34.ブラストブルーvsガイチュラゴメル
「うわあ、なんだ! 一体なにがどうなっている!?」
自分の体が地中に沈み込んでいる事など、ガイチュラゴメルには全く自覚が無かった。
ガイチュラには6本の手足がある。
脚に当たる2本は既に地中沈んだ。
上の左右の腕2本はバスをかつぎ上げている。
ガイチュラゴメルは中の左右の腕2本を地表に突き立てて、体を地中から出そうとした。
だが、手のひらには何の抵抗も感じられず、まるで空気の中を動かしているかのように腕は地中に潜り込んだ。
しかも、いったん地中に入り込んだ腕が抜けない。
「なんだ? なんだあぁぁぁぁぁ! くそう!!」
やけになったガイチュラゴメルは、持っていたバスを、遠巻きに見ていた人々のいる場所に投げつけた。
乗客が何人も乗っているバスの重量は10トンを超える。
バスに乗っている乗客たちも、投げつけられた見物人たちも、ただでは済まない。
アオイはテレキネシスをバスに対して発動させた。
バスの動きが鈍くなった。
しかし、重い。
止まらない。
アオイは腕時計のスイッチを入れ、ブラストブルーとなった。
ブラストスーツ着用時は、兄弟たちの超能力が増幅される。
バスは空中から地上へ向けて、スローモーションでゆっくりと着地した。
力が増幅されたとはいえ、ブラストブルーにはかなりの消耗だった。
「ふーーっ」
ブルーは地に膝をつき、ゆっくり深呼吸した。
一方、ガイチュラゴメルは首の辺りまで沈んでいた。
「ぐわああぁぁっ、ちくしょう! ちく――」
ガイチュラゴメルが口まで沈み、声が途切れた。
折れた角だけを地上に残し、ガイチュラゴメルは、分子レベルで完全にスペースコロニー「エスパシオ」のパーツと一体化、そのまま沈黙した。
ガイチュラゴメルと入れかわるように、地中から姿を現した者があった。
ブラストブラウンであった。
ガイチュラゴメルを地に沈めたのは、チャコの“壁抜け”の力である。
ブラストブラウンは地中からブルーの援護に回り、ガイチュラゴメルに自身の力を作用させたのだ。
「チャコ、感謝」
「お安いご用」
ブルーは同報送信した。
「2匹目ドライブアウト(Drive Out 退治)完了」
「すごいぞ、2匹目をやっつけた!」
「彼らはいったい何者なんだ」
路上に、ビルの窓という窓に、見物人たちが集まっていた。
「まずいな、すごい野次馬だ。このままでは余計なケガ人が出る」
ブラストブラックのその声に答える者があった。
「大丈夫だよ兄さん。フォローは任せて」
ブラストゴールド――タダシからの通信だ。
「私も今着いた。ヒロシも一緒よ」
続いてブラストイエロー――キイロからの通信も入ってきた。
ブラストレンジャー12兄弟がそろった。
「よーし、みんな思いっきり行くぞ!」
ブラックが弟妹に激を飛ばした。
奮起したのは、ブラストレンジャー兄弟だけではない。
ヤン、ビリー、オウカ、ハルノらサイボーグ4戦士も、カブトムシ型ガイチュラの、エレン、カレン相手に善戦していた。
ブラストイエロー・ネイビー姉弟と戦った時同様、ガイチュラエレン・カレンはぴったりと息の合ったコンビネーション攻撃で、その戦闘力を2乗にも3乗にも高めていた。
対するサイボーグ戦士たちは、倍の4人という人数を生かし、その能力の全てを発揮してガイチュラエレン・カレンに反攻していた。
だが、どちらの攻撃も完全には決まらず、お互いに少しずつダメージを与え合う消耗戦の様相を呈してきていた。
ビリーがヤンに通信した。
『ヤン、どうする? これではいずれ俺たちの機能に限界がくるぞ』
『確かに……。だが、今さら戦いをやめるわけにはいかん』
ヤンが戦いながら返信した。
戦いの最中、オウカがガイチュラエレンの腕に小さな穴が空いているのに気付いた。
それは、先刻、ブラストネイビーのヒロシが、糸のように細めた超高圧水流攻撃で空けた穴であった。
『あのガイチュラ、腕に穴が空いている』
オウカが他の3人に通信した。
『確かに……。だが、穴が空いているとはいえ、俺たちのビーム攻撃では十分な威力が無い』
ヤンがオウカに答えた。
『私が最大出力で、やつの腕の穴にビームを射ち込むわ』
『最大出力でだと? 待て、オウカ! そんな事をしたら……』
オウカの言葉を聞いたビリーが制止しようとしたが、既にオウカはガイチュラエレンの腕の穴に向けて、最大出力のビームをその両眼から放っていた。
「うぎゃああっ!」
ビームを受け、ガイチュラエレンが苦痛の悲鳴を上げた。
ガイチュラエレンの腕が吹き飛んでいた。
腕だけではない。
腕の付け根のボディ部分もえぐり取られて無くなっていた。
『すごい! オウカ、やったね』
ハルノが歓声を皆に送った。
『……』
だが、オウカは両眼から煙を出し、動かなくなっていた。
『オ……、オウカ?』
ハルノがオウカに駆け寄ろうとした。
ヤンが通信で叫んだ。
