(まさかとは思ったが・・・・どうやらこの三国志の世界の英雄たちはみんな女のようだな)
公孫賛「趙雲殿には客将として、私の元にとどまってもらっている」
関羽「お招きに与り光栄です。私の名は関羽、字を雲長。それでこちらは」
関羽は張飛を紹介しようとするが。
鈴々「鈴々なのだ!」
元気よく答える張飛。
日向「いや、真名じゃダメだろ」
関羽「そうだぞ、真名ではなくちゃんと名乗ってあいさつせぬか」
趙雲「関羽殿、歳の割に随分大きなお子様をお持ちですな。そちらが旦那様ですかな?」
関羽「へ?・・・ち、違います!鈴々は私の娘でなくて。し、姉妹の契りを交わした仲でして」
関羽は慌てて否定したが、そんな関羽を見た趙雲は悪戯をするような顔をする。
趙雲「ほぉぉ、姉妹の契りを・・・では、どちらが攻めでどちらが受けですかな?」
関羽「っ!?/////////」
張飛はあごに指を当てて考える。
鈴々「う~む、どっちかって言うと鈴々が攻めなのだ」
関羽「コラ!よく意味も分からんくせに適当な返事をするな!」
鈴々「じゃあ、どういう意味なのだ?」
関羽「そ、それはだな・・・焔殿、お願いします」
日向「・・・何をだ?」
関羽「で、ですから。鈴々に先程の説明を」
日向「?」
日向は意味が分からず首をかしげる。
公孫賛「あ、まぁそういう話はまた後でしてもらうとして。そちらは?」
日向「俺は焔だ、関羽とは目的は違うが一緒に旅をしてる」
公孫賛「そうですか」
関羽「ところで、何か用があったのでは?」
関羽に言われ、用件を思い出す公孫賛。
公孫賛「おお、そうであった。実はお主に折り入って頼みが有るのだが」
関羽「私に?」
公孫賛「辺境の小領主ではあるがこの公孫賛、今の世を憂いる気持ちは人一倍あるつもりだ。冀州の袁紹、江東の孫策、都で最近頭角を現して来た曹操と。天下に志しを抱く者は皆、ういの人材を求めているとか、昔日の漢王室の権威すでに無く、乱れに乱れた世を正すためお主の力を是非私に貸して「公孫賛殿」ん?」
公孫賛の話に趙雲が割り込んできた。
趙雲「お話の途中で申し訳ないが・・・それは少し早計ではありませぬかな?」
公孫賛「と言うと?」
趙雲「黒髪の山賊狩りの事は、私も旅の最中に風の噂で耳にしました。だが噂というのは得てして尾ひれが付きがちなもの」
関羽「うっ・・まぁ、確かに」
関羽は心当たりがあって否定できなかった。
趙雲「故に関羽殿の実力を見極めてからお召しかかえになっても遅くないのでは?」
公孫賛「ふむ、なるほど」
趙雲「差し支えなければ、私がその役をお引き受けしますが」
公孫賛「おぉ、いかがかな?趙雲殿と一手、手合わせしてもらえぬか?」
関羽「いやぁ、しかし私は」
趙雲「臆されましたかな?」
そう言われて関羽の顔は厳しくなる、それと同時に張飛が立ち上がる。
鈴々「そんな訳ないのだ!」
関羽「コラ、鈴々!」
鈴々「愛紗はすうぅごく強いのだ!だからお前なんかにずえぇたい負けたりしないのだ!っていうか、お前なんか愛紗が出るまでもないのだ。鈴々がチョチョイのプーでコテンパンにしてやるのだ!」
関羽は頭を抑えて、趙雲は立ち上がる。
趙雲「ほぉぉ、随分な自信だな・・・それでは一つその自信のほどを試させてもらおうか?」
鈴々「望む所なのだ!」
二人は庭に歩いていった。
日向(こりゃあ止めれんな)
五人は庭に移動して。張飛と趙雲はお互いに向き合い得物を構え、日向と関羽は後ろに控えて観戦、公孫賛が審判になり中央に立っていた。
公孫賛「始め!」
公孫賛の合図で手合わせが始まった。
鈴々「どぉりゃあぁぁ!」
張飛は飛び上がり、蛇矛を振り下ろす。
ガンッ!
