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第3話 日向、張飛に会うのこと

関羽と共に村に行く事になった日向は、歩き続け村が見える所まで来ていた。



関羽「ん?」


道中にある一本の木の横に土で盛られたお墓が関羽は気になり立ち止まり、日向も釣られて止まる。



日向「墓か」


お墓には札が貼られて花が供えてあった。

そこに村からきた籠を背負った老婆が二人の前で立ち止まる。



老婆「最近はこの辺りまで賊が出るようになってのぅ。身ぐるみ剥がされて殺されたもんも何人もおってな、花はそん人らのせめてもの手向けじゃよ」


関羽「そうだったのですか」


二人はお墓に手を合わせて拝む。



老婆「お役人様がしっかりしとったら。こんな物騒な事は起こらんじゃろうに、嫌な世の中になったもんだで」


そう言って老婆は再び歩きだし二人がきた道へと進んだ。そんな老婆の背中を関羽は悲しい顔をして見ていた。



日向(俺の居た世界じゃ、たまにそうゆう事件はあるが。そこまでひどいのか、ここは・・・)


そして二人は歩きだし村に入った。



関羽(こんな村の近くまで賊が出没しているとは。一体この国はどうなってるんだ)


日向「どうかしたか?真剣な顔をしてるが」


関羽「いえ、何でも・・・ところで「ひぃっ!出たぁ!!」賊か!うあぁ!」



突然聞こえた悲鳴に関羽は身構えるが目の前にいきなり鶏が現れて関羽は驚いて声をあげる。



???「退けどけどけー!鈴々山賊団のお通りなのだぁー!」


鶏の後を追うように豚に乗ったショートカットの虎の髪飾りをした少女を先頭に「鈴」とゆう文字の旗を掲げた子やジャガイモ、卵、大根を持った子供達がその後に続き、二人の方に走ってきていた。



関羽「こ、子供」


日向「関羽、避けた方がいいぞ」


そう言いながら日向は道の端に移動した。



関羽「え?うあぁっ!」


子供達から逃げていた鶏を途端に避けるが尻餅をついてしまった関羽。子供達は二人の前を通り過ぎて村から出て行った。



関羽「な、何なんだ?」


日向「さぁな・・・ほら、立てるか?」


突然の出来事にぼう然と座り込んでる関羽に手を差し出す日向。


関羽「すみません」


差し出された手を掴み関羽は立ち上がる。



日向「そういえばさっき、何か言いかけてなかったか?」


日向は先程関羽が言いかけた事を思い出す。



関羽「あ!そうでした、実は賊の件で焔殿にお礼がしたいのですが」


日向「あれか、別にいいって礼なんか」


関羽「いえ、あの時焔殿には命を助けられました、貴方に助けてもらわなかったら私はここには居なかったかもしれません。ですから何かお礼がしたいのです」


日向「・・・・わかった、それだったら何か飯でもおごってくれ」


関羽の真剣な目を見て日向はお礼を受けることにした。



関羽「食事なんかでよろしんですか?」


日向「ああ、昨日からなにも食ってないから、おごってくれると助かる」


関羽「その、お恥ずかしながら、あまり多くは持ってませんので。今の私では一般の料理位しか出すことしかできないのですが?」


日向「いや、むしろ安物だけで俺は十分だ」


関羽「・・・わかりました、では近くにある店に参りましょう」









女将「ハッハハハハ!そりゃ災難だったねぇ」


関羽「笑い事では無い」


日向「モグモグ」


二人は近くにあった漢飯店という店に入り炒飯を食べながら女将(おかみ)に先程の騒動の事を話した。



関羽「何なんだあの悪ガキ共は、鈴々山賊団とか名乗っていたが」


女将「鈴々ってのは真名でねぇ、名前が張飛ってんだけどその子が大将をやってる悪ガキ集団さねぇ。まぁ、やってる事は畑荒らしたり、牛にいたずらしたりって事だけどねぇ。そういやぁこの間、庄屋様の家の塀にばっかでっかい庄屋様の似顔絵を落書きしとったけど、あれぁ傑作だったねぇ」


関羽「それにしても親は何をしてるんだ。山賊気取りの悪ガキをほっとくなんて」


女将「あの子、親が居ないんだよ」


関羽「えっ」


日向「・・・・・・・」


二人はその言葉を聞いて食事を止めて、話の続きを聞いた。



女将「何でも小さい頃に押し入ってきた賊に両親を。その後、この村の近くの山小屋に住んでいた母方のじいさんに引き取られてきたんだけど、そのじいさんも亡くなって。今は一人」


関羽「・・・・・・・」


女将「あの子だって、根はいい子なんだよ。今はただちょっと羽目を外してるだけ、手下の子達の親も大目に見てやってんのよ」


日向(・・・一人、か)


