37.ブラストブラックvsバグストライカー
地球は知的生命体「宇宙害虫ガイチュラ」との戦いに敗れた。
ガイチュラのエサとなる事におびえ暮らす人類。
立ち向かうのは、超能力をもった12人の兄弟姉妹たち。
廃墟を、学園を、宇宙を、王国を舞台に、戦いが繰り広げられる。
ブラストブラックは巨大ロボットと対峙していた。
それはかつてガルドラの島で出会ったファイタス操るスーパーロボット「バグストライカー」であった。
「行くぜ!」
声と共に、バグストライカーがブラックに襲いかかってきた。
身長28メートルのバグストライカーが185センチのブラックにパンチを浴びせてきた。
ブラックはそのパンチを両手で受け止めると、一本背負いの要領でバグストライカーを放り投げた。
空中回転し、大地を震わせバグストライカーは着地した。
今度はブラックが高く跳躍した。
空中で1回転した後、バグストライカーに向けてキックを放ってきた。
両腕を交差し、ブラックのキックを受け止めるバグストライカー。
キックの勢いに押され、バグストライカーの足が地面にめり込んだ。
交差していた両腕を勢いよく広げ、バグストライカーはブラックを弾き飛ばした。
くるくると回転した後、ブラックは着地。
勢い余って10メートル以上、地表を後ろに滑った。
スキーで滑ったかのような跡が地表に残った。
バグストライカーがブラックに向かって突進してきた。
ブラックもバグストライカーに突進した。
双方、こぶしを突き出した。
大小2つのそのこぶしは、互いに激突する寸前で止められた。
バグストライカーからファイタスの声が聞こえた。
「いよお、ドライバウター。相変わらずすげえじゃねえか」
ブラックは、ブラストスーツの装着を解き、ツヨシの姿になった。
「久しぶりだな、ファイタス」
12兄弟とヤン、ビリー、オウカ、ハルノの4人は、ファイタスの家に居た。
家というより、ファイタスの秘密基地というべきか。
表向きは研究所然とした四角い建物だが、地下にはスーパーロボット「バグストライカー」の格納庫が隠されている。
ガルドラの島での戦いの後、兄弟たちは、ファイタスと大破したバグストライカーをこの研究所まで送ってきてやった。
それで兄弟たちはファイタスのこの住まいを知っていたのだ。
「ファイタス。バグストライカー、すっかり直ったみたいね」
「いやあ、そうだろう、そうだろう。分かるか、ミドリ」
ファイタスが上機嫌でその大きな顔をミドリに近づけた。
ツヨシより背の高い身長190センチのファイタスは、顔もデカい。
ミドリは苦笑して体をそらした。
「モモコ、お前も元気だったか」
「ついでに言ってくれてどーも」
モモコはふーんだといった顔で応じた。
「ヒロシとタダシは女装趣味はもうやめたのか?」
年相応の少年の服装をしているヒロシとタダシにファイタスが言った。
もちろん、からかって言っているのだが、
「女装? ヒロシ、タダシ、そんな趣味があったの」
ハルノは、やだといった顔をして両手を口元に当てた。
説明すると長くなるので、ヒロシとタダシは黙って耐えるのみだ。
「そっちの4人は、初めて見るな。いろいろ訳ありのようじゃないか」
ファイタスは、ヤン、ビリー、オウカ、ハルノを見て言った。
移動式担架に寝かせられたままのヤンに、目の見えないオウカの姿は、ファイタスにも何がしかの事情があろう事を悟らせた。
「彼らはサイボーグなんだ」
ツヨシは、エスパシオでの一件をファイタスに語った。
「なるほどな……。話は分かった。で、俺を訪ねて来たのはどうしてだ?」
「キミに彼らを治してやってほしい」