趙雲「ほぉ~」
趙雲は攻撃を受け止めた。
鈴々「ふんっ!」
張飛は宙返りしながら後退して。
鈴々「うりゃりゃりゃりゃあー!」
蛇矛を頭上で振り回し再度攻撃する。
鈴々「うっりゃあー!」
趙雲「ふっ!」
張飛は正面から切り掛かるが趙雲は体を反らして避けて。次に蛇矛を頭に目掛けて振り払うが頭を引いて避けると。
関羽「っ!?・・・あれは」
日向「気付いたか、関羽?」
関羽「焔殿も?」
二人は趙雲の動きにある事に気付く。
日向「最初に趙雲が避けた時にな・・・趙雲の奴、鈴々の攻撃を紙一重で避けてる、もう鈴々の動きを見切ってるな」
関羽「ただ者ではないとは思いましたが、かなりの実力の持ち主ですね(・・・それにしても、私より先に気付くなんて。やはり焔殿もただ者ではないようだ)」
二人は張飛達に視線を戻すが関羽はそわそわしていた。
鈴々「おりゃっ!おりゃ!おりゃー!」
趙雲「ふっ!・・よっ!・・はっ!」
張飛は攻撃し続けるが趙雲は全て避けた。
鈴々「ヒラヒラ逃げてばかりなのだ!」
趙雲「フッ、どうした?もう終わりか?」
鈴々「ムッ!・・まだまだなのだあぁぁ!「鈴々!そこまでだ!」っ!?」
趙雲の挑発に頭にきた張飛は攻撃しようとした所に関羽が止める。
鈴々「どうして止めるのだ!鈴々はまだやれるのだ!」
関羽「分かっている・・ただ、私が立ち合ってみたくなったのだ」
鈴々「む~・・・・分かったのだ」
張飛は渋々と代わって、関羽が趙雲と手合わせとなり関羽は偃月刀を手にし身体中から闘気が溢れ出る。
関羽「いざ」
そう言って偃月刀を構えるが趙雲は構えを解いた。
関羽「ん?」
趙雲「本当に強い相手なら、わざわざ打ち合わなくても分かる。公孫賛殿、関羽殿のお力、確と見届けました」
公孫賛「うむ」
日向「終った様だな」
鈴々「ほえ?はにゃあ?」
関羽「ふぅ」
手合わせは終わり五人は東屋に戻ってお茶を飲んでいたが張飛が本日二度目の不機嫌になっていた。
鈴々「む~」
関羽「どうした鈴々?そんな膨れっ面して」
鈴々「さっきのだと、何だか鈴々が本当は強くないみたいなのだ」
関羽「いや、それは・・・」
関羽はどう言おうか悩んでいたが趙雲が口を開く。
趙雲「張飛、確かにお主は強い。ただその強さを上手く使えてはいないがな」
鈴々「ん?」
趙雲の言ってる事が理解出来ず首をかしげる張飛。
趙雲「ところで公孫賛殿、この間お話しした例の件ですが・・・」
公孫賛「ああ、灼銅山の事か」
関羽「灼銅山の事とは?」
関羽は何の事か気になり、公孫賛に聞く。
公孫賛「・・いや、恥ずかしながら山賊退治にちょっと手子ずっていてな。きゃつらの出没している範囲から考えて、賊の隠れ家は灼銅山の山中にあるのは確かなのだが。それらしき砦が見付けられず討伐隊を出す事も出来んのだ」
趙雲「それを聞いて先日、私が一件を案じたのだ」
関羽「ほう、してその策とは?」
日向「・・・ススーーゴクッ(俺には関係ない話だな。それにしてもウマイな、この茶)」
日向は公孫賛達の話は聞いていたが興味がなく、お茶を飲む。
趙雲「偽の対象を仕立ててその荷物の中に潜み、これをわざと賊に奪わせて隠れ家に忍び込む。つまり賊自ら隠れ家への案内をさせるという寸法だ」
関羽「なるほど、それは面白い」
公孫賛「し、しかし賊の隠れ家へ単身乗り込むなど・・・」