鈴々の事情を知った二人は黙ってしまう、そこで関羽が重苦しく話した。



関羽「ところで女将。実は折り入って頼みがあるのだが」


女将「頼み?」


日向「ん?」






一方その頃、鈴々山賊団は山小屋に居た。中からは子供達の笑い声が聞こえていた。



子供A「今日も大成功!」


子供B「そういやぁこの間、庄屋の家の塀に書いたアレ。消されちゃってたなぁ」


子供C「傑作だったのに勿体無いよねぇ~」


子供D「ないよねぇ~」


子供達は盗ってきた物を食べながら、今日の出来事を話していた。



張飛「なぁに、今度はもぉっとすごいのを書いてやるからイイのだぁー!!」


子供E「さすが、親びん!」


子供A「鈴々山賊団、最高!」


子供達『最高!アッハハハ』




カァーカァー



楽しく笑っている時、カラスの鳴き声が聞こえ。小さい子供が外を見るとすでに夕日になっていた。



子供C「そろそろ帰る?」


子供D「うん!」


張飛「あっ」


二人の子供が帰ろうとしたら張飛は寂しい顔をした。



子供E「じゃあ、アタシも」


子供B「オレも」


子供A「アタイもっと」


それに続き他の子供達も、帰ろうと山小屋から出ていく。



子供A「親びん、さよなら~」


子供E「また明日~」


張飛「うむ、また明日ー!皆で山賊するのだぁー!!」


張飛は帰る手下の子供達を見送りながら元気よく手を振り続けた。見送り終わって中に入ると、張飛はまた寂しい顔をした。



張飛「明日になればまた皆に会えるのだ・・・・明日になれば」








夕日が沈み夜になった頃、日向達の方では女将の店で働いていた。



女将「二人ともお疲れ様、今日は上がっていいよ」


関羽「やっと、終わった」


昼間、関羽は女将の店に泊めてもらおうと相談した所。半日働くと言う条件で話は進んだが、炒飯の代金を払おうとした時路銀がない事に気付き飯代も働いて返す事にしたが、日向も一緒に働いて返す事にしたのである。