「……。ちょっと見せてみな」
ファイタスは、オウカを自分の前に座らせると、眼科医のようにオウカの目を見た。
「手足もちょっと触らしてもらうが?」
「いいわ」
オウカは腕を伸ばした。
ファイタスはオウカの腕や足の肌の上から、中の構造を探るように指を当てた。
「分かった、いいぜ、ツヨシ。お前らにはいろいろと借りがあるしな」
ファイタスは快く兄弟たちの頼みを聞き入れた。
「ありがたい、感謝するぜ」
ツヨシは、布の袋をファイタスの前にドサッと置いた。
「これは?」
「金塊だ。彼らの治療費に使ってくれ」
ツヨシが言葉を選んでいるのが、ビリーもオウカもハルノも嬉しかった。
ツヨシは「修理」とは言わず、「治す」「治療」といった言葉を使っている。
サイボーグの彼らを、あくまでも人間とみているのだ。
ところで言うまでも無くこの金塊は、スターナーから得た金で買ったものである。
通貨制度が生きているスペースコロニー「エスパシオ」と違い、星府が崩壊している地球上では物々交換が基本だからだ。
「水くせえ、金なんか要らねえぜ――と言いたいところだが、正直助かる。“治療”にはいろいろと金がかかるんでな」
ファイタスもまた同様に“治療”という言葉を使った。
「どうも俺は最近サイボーグの治療に縁があるようだ」
「なんだって?」
ファイタスの言葉にツヨシは興味を示した。
「いやなに、こないだもサイボーグの治療を頼まれたんだよ」
ファイタスはハルノを見て続けた。
「ちょうどそっちの女の子ぐらいの、やっぱり女の子のサイボーグだった。まあ、大したケガじゃなかったので、直ぐに治せたんだがな」
一同の脳裏には、直ぐに1人の名前が浮かんだ。
「ツヨシ兄さん、それってアンナなんじゃ……」
ダイゴが言った。
「そうそう、確か名前はアンナって言ってたぜ」
「な、なんだって!」
「本当なの?」
「それでアンナは今どこに?」
全員の顔がファイタスに迫ってきた。
その迫力に、今度はファイタスの方がのけぞってたじたじだった。
「い、いやあ……、武器商人のゼラーに連れてこられたんだよ。ゼラーの奴は、確かまだ隣の森に居るはずだぜ」
ミドリとダイゴの2人は、ファイタスに教えられた隣の森に来ていた。
2人の眼前に小型宇宙艇があった。
森の中に、木が生えておらず、広場になっている場所がある。
ゼラーの宇宙艇はそこに着陸させてあった。
全長10メートルほどの、鮫を思わせる鋭角的デザインだ。
ミドリとダイゴを歩を進めると、彼らの数メートル手前の地表にレーザーが射ち込まれた。
ミドリとダイゴは歩みを止めた。
レーザーはゼラーの宇宙艇から射ち込まれたものだ。
宇宙艇からスピーカーを通して声がした。
「何者だ? そこで止まれ。私は女子どもでも容赦はしない。今のは威嚇だが、次は本当に射つ」
ゼラーの声だろう。
ミドリは大声で言った。
「あなたに聞きたい事があって来たの」
「アンナという女の子を捜しているんだ。今一緒にいるのかい?」
ダイゴも叫んだ。
ファイタスに写真を見せて確認したところ、ファイタスが診てやったサイボーグというのはアンナで間違いなかった。
今、アンナはゼラーの宇宙艇にいるのかもしれない。
だが、宇宙艇のスピーカーから聞こえてきた声は、
「……。知らんな。とっとと帰った方がお前たちの身のためだぞ」
ミドリとダイゴは、声を無視して再び歩み始めた。
「恐いものしらずめ。後悔するがいい!」
再びレーザーが発射された。
レーザーはダイゴ狙いだった。
ダイゴの頭部に一直線。
だが、レーザーはダイゴに当たる事無く、後ろの大地に突き刺さった。
