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妹弟兄姉マイティブラスター  作者: 秋保嵐馬
三.ヒメールランド王国編
44/50

44.その時、いずこに

 剣と盾を構え凶悪な表情で100人の兵たちがアップル王女の馬車を取り囲んだ。

 馬車の御者台に立ち、迎え撃つのはボディガードのコウジと影武者のアカネの2人。

 アップル王女は車室の中だ。

 少し離れた場所から、優越感たっぷりの表情でコウジとアカネを見やるのは、八虐の魔人の1人ダイフケイ。

 だがその姿は、美しい十代の人間の娘だった。

「ふっ。さあ、どうする?」

 ダイフケイが問うた。

「ダイフケイ。お前はどうやら勘違いをしているな」

 コウジの表情が一瞬険しくなった。

 空気を操る超能力を発動させたのだ。

「?」

「ぐっ」

「ぬぬ……」

 100人の兵たちは、突如悶絶すると、白目をむいて気絶した。

「こうするのさ、ダイフケイ」

 コウジは、兵たちの周囲を一瞬無酸素状態にしたのだ。

「結局2対1ね。どうする?」

 アカネが言った。

「ふっ。2対1にはならないね。くらいな!」

 ダイフケイは、手のひらをコウジ向けると催眠音波を放った。

「ふっ。男はみんな私の操り人形になるのさ。味方同士で戦うがいい」

 催眠音波がコウジに達した。

「この美しい私の魅力にあらがえるかな?」

 ダイフケイはそう言ったが――。

 コウジの様子に変化は無かった。

 兵たちのように、ふにゃけた表情となり、操られる事は無かった。

「む? ――これは一体どういう事だ」

 変化の無い事に、うなるダイフケイ。

「誰がお前なんかのとりこになるか。俺の姉さんの方がずっと美しいぜ」

 コウジが言った。

「やーねー、コウジ。照れるじゃない」

 目は笑っていないアカネが応じる。

「おのれ……。私の超振動をくらえ!」

 ダイフケイは両手のひらをアカネとコウジに向けると、超振動を放射した。

 すぐさまアカネが口から超音波を発して中和する。

 同時に、コウジがかまいたちを放った。

 かわそうと、ダイフケイは垂直に跳躍した。

 ビュンとしならせて、アカネがムチを振った。

 ムチはダイフケイの片足にからみついた。

「なっ!?」

 ダイフケイが「しまった」という顔をしたのも一瞬。

 アカネは片足にムチを絡みつかせたダイフケイを大地にたたきつけた。

 間髪を入れずコウジがかまいたちを放った。

「ぐああああっ!」

 悲鳴を上げるダイフケイ。

 ダイフケイは体中に多くの切り傷を受け、ぼろぼろになった。

「く……」

 ダイフケイは立ち上がろうとしたが、痙攣してもはや体を起こす事もままならなかった。

「とどめだ!」

 アカネとコウジは、馬車の御者台から跳ぶと、ダイフケイ目がけて飛びかかろうとした。

「ち……、勝負は預ける」

 ダイフケイの姿はすうーっと消えた。

 それまでダイフケイの片足に絡み付いていたアカネのむちが、うずを巻いたまま地面に落ちた。

「逃げられたね」

 ムチを拾ってアカネに渡しながらコウジが言った。

「おそらく、他の王女たちの隊にも八虐の魔人たちが現れている事でしょうね。みんながいるから大丈夫だとは思うけど」

 アカネの言葉通り、どの王女たちの隊にも、八虐の魔人たちは現れていた。


 メロン王女の行列。

 メロンの影武者はミドリ。

 御者台に座るのはジャック。

 ミドリはジャックの隣にかけていた。

 メロンは馬車の車室内だ。

 ジャックは、12兄弟姉妹の内の8人――ツヨシ、アオイ、アカネ、ハヤト、キイロ、コウジ、チャコ、ダイゴ――らとはインセクタワーでの戦い時に面識があった。

 が、ミドリ(と、ヒロシ、モモコ、タダシ)とは、ヒメールランドで会ったのが初対面だ。

「君たち兄弟はみんなすごい能力をもっているな」

 ジャックがミドリに話しかけた。

「ありがとう」

 ミドリは素直に礼を言う。

「だけど、それなら不思議な事が一つある」

「何かしら?」

「ガイチュラが地球侵攻を開始した時――。君たちは、一体どこで何をしていたんだ?」

「……」

「君たちほどの、すごい超能力戦士たちがいたのなら、ガイチュラにやすやすと人類は敗れなかったはず。だけど、ガイチュラ大戦中、君たちのような戦士のうわさはとんと聞かなかった。教えてくれ。君たちはガイチュラが地球に攻めてきた時、どこで何をしていた?」

