49.魔封石
ヒメールランド王宮上空に勢ぞろいした8魔人。
キイロに宇宙空間へ飛ばされた十代半ばの少年の姿の魔人フギが居た。
戻ってきたのだ。
ツヨシの連続拳圧攻撃でダメージを受けた十代半ばの少女の姿の魔人フキョーがいた。
ダメージは回復したようだ。
コウジのかまいたちでズタズタにされた十代後半の美少女の姿の魔人ダイフケー。
傷は全く残っていなかった。
ミドリとジャックに火だるまにされた二十歳前後の太った男の姿の魔人フドウ。
火傷の跡はどこにも無かった。
アオイのサイコキネシスに緊縛された二十歳前後の髭をたくわえた男の姿の魔人アクギャク。
やはり平然とした様子だった。
ハヤトの斧に切りつけられた髪を武器とする女魔人ムホン。
やはり傷は完全に癒えている。
タダシに額や両眼を打ち抜かれた女魔人ボータイギャク。
額も両眼も再生していた。
そしてダイゴに縮められたムヘン。
元の大きさに戻っていた。
王宮の屋上に、ブラスト12兄弟と、ダルク、ジャック、ケンが並び立った。
「あいつら……、ダメージ全部回復してやがるじゃねーか……。ありかよ、こんなの」
ケンが毒づいた。
「ケン、言っても仕方ないだろう。やるしかないんだよ、やるしか」
ダルクが武器を構える。
「どうやら奴らの命を絶つことはできないらしい。いいかみんな、封印することを考えて戦うんだ」
ツヨシが全員に投げかけた。
上空のムホンが叫んだ。
「ヒメールランドの用心棒ども! 無駄な戦いはやめろ! 人間ごとき、魔人の我々には勝てない。抵抗はただの時間の無駄だ。おとなしく我々に滅ぼされよ!」
ムホンは、二十代半ばの男の姿で、八虐の魔人の中では、いちばん年長者に見える。
ムホンが8人のリーダーなのだろう。
「好き勝手言ってくれるぜ」
ジャックがつぶやいた。
「いいか。防戦に徹するんだ。機会がくるまではな」
ツヨシが皆に念を押す。
上空の魔人たちと、屋上の15人。
しばらくにらみ合いが続いた。
魔人たちは仕掛けてこない。
ヒメールランドの人間でなければ、操る事はできないようだ。
15人に対して、その手の魔力を魔人たちは発動させようとしなかった。
また、口で言うのとは裏腹に、魔人たちも兄弟たちの力を警戒しているのだ。
手を出してこないのにはそれもあるのだろう。
「ムヘン、いつまでにらめっこを続ける気だい?」
気の短そうな女魔人ムホンが言った。
「ムホン。そうあわてるな。不死の我々には永遠の時があるのだ。やつらが仕掛けてくるまで待てばいい」
ムヘンが言ったが、
「ヘン! あたしにはそういうの性に合わないんだよ! そんなら、直接手出しをしなきゃいいんだろうが」
ムホンは両手を顔の前で組むと、人差し指を立てて叫んだ。
「ガイチュラ招来!」
屋上の15人が反応した。
「ガイチュラか……」
ケンがつぶやく。
空の向こうに、無数の点々が見え始めた。
ガイチュラの大群だ。
本来、豊かな嫌虫花が国土に咲き誇るヒメールランドに、ガイチュラは侵入しない。
しかし、八虐の魔人によって正気を失わされたガイチュラは、嫌虫花があるにもかかわらず、ガイチュラに飛んでこさせられているのである。
ハチ型、クモ型、バッタ型、カメムシ型……、今回もありとあらゆるタイプのガイチュラが大群でやって来た。
「くそう! 8人の魔人だけでも大変だってのに、ガイチュラの大群まで相手しなきゃなんねえのかよ」
ケンの額に脂汗がにじんだ。
「兄さん!」
その耳で何かをとらえたアカネが、ツヨシに言った。
「来たわ!」
アカネは、ガイチュラたちがやってくるのと反対方向の空を指差した。
5つの黒い点が、こちらに向かって飛んでくる。
4つは人間大の、1つは巨大な人型の姿をしていた。
それは――。
サイボーグヤン。
サイボーグビリー。
サイボーグオウカ。
サイボーグハルノ。
そして、ファイタス操る対ガイチュラ用スーパーロボット「バグストライカー」であった。
4人のサイボーグと1体のロボットは、王宮上空で制止した。
「待たせたな、みんな!」
バグストライカーからファイタスの声がした。
「受け取りな!」
バグストライカーから何かが射出された。
それらは、ブラスト12兄弟の掌中に収まった。
ブラスト兄弟が受け取った物とは、彼らがまとうブラストスーツを収納した腕時計型の装置だった。
かつてエスパシオでのガイチュラ“シャドウセブン”との戦いで損傷したブラストスーツの修理も、兄弟たちはファイタスに依頼していたのだ。
「よーしみんな! ブラストレンジャーの姿になれ!」
ツヨシの掛け声で、兄弟たちは、一斉に腕時計型変身システムのスイッチを入れた。
ツヨシはブラストブラックに、
アオイはブラストブルーに、
アカネはブラストレッドに、
ハヤトはブラストバイオレットに、
キイロはブラストイエローに、
コウジはブラストシアンに、
ミドリはブラストブルーに、
