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妹弟兄姉マイティブラスター  作者: 秋保嵐馬
二.フォーグナー学園都市編
35/50

35.ブラストバイオレットvsガイチュラリズム

 ぶつかり合い、超音波は相殺された。

「くそ!」

 尾部の槍も、分身も、超音波攻撃も通じないと悟ったガイチュラリズムは、1匹に戻り、高速飛行で逃げた。

「逃がすか!」

 ブラストバイオレットが同じく1人に戻り、追う。

「逃げ切ってやる、逃げ切ってやるぅ~~」

 ガイチュラリズムは必死に飛んだ。

 跳びながらバイオレットは斧を構えた。

「“逃げ”るのを“切って”やるぜ」

 バイオレットは斧を投げた。

 バイオレットの飛行速度にさらに速度を上乗せされた斧は、ブーメランのように回転しながら超高速で飛び、ガイチュラリズムを左右に両断した。

「……!」

 ガイチュラリズムは声を上げる間も無かった。

 切断された右半身と左半身は、それぞれ地上に落下した。

「きゃーっ」

「ひぃぃぃーー」

 ドサドサと落ちてきた怪物の残骸に、人々が悲鳴を上げた。

 バイオレットもまた同報送信した。

「5匹目ドライブアウト(Drive Out 退治)完了」


「う、うわああああ……、ビ、ビート。ビートォォォォ! どうするんだよぉ!?」

 体中にヒビが入った状態のガイチュラトムが、うろたえながらガイチュラビートに近づいた。

 残るガイチュラ“シャドウセブン”は、スズメバチ型ガイチュラのビートとコガネムシ型ガイチュラのトムの2匹だけだ。

 12人のブラストレンジャーが2匹を取り囲む。

「く……、こうなったら、最後の手段だ」

 ガイチュラビートが言った。

「最後の手段って……?」

 ガイチュラトムの問いにガイチュラビートは冷たい表情で答えた。

「決まってんだろう。合体だ」

「が……、合体?」

 ガイチュラトムが戸惑ったのも無理はない。

 ガイチュラ同士は合体によってパワーもスピードも大幅アップのビッグガイチュラになる事ができる。

 だが、それは彼ら自身を著しく消耗させる。

 合体を解いて分離した直後は、動くのもやっとの状態になるのだ。

 だが、それもお互いの状態が同程度であればの事。

 著しくダメージを受けたガイチュラが、そうでないガイチュラと合体すると、そのガイチュラの体内に取り込まれてしまい、2度と元に戻れなくなるのだ。

 今のガイチュラトムがまさにそうだった。

 もし、ガイチュラビートと合体したら、2度と元には戻れない。

「そ、そんな事したら、もうボクは元に戻れなくなっちゃうよ」

 ガイチュラトムはおびえながら言った。

「どうせ、このままだってやられるのが落ちだぜ。トム、せめて俺の体の一部になって生き続けられるだけマシだと思え!!」

 ガイチュラビートは残酷に言い放つと、全身から合体ビームを放った。

 ガイチュラビートが放った合体ビームは、トムだけでなく、既に倒された5匹のガイチュラ――すなわちガイチュラダン、ゴメル、エレン、カレン、リズム――の残骸にも届いた。