「悪いけど……」

「悪いけど――?」

「それは言えないの。ごめんなさい」

「言えない? なぜ――」

「ただ1つだけ教えてあげられるのは」

「教えてくれるのは――?」

「その時、私たち兄弟は世界のどこにも居なかった。地球に居なかったのよ」

「地球に居なかっただって? じゃ、どこかのスペースコロニーに居たのかい?」

「ごめんね。これ以上は話せないの」

「……分かったよ。誰にだって言えない事があるものな。――じゃあ、これからの事を聞こう」

「なに?」

「君たちは強い。君たち12人が本気になれば、今、地球にはびこっているガイチュラどもを滅ぼす事だってできるんじゃないのか?」

「どうかな? 全てのガイチュラを完全に捜し出して絶滅させる事が果たしてできるかどうか……。それに――」

「それに?」

「地球は地球人の手によって取り戻してこそ価値があるものよ」

「まるで君は地球人じゃないような事を言うんだな」

「ふふふ。女の子は謎めいていた方が魅力的でしょ」

 おとなしそうな印象をミドリからは受けたけれど、そんな事も言うんだなと、ジャックは思った。

「ねえ、私もお話にまぜて」

 ミドリとジャックの背後、車室の中からメロンが顔を出した。

 室内で1人で退屈していたのだ。

「駄目だろうメロン、中に入っていなきゃ。メロン王女が2人になってしまうじゃないか」

 ジャックがメロンをたしなめた。

 同じ服装、同じ髪型・髪の色、背格好も同じくらいなら、年齢も同じ16歳同士のミドリとメロン。

 ブラスト兄弟が務める王子王女たちの影武者の中でも、とりわけミドリとメロンは似ていた。

「何のお話がしたいの、メロン?」

 ミドリが聞いた。

 ミドリとジャックもまた、八虐の魔人の話を道中メロンから聞いていた。

 魔人が襲ってきたら、たとえ影武者が居たところで、どれだけ誤魔化しきれるか分からない。

 何しろ相手は魔人。

 人間ではないのだ。

 その時はその時。

 ミドリはおおらかに考えたのだ。

「男の子の話がいいわ」

 メロンは言った。

「ねえ、ジャック!」

「なんだい?」

 しょうがないなという感じで、ジャックも会話に応じ始めた。

「恋人はいるの!?」

「いきなりかい。――いないよ。メロン、君は?」

「いないわ……。恋人どころか友達もいない。ねえ、ミドリは?」

 メロンはジャックに続いてミドリにも問いかけた。

「私も恋人も友達もいない。あえていえば、兄弟たちが恋人であり友達かな」

「ミドリは、恋人が欲しいと思った事はないの?」

「私? そうねえ……」

 ミドリの答えを待たず、メロンは話し始めた。

「私は欲しいわ。恋人が! たとえばジャックみたいな人!」

「な、何をいきなり言うんだよ」

 突然のご指名で、ジャックはびっくり仰天した。

 ふと、3人は気付いた。

 いつの間にかメロン王女の行列は、いい匂いに包まれていたのだ。

 酒の匂いだ。

「何だか、すごくいい匂いがしてきたな」

 ジャックが言った。

「お酒の匂いね」

「飲んだ事ある?」

「まさか、未成年だもん」

 軽口を叩き合うミドリとジャックだが、油断なく辺りに気を配っている。

 周囲の兵たちの様子がおかしい。

「ウィ~~、ヒック」

「あ~~、何だかいい気持ちになってきたあ~~」

「頭がクラクラするう~~」

 酒を飲んだわけでもないのに、まるで酔っ払っているような様子だ。

 パイン王女、グレープ王女、アップル王女の例にもれず、メロン王女の行列にもまた、八虐の魔人の魔力が及んできたのだ。

「けっこう酒の匂いがキツイな」

「ジャック、なるべく吸わないようにしないと」

 ジャックとミドリは、ハンカチで鼻と口を覆った。

「メロン王女は車室に入ってて」

 メロンはミドリの言葉に素直に従った。

 行列の前方に人影が見えた。

 その姿は20歳ぐらいの太った男。

 いやらしい薄ら笑いを浮かべている。

 ミドリとジャックは御者台に立った。

「おまえは八虐の魔人か!?」

 ジャックの呼びかけに、太った男はちょっと驚いた様子だったが、直ぐにまた元の薄ら笑いに戻ると答えた。

「シュッシュッシュ……。いかにも。俺は八虐の魔人の1人フドー。『不道』とは呪いや大量殺人の事さ。おまえたち、俺に出くわして運が悪かったな」

「ふん、どうかな」

 ジャックは剣を抜いた。

「ミドリ。君は手を出すな」

「ジャック?」

「君たち兄弟には助けられっぱなしだ。あれから俺も少しは腕を上げた。まずは俺1人にやらせてくれ」

「……分かった」

 ミドリはジャックの申し出を受け入れた。

「感謝する」

 ジャックは小声でミドリに言うと、続いてフドーに聞こえるようにわざと大声で叫んだ。

「メロン姫、ここでお待ちを。あいつはこの私が倒します!」

 ジャックは御者台を蹴って高く跳躍すると、宙で1回転し、フドーの眼前に着地した。

 フドーは首からぶらさげていた酒トックリから酒を一口飲むと、凶悪な笑いを浮かべて言った。

「しゅ……。人間の分際でカッコ付けてるんじゃないぞ!」

 フドーが叫ぶと、それまでただの酔っ払いだった100人の兵士たちの顔つきが代わった。

 フギ、フキョウ、ダイフケイと同じだ。

 彼ら八虐の魔人たちは、ヒメールランドの兵士たちを操るのである。

「かかれ!」

 100人の兵たちは、一斉にジャックに襲いかかってきた。

 ミドリが叫んだ。

「ジャック!!」

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