ヒロシはブラストネイビーに、
モモコはブラストピンクに、
タダシはブラストゴールドに、
チャコはブラストブラウンに、
ダイゴはブラストシルバーに、
それぞれ変貌した。
「な、な、な、な、なんだああ? 一体どうなってんの?」
巨大ロボットの出現。
見慣れない4人のサイボーグ。
そして、変身してしまった12兄弟。
次々起こる想定外のできごとに、いくら驚いても驚き足りないといった様子のケン。
それは、ジャックとダルクも一緒だった。
「いくぞ!」
12人のブラストレンジャーは一斉に飛翔した。
ブラストスーツを着用した12人は、空を飛ぶ事ができる。
体力もスピードも視聴覚機能も強化され、また携帯している銃からは、炎、水流、風圧、電撃、レーザー、超音波の6種類の攻撃を放つ事ができるのだ。
これならば、八虐の魔人相手でもひけはとらない。
「ガイチュラどもは俺たちに任せな! 魔人どもを頼む!」
ファイタスが、バグストライカーでガイチュラたちを圧倒しながら叫んだ。
ファイタスによって“治療”を受けたヤン、ビリー、オウカ、ハルノの4人は、チェンジ後の戦闘スタイルにネビュラメタルによる強化を施されていた。
ガイチュラからの攻撃を弾き返す、唯一の宇宙金属ネビュラメタル。
バグストライカーの装甲にも使用されている。
1体のスーパーロボットと4人のサイボーグは、次々とガイチュラを撃退していった。
「す、す、すごい……」
「全くだ……。くやしいが、あたしたちの出る幕じゃない」
ジャックとダルクは上空で展開される戦いに見入った。
上空で対峙する、8人の魔人と12人のブラストレンジャー。
「むう? 以前とはちょっと姿を変えたようだな。空も飛べるようになったのか?」
ムヘンがブラストシルバーを見て言った。
先日戦った時、ダイゴは上空に逃げたムヘンを追ってこなかった。
飛べなかったからだ。
だが今は、ブラストシルバーの姿となったダイゴは、宙空で八虐の魔人たちと対峙している。
先日と違うあの格好をしていることが、その秘密なのであろうことは、魔人たちにも察しがついた。
「人間ではないオマエらと、話し合うことなど何も無い」
ブラストブラックが言えば、
「それはこちらも同じだよ!」
8魔人たちが、一斉に襲いかかってきた。
8人の魔人対12人のブラストレンジャーの戦闘が開始された。
だが、ブラストレンジャーは、戦力を抑えて戦った。
魔人たちの強大な魔力攻撃のダメージは、ブラストスーツが防いでくれる。
また、ヒメールランドの兵たちもこの場にはいないので、誰かを守ることを気にする必要も無い。
ブラストレンジャーが戦力を押さえ気味に戦っているのは、ダメージを与えて過ぎてしまい、魔人たちがまた退却してしまうことのないようにであった。
永遠の命をもつ魔人たちは、戦いを何回繰り返すことも、何回退却することも全くいとわない。
だが、人間は違う。
不毛な戦いの繰り返しは、国を消耗させてしまう。
今回のこの戦いを最後に、8魔人たち全員を封印してしまいたいのが、ブラスト兄弟の考えなのだ。
ブラスト12兄弟たちは、8魔人たちと戦いながら、戦闘空間を少しずつ移動させた。
王宮の端にある塔の上空へと。
実は、この塔内には、ヒメールランドの王子王女たち8人が待機している。
ある程度魔人たちにダメージを与えれば封印が可能なのだ。
戦いながら、ムヘンが様子がおかしいことに気付いた。
「どうも変だぞ」
「どうしたのです、ムヘン」
八虐の魔人サブリーダー格のボータイギャクがたずねる。
「こやつら、どうも力を抑えて戦っているように見える」
「気のせいでしょう。私たちが強いということですわ」
ボータイギャクは意に介していないようだった。
「私の天候を操る力、思い知るがいい!」
ボータイギャクは両手を挙げた。
空が突然暗くなり、稲津が光った。
雨が降り、風が吹いた。
「くらいなさい、人間め!」
ボータイギャクが、ブラストゴールドを指差した。
空から、ゴールドに稲妻が落ちた。
直撃だった。
だが、ゴールドの中身はタダシ。
電撃なら自分も得意な上、今はブラストスーツで守られている。
もっとも、生身に電撃を受けたところで、タダシであれば平気であったが。
先日、額や目を打ち抜かれた悔しさからボータイギャクはタダシであるブラストゴールドを狙ったのだ。
当然、反撃してくるだろうとボータイギャクは身構えたが、ゴールドは撃ってこない。
「なに? どういうことですの?」
さすがに、ボータイギャクもちょっとおかしいと思い始めた。
8人の魔人たちは、ちょうど塔の上空に集結するような配置になった。
周囲を12人のブラストレンジャーが取り囲む。
「今よ!」
下の塔の中で様子をうかがっていた長女のベリー王女が、魔人を封ずるための魔封石をかざした。
7人の弟妹達が一斉にそれに倣い、8人はそろって叫んだ!
「魔人、封印!!」