『ハルノ、今はオウカの事は後回しだ! あのガイチュラにとどめを!』
ヤンの声で、ヤン、ビリー、ハルノの3人は、内部がむき出しになったガイチュラエレンの傷口に向かって3人のビームを集中照射した。
「ぎえええええっ!!」
外甲を失い、むき出しになった傷口に直接ビームを浴びせられたガイチュラエレンは、ひとたまりも無かった。
体内にビームエネルギーが充満し、空気がいっぱいになった風船が破裂するようにガイチュラエレンの体は爆裂した。
「ああ、エレン!!」
双子の一方を失い、カレンが絶叫した。
「オウカ、お前だけに無茶はさせないぞ! 俺もやる」
ヤンは、今がチャンスとばかり、内臓エンジンの出力を最大にして、エレンを失って動揺しているガイチュラカレンに格闘戦を挑んだ。
「よくも、よくも、よくもーーー!!」
ガイチュラカレンが鬼気迫る形相でヤンに反撃してきた。
その重い蹴りを、突きを、ヤンは受け、エンジンが焼き切れても構わない勢いで、蹴り返し、突き返した。
ビリーがヤンに叫んだ。
「ヤン、やめろ! そこまでやったらお前まで……」
だが、ヤンはビリーの呼びかけには取り合わず、ガイチュラカレンへの猛攻を続けた。
ヤンの、手足の関節が煙を噴いてきた。
「やめて、ヤン!」
ハルノも叫んだ。
だが、ヤンの猛烈なパンチとキックは続いた。
「く、ぐ……、ぐああああっ」
ガイチュラカレンが悲鳴を上げた。
なんと、自慢の外甲に亀裂が入ってきたのだ。
「ばかな! ばかな! この私の体にひびが入るなんてええぇぇぇ」
ヤンの最後の一撃がガイチュラカレンの腹部に炸裂した。
ガイチュラカレンは後方に吹っ飛んだ。
路上に止まっていたタンクローリーにガイチュラカレンは激突し、爆発、炎上が起きた。
ヤンは最後のパンチを繰り出した姿勢で静止していた。
ヤンのボディは過熱し体中から煙が上がっていた。
オーバーヒートし、その体は動けなくなっていた。
またオウカも、体内のほとんどのエネルギーをビーム照射に費やし、やっと動ける状態だった。
限界を超えた出力で両眼からビームを照射したため、目のシステムは破壊され、視力は失われていた。
その身を案じたハルノが、今度こそオウカのそばに駆け寄った。
「たお……した……? ガイチュラ――」
しぼり出すような声で、オウカが、やって来たハルノに聞いた。
「倒した……、倒したよ、ガイチュラを!」
もはや涙を流せなくなっていたオウカの代わりに、ハルノが涙を流して答えた。
口を利けなくなったヤンの代わりに、ビリーがブラストレンジャーの兄弟たちに同報送信した。
『カブトムシ型の2匹を倒した。俺たちが……、ヤンとオウカが倒したぞ!』
「なんという……、なんという事なの? みんなが次々やられていくなんて」
4匹の仲間を立て続けに倒された事にガイチュラリズムは脅威を覚えた。
ガイチュラリズムとガイチュラビートはどちらもスズメバチ型のガイチュラだ。
羽音と鋭い針、そして高速な動きがスズメバチ型の武器である。
「心配は要らないぜ。おまえもじき、そうなる」
ガイチュラリズムにこぶしを突き出して迫りきた者が言った。
ガイチュラリズムはかわした。
とっさに、さっきも同じような事があったとガイチュラリズムは思った。
ガイチュラリズムにこぶしを突き出して攻撃してきたのは、今回もブラストバイオレットのハヤトだった。
「おまえ、さっきからしつこいよ!」
ガイチュラリズムは、尾部の針をミサイルのようにバイオレットに向けて放った。
バイオレットは、持ち前の高速な動きで難なくかわし、斧でガイチュラリズムに切りつけた。
ガイチュラリズムの尾部の針は連射式だ。
ガイチュラリズムは次の針を尾部から出して手に持つと、槍のように長く伸ばし、バイオレットの斧攻撃を受け止めた。
そして、槍の突きをバイオレットに連続して放ってきた。
それをバイオレットは斧で全て受け、反撃した。
双方の攻防が応酬されたが、ガイチュラリズムは徐々に押されてきた。
「ちい、おのれ」
ガイチュラリズムは高速行動能力を発揮して2体に分身した。
残像による分身は、高速行動能力をもつガイチュラの得意技だ。
だが、それはバイオレットも同様だった。
バイオレットもまた2人に分身した。
激突する2対2の戦い。
「おのれ、人間の分際でえぇぇぇ!」
ガイチュラリズムは倍の4匹に分身した。
バイオレットも4人になった。
「おまえも分身できるのか」
槍で突きながらガイチュラリズムが言った。
「“倍オレット”だけにな」
槍を斧で受け、バイオレットが反撃する。
「そんなら、超音波攻撃ならどうだい!?」
4匹のガイチュラリズムは羽根を振るわせ、4人のバイオレットに向けて超音波を放った。
4人のバイオレットがそれらをかわす。
背後にあった車や建物がぼろぼろに破壊された。
バイオレットは銃を抜き、銃口から超音波を放った。
超音波と超音波が激突した。