 合体ビームが達したガイチュラの残骸たちはガイチュラビートへと引き寄せられた。

 道路と一体化していたガイチュラゴメルは、角だけが分離されて引き寄せられてきた。

「合体するぞ。厄介だ、阻止するんだ!」

 ブラストネイビーのヒロシが叫んだ。

 ヒロシはかつて地球本星のガルドラ島で、3匹が合体して巨大ガイチュラとなるところを見ている。

 その時いっしょに戦った、ミドリ、モモコ、タダシも、その強さは覚えていた。

 ガイチュラビートが引き寄せる、各ガイチュラの残骸パーツに向けて、ブラストレンジャーたちは攻撃を放った。

 攻撃のいくつかは命中したが、残骸の破片が細かくなっただけで、引き寄せられ続けることに変わりは無かった。

 既に意識を失ったガイチュラトムは、ガイチュラビートの体内に取り込まれた。

 ガイチュラダン、ゴメル、エレン、カレン、リズムの残骸も同様にガイチュラトムに取り込まれた。

「ぐふう……、ぐふ、ぐふ、ぐっふっふっふっふ……」

 不気味な息遣い。

 妖しい光を放ちながら、6匹のガイチュラを吸収したガイチュラビートの体はみるみる巨大化した。

 光が収まると、そこにはまがまがしい姿で巨大化したビッグガイチュラがいた。

 その体長は50メートルを超えている。

 頭部には3本のカブトムシの角。

 ずんぐりしたコガネムシの胴体に、不自然に長いナナフシの手足。

 背中には8枚のスズメバチの羽根。

 そして、尾部からは無数の針が、全方向に向けて生えていた。

「なんておぞましい姿……」

 地上で、視力も動く力も失ったオウカのかたわら付いていたハルノが声をもらした。

「ぐっふっふ……、すごい、すごいパワーだ! すごいパワーが全身にみなぎってくるのが分かるぞ!!」

 ビッグガイチュラとなったビートが歓喜で絶叫した。

「最初から、こうすりゃあ良かったわ! そうすれば俺の天下だったぁ!!」

 ビッグガイチュラは、尾部から無数に生えている針を、全方向にミサイルのように放った。

「エスパシオなど、ぶち壊してくれる!」

 即座に兄弟たちは反応した。

 ブラストブラックは突きの動作を行った。

 すさまじい拳圧でミサイル針を撃ち落した。

 他の11人の弟妹たちも、各々の超能力や万能銃でミサイル針を撃墜した。

 だが、いくつかのミサイル針が、ビルや車に激突した。

 轟音と共に、爆煙が上がり、爆風が巻き起こった。

 人々の悲鳴が聞こえた。

 ブラストバイオレットが斧を、ブラストシルバーがブーメランを投げた。

 ブラストブルーが短剣を放ち、ブラストレッドがムチを振るった。

 ブラストイエローはサーベルで貫こうとし、ブラストブラウンはヨーヨーを叩き込んだ。

 ブラストシアンが真空かまいたちを、ブラストグリーンがレーザーを、ブラストネイビーが水流を、ブラストピンクを炎を、ブラストゴールドが電撃をそれぞれ撃ちこんだ。

 だが、そのどの攻撃も、7匹が合体し強大となったビッグガイチュラには通じなかった。

 ブラストブラックの拳圧攻撃が、わずかにビッグガイチュラのボディをへこませた。

 合体したガイチュラは巨体に似合わず動きも速い。

「弱点は目よ!」

「分かっている、しかし――」

「奴の無差別攻撃から町を守りながらでは――」

「俺たちも、狙いをつけるのに集中できない」

 ビッグガイチュラのミサイル針による無差別攻撃からエスパシオの住民たちを守りながら戦う12人のブラストレンジャー。

「ぐっふっふ……。じゃあ、こういうのはどうかな?」

 ビッグガイチュラは8枚の羽根を激しく振動させ始めた。

 超音波攻撃だ。

「まずいぞ住民達がやられてしまう。中和するんだ!」

 ブラストブラックの指示で、12人のブラストレンジャーは空中でビッグガイチュラを取り囲むと、全員が銃を構え、超音波モードにセットして引き金を引いた。

 ビッグガイチュラの激しい超音波を、12人の銃から放たれる超音波が中和する。

 しかし――!