レーザーが当たる寸前、ダイゴは自分の体を小さくし、レーザーをかわしたのだ。
ダイゴは元の大きさに戻った。
ミドリもダイゴも歩み続けている。
今度は、ミドリに向かってレーザーが発射された。
ミドリは透明になった。
透明になったミドリの体内にレーザーが吸い込まれた。
レーザーはミドリの体内で何万回も乱反射した後増幅されると、宇宙艇に向けたミドリの人差し指から放出された。
それは、ゼラーの宇宙艇の左翼を吹き飛ばした。
轟音と共に爆煙が上がった。
ミドリが姿を現した。
人差し指を宇宙艇に向けたまま歩き続けている。
「な、なんだ!?」
宇宙艇から驚愕するゼラーの声が聞こえた。
ダイゴは背中に背負っていたブーメランを取った。
ゼラーの宇宙艇めがけ、それを思い切り放った。
ネビュラメタル製のブーメランは、宇宙艇の右翼を切断し、ダイゴの手に戻った。
右翼が地響きを立てて地面に落ち、周囲の木々を揺らした。
「ま、待て、待ってくれ!」
打って変わって弱気の口調になったゼラーの声が聞こえてきた。
ミドリとダイゴは宇宙艇の直前まで来た。
「武器商人ゼラー! 出てきなさい」
ミドリに言われ、あわてた様子でゼラーが出てきた。
年齢は50歳くらいか。
目は釣り上がり、あごひげをたくわえている。
その姿を見て、インチキな魔術師みたいな格好だとミドリとダイゴは思った。
「や、やあ、はじめまして。いったい私になんのご用ですかな?」
ゼラーはもみ手をしながら敬語でミドリとダイゴに話しかけた。
「アンナはどこ?」
普段はにこにこして笑顔をたやさない16歳の少女ミドリだが、今はガイチュラと戦っている時と同じドライバウター(Dry Bouter .冷徹な闘士)の顔になっていた。
ゼラーはその迫力に気圧された。
「う、うぐ……、それは――」
ゼラーは口ごもった。
「言え!」
ダイゴがゼラーの喉元にブーメランを突きつけた。
ダイゴの目にも殺気があった。
「アンナは……、あいつはもうここにはいない」
「なんだと!」
ダイゴが怒る。
ミドリが弟を制して言った。
「では、今どこに?」
「その……、売っちまったよ。傭兵としてな。ヒメールランド王国に……」
「どうしてアンナと一緒だったの?」
ミドリに問われてゼラーが説明した内容は次の通りだった。
ゼラーはヒメールランドのためにあちこちで傭兵を探していた。
たまたま立ち寄ったスペースコロニー「エスパシオ」で、ガイチュラと戦う少女のサイボーグを見つけた。
それがアンナだった。
戦いでダメージを受けたアンナをさらい、事情を知らないファイタスのところに連れてきて治させ、傭兵としてヒメールランドに売った。
「おまえ、最低ね」
ミドリが軽蔑のまなざしでゼラーを見た。
「帰りましょう、ダイゴ」
ミドリとダイゴはゼラーに背を向けた。
歩き出す前に、ミドリは振り返ってゼラーに言った。
「念のため言っておくけど、私たちに背中から何かしようとなどと思わない事ね。さもないと、お前の安全は保証しないわよ」
「ぐ、ぐぬぬ……」
見抜かれて、ゼラーは歯ぎしりした。
「まあ、いいか……。さわらぬ神に祟り無しだ……」
そう言いながら、両翼の損壊だけで済んでまだ良かったかと、ゼラーは自身の宇宙艇を見上げたが――。
「げゃああ!?」
ゼラーは悲鳴を上げた。
ゼラーは目の玉が飛び出るほど驚いた。
鮫をモチーフにした自慢のシャープなデザインの宇宙艇が、丸っこいフグのデザインに変わっていたからである。
「あいつ頭にきたから、宇宙船のデザイン変えてやったよ」
歩きながらダイゴがミドリに言った。