趙雲「虎穴に入らずんば虎児を得ず、狡猾な賊を中滅するには多少の危険はやむ得ぬ事。どうだ関羽殿、私と一緒に賊の隠れ家を訪ねてみぬか?」
関羽「ええ良いでしょう、それから私からも提案が有るのだが」
趙雲「聞こう」
関羽「焔殿も参加させてはどうでしょう?」
日向「っ!?・・・ゴホッゴホッ・・」
いきなり関羽にそんな事を言われた日向は驚いてお茶を喉に詰まらせる。
趙雲「?・・なぜ焔殿も一緒に?」
関羽「実は、先程の鈴々達の手合わせで趙雲殿が鈴々の動きを見切ってる事に私と焔殿は気付いたのです。けど、それを先に気付いたのは焔殿なんです。焔殿もかなりの実力の持ち主、この作戦に参加させても何の問題もないと思います」
趙雲「・・・ほおぉ」
興味深そうに趙雲は日向を見る。
趙雲「焔殿は武に心得があるのですかな?」
日向「・・・まぁ少しな」
趙雲「ふむ、少しですか・・・まぁ、味方は多いに越したことはないですし。私は構いませんよ。どうです焔殿、我等と来られますか?」
日向「(賊退治か・・・まぁ良いか、試したい事も有るしな)・・ああ、いいぞ」
鈴々「鈴々も行くのだ!」
趙雲「お主にはムリだ!」
鈴々「何でなのだ!」
張飛は机の上に座り趙雲に問い詰める。
趙雲「よいか、荷物の中に潜み賊の隠れ家に向かう間はずっと息を殺して居なければならんのだぞ。お主の様な根が騒がしく出来ている人間にはムリだ、きっと一時だって大人しくしてられまい」
鈴々「うう~、そんな事無いのだぁー!!鈴々はやれば出来る子なのだぁー!!」
騒ぐ事を予想してたように耳を塞いで平然とする趙雲。
趙雲「ほう、では今ここでやって貰おうか」
鈴々「お安いご用なのだ!」
張飛はあぐらを組んで椅子に座る。
鈴々「こうやってジッとしてればいいのだから簡単なのだ」
1分経過・・・
鈴々「・・・・・・」
5分経過・・・
鈴々「うぅ~・・」
日向(頭から煙が出てるな、もうすぐ熱で倒れるぞ)
10分経過・・・
鈴々「ううぅぅ~・・〈ボフンッ〉はにゃあぁ!」
張飛は爆発して倒れた。
関羽「鈴々!?大丈夫か!しっかりしろ、目を覚ませ!」
日向、趙雲「「ススーー」」
関羽は慌てて張飛に駆け寄り、日向と趙雲は予想済みのようにのんびりお茶を飲んでいた。
関羽「凄い熱だ!公孫賛殿!医者、早く医者を!」
公孫賛「ハ、ハハ・・・」
関羽の慌てふためく姿に公孫賛は苦笑いするしかなかった。
しばらくして関羽は落ち着き、屋敷の外で既に荷物の準備が出来ているのを関羽と趙雲は確認しに来ていて、日向は公孫賛と話がありこの場には居なかった。
関羽「ここに隠れるのか」
二人の前には二つの赤い箱があり、一つは関羽と趙雲が入る箱、もう一つは日向が入る箱である
趙雲「ふむ、少々窮屈だがやむおえまい」
関羽「この中に二人で入るとなると、相当身体をくっ付けないと・・・」
趙雲「心配するな、私はその気がなくもないのでむしろ大歓迎だ」
関羽「なるほど、それな・・っへぇ!?・・あ、あの・・その気って・・そのあの・・ええ!」
日向「すまん、待たせた」
公孫賛と話終えた日向は屋敷から出てくる。
関羽「ほ、焔殿!」
日向「・・・どうした、そんなに慌てて?」
関羽「い、いえ!何でもありません////」