 12人の持つ銃に、少しずつヒビが入り始めた。

 ビッグガイチュラの超音波に押されているのだ。

「く……」

「だめだ、このままじゃ!」

 12人の持つ銃は、ボンッと煙を吐いて破壊された。

「ぐっはっはっはっ! どうしたどうした人間ども。この俺には歯が立たんようだな」

 超音波の発振を止め、ビッグガイチュラは勝ち誇り笑った。

「さあ、そのチャチなピストルは壊れてしまったぞ! この俺の次の超音波をどう受ける気だ?」

 ビッグガイチュラは、再び羽根をこすり合わせる動作を開始した。

「銃が使えなくなってしまった! 次の超音波を防ぐ手立てが無い!」

 ブラストブルーの言葉に、レッドが答えた。

「それなら私が全力で!」

 レッドはマスクの下半分をオフにし、口元を露出させた。

「姉さんダメだ!」

「声帯をやられてしまうわ」

 シルバーとブラウンが止めた。

 イエローが叫んだ。

「テレポートで宇宙へ放り出す! 全員ヤツに張り付いて!」

「よし、それだ!」

 ブラックをはじめ、全員がビッグガイチュラの手足に、胴体に、頭部に食らいついた。

「行くよ!」

 イエローの声で、ビッグガイチュラはエスパシオの夜の町から、兄弟12人もろとも姿を消した。

「な……、なんだどうした?」

「ガイチュラも、戦っていた連中も消えてしまったぞ……」

 騒然としていた夜の町は突然静かになった。

 あちこちで建物や車が燃え、煙が上がっている。

 時々、小さな爆発音が聞こえた。

「み、みんなどこへ行ったんだ……?」

 ビリーが、兄弟たちの姿を探したが見つける事はできなかった。


 12人のブラストレンジャーとビッグガイチュラは、スペースコロニーエスパシオ外の宇宙空間にいた。

「な……、なんだここは? 宇宙か? なぜ、突然宇宙空間に……」

 ビッグガイチュラは突然周囲の景色が宇宙空間になった事に驚いた。

 ビッグガイチュラの周囲には12人のブラストレンジャーがいた。

 空気も水も無い宇宙空間においては、ブラックの拳圧も、レッドの超音波も、シアンの風も、ネイビーの水も、ピンクの炎も使えない。

 彼らの超能力の“念”を込めた事によって、超音波、レーザー、風、水流、炎、電撃の6種類の攻撃が可能になっていた銃も壊れてしまった。

 グリーンとゴールドが、それぞれ自身の能力によって放つレーザーと電撃ならば使えるが、ビッグガイチュラに致命傷を与えるには威力が足りない。

 かつて、ガルドラの島で3匹が合体したタガメ型ガイチュラを攻撃した時は、ミドリ、ヒロシ、モモコ、タダシの4人の力を合わせた。

 7匹が合体したガイチュラに、2人の力では到底通じないだろう。

 彼らが持つネビュラメタル製の、短剣、ムチ、斧、サーベル、ヨーヨー、ブーメランの全てを同時にビッグガイチュラのどこか一点に叩き込めば勝機はあるかもしれない。

 しかし、それをブルー1人のテレキネシスで行うには、戦いの疲労も蓄積してきている今、難易度が高かった。

『ダイゴ』

 ブラックがシルバーに通信した。

 もちろん、他の兄弟たちにもこの会話は聞こえている。

『なに?』

『奴をテニスボールぐらいに小さくできるか?』

 50メートルを超える巨大ガイチュラを、そのサイズまで縮めるには、相当の超能力エネルギーを消費する。

 かつて、キイロが100人テレポートで気を失ったように。

 さっき、ブルーが10トンのバスをテレキネシスで受け止め、膝をついたように。

 もちろん、ブラックは承知でそれをシルバーに言っているのだ。

 ブラックに策があるのだろう。

 シルバーは言った。

『もちろんできるさ。でもそのためには、奴の体に触らないと』

『よし、キイロ』

 ブラックはイエローの名を呼んだ。

『分かったわ、ダイゴを抱いてあつのそばへ跳ぶ』

 イエローは、言われなくても兄の意図を察した。

『他のみんなは、奴の注意を惹きつけるんだ!』

 ブラックの言葉で、全員が行動を開始した。

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