日向「俺はこの食器を片付けてからでいいです」


女将「そうかい?なら終わったら呼んどくれ、それじゃあ関羽ちゃんは先に上がりな。寝る所は、裏にある倉庫を使っておくれ」


関羽「はい、わかりました」


寝る場所を聞いて関羽は店の裏口から出て倉庫に向かった。



関羽「ここか」


倉庫に着き中に入る。



関羽「ふぅ、あの女将。結構人使い荒いなぁ」


中に入ると、わらが敷いてあり。そこに腰を下ろす関羽。



関羽「それより、焔殿にお礼をする筈だったのに。一緒に働いてもらって、逆に迷惑をかけてしまった。やはり焔殿にはちゃんとお礼をしよう」


そう言って関羽は横になると、昼間の張飛の話を思い出す。



関羽「賊に両親を、か・・・」


そのまま目を閉じて眠りはじめる。






一方、日向の方では。



日向「女将さん、一つ聞きたいことがあるんですけど」


日向は食器を片付けながら、女将に話しかける。



女将「なんだい?」


日向「人を探してるんですけど、歳は俺に近くて髪が茶色で鋭い目をした男をこの辺で見たことないですか?」


左慈がこの村の近くに居るかどうか、女将に聞く日向。



女将「う~ん、そんな人この辺じゃあ見たことないねぇ」


日向「そうですか・・・・女将さん、こっちは終わりました」


食器を片付け終わった事を女将に伝える。



女将「お疲れさん、アンタも上がっていいよ。寝る場所はさっき言った倉庫を使っとくれ」


それを聞いて日向は首をかしげる。



日向「ん?いえ、俺は泊まるつもりはありませんので。ここで失礼します」


女将「けどアンタ、この村には宿なんて無いんだよ。それに外になんか居たら賊に襲われるかもしれないよ?」


日向「大丈夫ですよ、慣れてますし。それにやることがあるので、それじゃ失礼します」


店を出ようとしたが、日向は足を止めて女将に振り向く。



日向「あ、そうだ。関羽に、お礼は気持ちだけ受け取っておく。と伝えて下さい、それじゃ」


そう言って店から出て行った。


日向「さて、他の人からも聞いてみるか」


外にはまだ人が居たため、その人達から左慈の情報を聞きはじめる。





数時間後。



日向「どうやらこの村には左慈は居ないようだな、次の街とかに期待するか」


あれから村の人達から左慈の事を聞き回っていたが、聞く人全員が知らないと答えるため。それ以上の進展はなく村を出て行った。



日向「これが一本杉か」


今、日向の目の前には一本の杉の木が立っており、その杉の木を中心に二つの道がY字路に分かれていた。



日向「確か右に行けば街があるんだったな」


そう言って進もうとしたが、左の道から何かがすぐそこまで近づいてくる気配を感じて日向は足を止めて警戒する。



ブタ「ブヒ」


日向「ブタ?」


現れたのがブタと分かり、警戒を解くとブタが日向に近づいき足にすりついてきた。



ブタ「ブヒッ」


日向「・・・・どうしたんだお前、迷子か?」


日向はしゃがんでブタの頭を撫でていると。



???「お~い、どこに居るのだ~」


ブタの来た道から誰かの声が聞こえたため、声のする方を見ると。そこには張飛が居た。



日向(あれは、張飛か)


張飛「あ!タンタン!やっと見つけたのだ」


張飛はブタを見つけると、駆け出してブタに抱きつくと日向に気付く。



張飛「お前誰なのだ、タンタンに何か用なのか?」


日向「そのブタのことか?」


張飛「うん、そうだよ!名前はタンタンって言って、鈴々の大事な友達なのだ」


張飛は嬉しそうに、ブタを持ち上げて日向に紹介する。



日向「そうか、俺は焔 日向だ。タンタンとはここで会っただけだ」


張飛「そうなのか?」


日向「ああ・・・・じゃあ俺はもう行く、お前も気を付けて帰れよ。それじゃあな」


再び街のある方向に歩き出す。



張飛「どこに行くのだ、村はあっちだよ?」


張飛は、日向が村に行くと思って、村の方を指差す。



日向「いや、俺は村に行くんじゃない。次の街に行くんだ」


張飛「え、でも。もう夜だよ、街だったら明日行けばいいのだ。それに今からなら村の誰かに頼めば泊めてくれるよ」


日向「いや、もう遅いし。みんな寝てると思うぞ」


日向は早く街に行きたかったため適当に言って、張飛を納得させようとしたが。



張飛「それだったら、鈴々の家に泊まればいいのだ!」


日向「・・・・・・・は?」


予想外の言葉に日向は一瞬思考を停止してしまった。



張飛「鈴々の家はこっちなのだ!」


日向の返事も聞かずに、張飛は日向の腕を掴んで左の道に進んだ。



日向「って!ちょっと待て!俺は泊まるなんて一言も言ってないぞ」


張飛「にゃ?べつに遠慮しなくていいのだ」


日向「いや遠慮とかそうゆんじゃなくて、はぁ・・・あのな、俺は早く次の街に行きたいんだ」


張飛「ほら、早く早く!」


日向「人の話を聞いてくれ」


張飛は日向の話も聞かずに、日向を自分の家に連れていった。



張飛「ここが鈴々の家なのだ!」


日向「・・・おじゃまします」


日向は諦めて家に入った。



日向(仕方ない、今日は諦めて。明日街に行こう)


明日の予定を考えていると。



張飛「ねぇねぇ」


日向「ん?何だ?」


張飛が話しかけてくるのであった。



張飛「どうして、こんな遅くに街に行こうとしたのだ?」


日向「人を探してるんだ、けどこの村にはその人が居なかったから。次の街に行こうとしたんだ」


張飛「でも、じっちゃんがよく言ってたよ"夜に村の外を出ると危ない"って・・・それに、お兄ちゃん何だか焦ってるみたいなのだ」


日向「俺が、焦ってる?」


張飛「うん、うまく言えないけど。鈴々もよく焦って失敗する時があるのだ。だからお兄ちゃんも、焦ってると失敗しちゃうよ」


張飛にそう言われて、日向は改めて自分の行動を考えはじめた。



日向「・・・・・(確かに、少し焦ってたのかもな。こんな子でも夜の道は危険って事も知ってるのに。俺は状況も考えずに行動してた。左慈を探すのに必死で、周りが見えていなかった)・・・そうだな、焦っても仕方ないな」


張飛「うん!」


日向(焦らなくていい、少しずつでいいから情報を集めよう。そうすれば、いずれ左慈に会うことができる)


張飛「どうしたのだ?」


日向が黙ってる事に張飛が心配して聞いてきた。



日向「いや、なんでもないよ。それよりホントに泊まっていいのか?」


張飛「うん!いいよ」


張飛は迷うことなく答えると、日向は苦笑いしてしまった。



日向「ハハ、即答だな・・・・ありがとな」


そう言って、頭を撫でると。張飛は嬉しそうに笑う。



張飛「にゃはは」


こうして日向は一晩だけ張飛の家に泊まることにしたのである。



張飛(頭撫でてもらったのすごく久しぶりなのだ、それに今日はお兄ちゃんが居るから寂しくないのだ)

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