関羽は恥ずかしさのあまり、日向から顔を背ける。
趙雲「ところで焔殿、先程、公孫賛殿と何やら話していましたが何を話されていたのですかな?〈ニコニコ〉」
日向「(あの顔何か企んでるな)・・・・別に大した話じゃない。それより準備が出来てるんなら、早速始めよう」
何かを察した日向は適当に言って、自分に用意された箱に入っていった。
趙雲「ふむ・・(感づかれてしまった様だ)・・関羽殿、我々も入りましょう」
関羽「わ、わかった」
関羽と趙雲はもう一つの箱に入り出発した。
灼銅山の山中を関羽達を乗せた偽の隊商が進んで行くが、関羽と趙雲の方では。
関羽「ちょ、趙雲殿!」
趙雲「シッ、いつ賊が来るやもしれんのだ、声を出されては困る」
関羽「そ、それはわかっているのだが趙雲殿の膝が////」
趙雲「私の膝が何か?」
関羽「う///・・うぅ////」
隊商「・・・・・・////」
そばで聞いていた偽の隊商の男は恥ずかしそうに運んで行く。
日向「Zzz・・・Zzz・・・」
日向はヒマだったため寝むっていた。すると木陰から偽の隊商を見る二人の賊が居た。
その頃、公孫賛は執務室で書類仕事をしていると、文官の男が入って来た。
文官「公孫賛様」
公孫賛「どうした?」
文官「先程、囮の隊商が賊に襲われたとの報告が」
公孫賛「っ!・・・で、首尾は?」
文官「はい、隊商を装っていた者達に怪我も無く荷物の方はまんまと賊共の手に・・」
公孫賛「・・・・フッ」
公孫賛は策が成功して笑みを浮かべる。
賊達は奪った荷物を貯蔵庫に運んでいた、そして賊が赤い箱を床に置くと。
関羽「んぁ」
アニキ「ん?」
賊の一人が辺りを見渡す。
チビ「どうしゃした?」
アニキ「今女の声がしなかったか?」
デク「ハァ?何言ってるんっスかアニキ、幻聴がするなんてよっぽど飢えてるんっスね」
アニキ「フッそうかもな。よぉーし、また村の娘に酌でもさせるか!」
チビ「今日も祝杯ですねぇ!」
賊達は貯蔵庫から出ていった。
趙雲「・・・・・大丈夫、のようだな・・・ふぅ」
関羽「あ~ぁ~あ~ぁ・・ハァハァ」
二人は箱から出るが関羽は疲れきっていてその場に座り、息が乱れ服も乱れていた。
日向「ふわぁ~・・・・なんだもう着いたのか」
目を覚ました日向は箱から出る。
趙雲「おや、眠っていたのですか?」
日向「少しだけだ」
趙雲「(まったく、のんきなお方だ)・・・・どうやら此処は地下のようだな」
関羽「地下?」
三人は部屋から出て辺りを警戒する。
趙雲「おそらく此処は昔、鉱山だったのであろう」
関羽「その坑道を隠れ家にしたというわけか、いくら探しても見つからんはずだ」
三人は先に進む。
趙雲「思った以上に広いようだが、これだと出口を探すのは一苦労だな」
関羽「しかし敵中にあって得物がコレとは、いささか心もとないな」
関羽は懐から短剣を取り出した。三人の得物は長物のため箱には入らなかったのである。
趙雲「やむおえまい、お主の乳が邪魔でこれ以上大きな武器は入らなかったのだ」
関羽「っ!?べ、別に私の胸だけが場所を取っていた訳ではあるまい!」
趙雲「ふむ、確かに乳よりも、お主の尻の方が場所塞ぎであったかもしれんな」
関羽「なっ!」
日向(・・・・ここの連中これだけ騒いでも誰も異変に気付かないなんて、相当頭が悪いようだ・・・・ん!)
趙雲「シィ」
ギャハハハハハハ!
すると、奥から賊達の笑い声が聞こえ、趙雲は聞き耳をたて、関羽の表情は変わり、日向は赤眼を発動して声のする方を見渡す。
日向(50人以上は居るな)
三人は奥へと進んでいった。
賊達は坑道の広場らしき所で宴をしていた。奥の方では賊の親玉が玉座に座り二人の女性に酌をさせていた。
村娘「イヤ!やめてください、お願いします」
???「お願いします、もうやめてください」
アニキ「ヘっヘっヘぇ~、いいじゃねぇか減るもんじゃないし」
その様子を上の階の陰から伺う三人。
日向(・・・全く、どこの世界にもクズはいるんだな・・)
関羽「おのれ~無体な・・成敗してくれる」
関羽は怒りを露にしていた。
趙雲「関羽!どうするつもりだ?」
関羽「どうするも何も、助けに行くに決まっておろう」
趙雲「とは言え相手はあの人数だ」
関羽「しかし!」
日向「俺が行く、お前らは下がってろ」
日向は二人を横切って進むが趙雲に肩を掴まれて止められる。
趙雲「バカなことを言うな、それに我等の使命はこの隠れ家の場所を公孫賛殿に報せ「放せ」・・・・・」
日向「趙雲、俺の邪魔すんな・・・その腕折られたくなかったら・・・・・今すぐ放せ」
そう言って日向は趙雲を睨み付ける。
趙雲「ッ!!!???〈バッ〉」
趙雲は背中に寒気を感じ、脳内には自分の腕が折られるイメージが映りすぐに手を放す。
趙雲(何だ今の威圧感は・・あそこで手を放さなかったら本気で腕を折られていた。それに気のせいか、焔殿の眼が赤い眼をしていた・・・・一体何者なんだ、この方は?)
日向は趙雲を気にする事なく飛び降りて賊に近付いていった。
賊『ん?』
数人の賊が日向が近付いて来ることに気付く。
賊A「誰だオメェ」
日向「フッ、これから死ぬお前らクズ共に名乗っても意味ないだろ」
クズという言葉を聞いた賊達はキレて武器を取る。
賊B「あんだとコラァ!!」
賊C「テメェ!どっから入ったか知らんが!自分の状況わかってんのかぁ!」
賊D「生きて此処から出られると思うなよぉ!」
アニキ「野郎ども!やっちまえぇ!」
賊『ウオォォォォ!』
賊達は一斉に日向に襲い掛かる。
関羽「焔殿!」
趙雲「くっ、やもえまい!」
二人は飛び降りて日向に助太刀しようとする。
日向(さぁ、実験開始だ)
日向は全身に氣を纏わせて氣を圧縮する。
日向「氣術〝鬼王〟!」
全身に纏わせた氣を一気に周囲に展開して賊達に当たると。
バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタ
氣に当てられた賊達は次々と倒れていき気絶していった。
日向「この程度で終わりかよ」
関羽「なっ!?」
趙雲「これは・・・・」
助けに入ろうとした関羽と趙雲は賊が全員倒れたことに驚き、日向に近付きながら倒れてる賊を確認する。
関羽(全員気絶してる!?)
趙雲(何故だ!?)
関羽と趙雲が再び驚いていると。
???「あ、あの」
日向「あ?」
賊に酌をさせられていた村娘と桃色の長い髪の女性が日向に話し掛ける。
???「危ない所を助けていただいて、ありがとうございます」
村娘「ありがとうございます」
二人はペコリと頭を下げて日向にお礼をする。
日向「無事のようだな」
???「はい、あのあなたは?」
日向「俺は焔だ、領主に頼まれて賊退治に来た」
劉備「焔さん、本当にありがとうございます。
私の名前は"劉備"、字を"玄徳"と言います」
氣術〝鬼王〟
殺気を乗せた氣を全身に纏わせて圧縮したあと周囲に展開して特定の相手にだけ殺気を直接感じさせて気絶させる技。