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妹弟兄姉マイティブラスター  作者: 秋保嵐馬
二.フォーグナー学園都市編
30/50

30.ブラストゴールドvsガイチュラトム

 タダシはサキを送っていく事にした。

「いいよタダシ。あなた寮生でしょ? わざわざ出かける事になっちゃうじゃん」

 サキは遠慮した。

「まあまあ。そう言わずに送らせてください」

 サキが今回のガイチュラやサイボーグの騒動に巻き込まれてしまった事には、タダシたち兄弟にも責任の一端がある。

 とりあえず今日だけでもタダシはサキを無事に自宅まで送り届ける事にしたのだ。

 しばらく並んで黙って歩いていたが、サキが口を開いた。

「タダシってさあ……」

「はい?」

「モモコとどういう関係?」

 関係って……、そうか、ボクらは表向きは姉弟という事は伏せられて他人同士という事になっていたんだった――タダシは思った。

「どうって……、ただの先輩ですよ」

「先輩って、何の? 委員会だって違うし……、部活が一緒なの?」

「ええっと……、ああ、そうそう。エスパシオに引っ越してくる時、シャトルが一緒だったんで、それでちょっと顔なじみになったんでした」

「ふーん、それだけ?」

「それだけ……です」

「そーなんだ」

 2人はまたしばらく黙って歩いた。

 今日会ったばかりなので、そうそう共通の話題も無い。

 またサキが口を開いた。

「タダシってさあ……」

「はい?」

「付き合ってるコとかいるの?」

「いないですよーー。越してきたばっかりだし」

 頭の後ろに片手をやってタダシは答えた。

「ふーん。じゃ、好きなコとかは?」

「転校したててで、知り合い自体、そんな居ないんで。――サキ先輩はどうなんですか?」

 女子が聞いてくる事というのは、自分が聞いてほしい事でもある。

 何しろ姉妹が6人もいるので、タダシはそういう事は分かっていた。

「うーん、今は居ないかも」

「そうなんですか」

「こうやって2人で並んで歩いているとさーー、誤解されちゃうかもね」

「あー、そーですねー。姉弟に間違えられるかも」

 タダシはわざととぼけた。

「え、誤解ってそっち?」

 タダシの反応に、サキは何かを言いたげに隣のタダシの顔を見た。

 タダシは、前方に何かを見つけていた。

 サキも前を見た。

 小学校中学年くらいの男児が、道端にしゃがんでいたのだ。

 かたわらには自転車が倒れていた。

 どうやら転んで、膝でもすりむいたらしい。

 この辺りは家もまばらで人通りも少ない。

 男児を助ける者が誰も居なかったのだろう。

 サキが男児に駆け寄った。

「ぼく、どうしたの。大丈夫?」

 声をかけられて男児は顔を上げた。

 上げたその顔は――。

 タダシとサキは知る由も無かったが、ガイチュラ“シャドウセブン”の内の1人。

 「多めにちょうだい」と言っていたあの男児であった。

 こうやって人をおびきよせ、餌食にするのが男児のやり方だった。

 男児はサキに答えた。

「ちょっと転んじゃって……」

「名前は何ていうの?」

「トム」

「トム、ケガしてない? 立てるかな」

 サキは親切にトムを抱くように支え、立たせてやろうとした。

 トムの顔が、サキの首筋の辺りに来た。

 その時、タダシは見逃さなかった。

 トムが大きく口を開け、サキの首筋に噛み付こうとしているのに。

 口の中には、小さい顔に不似合いな大きな牙が見えた。

 タダシは、トムの顔前に、思いっきり蹴りを放った。

 トムはタダシの蹴りを察知すると、人間離れした速さでサキから離れた。

 タダシの蹴りはサキの頭部すれすれに空を切った。

「な、な、今の何? どうしたの」

 急に自分から離れたトムに、蹴りを放ってきたタダシ。

 サキはわけが分からず、代わる代わる2人の顔を見た。

「お姉ちゃん、ひどいんだよ。あのお兄ちゃんが、いきなりボクの事、蹴ろうとしたんだ……」

 トムが薄ら笑いを浮かべながら言った。

 さっきまでの、自転車で転んでしょんぼりしていた表情は消えていた。

「え? タダシ、どうして……」

 サキの言葉をさえぎってタダシが言った。

「サキ先輩」

「え?」

「こいつは、ガイチュラだ」

「ガイチュラ! まさか……」

「間違いない。今こいつ、サキ先輩の首に噛み付こうとしていた」

 タダシの口調は、敬語が消えて普通になっていた。

「そんな事ないよ……。ちょっとふざけただけなのに……」

 トムはにやにやしながら言う。

 その笑顔に邪悪さが表れているのはサキにも分かった。

「先輩、今のこいつの動き見たでしょう? こいつは人間じゃない」

 タダシはサキを見ず、トムを見たまま続けた。

 もし、トムがおかしな動きをしたら直ぐに対応しなければならない。

 目は離せない。

 クックックッと笑いながらトムは言った。

「ひどいよ、お前。ボクの事人間じゃないなんて――」

 トムの言い方は「お兄ちゃん」から「お前」に変わっていた。

「そんな……、そんな……」

 トムの姿が突然まばゆく輝き出した。

 トムの体長は3~4メートルに巨大化し、金色のボディのコガネムシ型ガイチュラへと変貌を遂げた。

「そんなホントの事言うなんてなあ!」

 ガイチュラの姿となったトムは、大口を開けてサキに襲い掛かった。

「きゃあっ!」

 サキが悲鳴を上げた。

 体がすくんで動けない。

 あの口に食べられてしまう!

 その時、サキの体は誰かに抱き上げられた。

 サキを抱き上げたその“誰か”は、サキを抱いたまま高く跳躍し、ガイチュラトムから離れた場所に着地した。

 サキを抱き上げて救った者は――、もちろんタダシであった。

「サキ先輩、大丈夫?」

 タダシは、サキを“お姫様抱っこ”の状態から降ろした。

 サキは思い出した。

 夢か現実かよく分からなかったけれど、昼間も同じように誰かに助けられていた気がする。

 それって、今回と同じようにタダシだったんじゃ……?

「先輩、悪いけど、ここから逃げて。ボクはこいつと戦わなくちゃならない」

 タダシの言葉にサキは驚いた。

「戦う? 人間がガイチュラと戦うなんて無理だよ」

「先輩」

 タダシは顔はガイチュラトムに向けたまま言った。

「なに?」

「これから見る事は2人だけの秘密にしてくれる?」

「え……?」

 タダシは構えた。

 両手にバチバチと高圧電流を帯電させた。

 電撃のスタンバイだ。

「なんだよお前……、何しようってのさ」

 ガイチュラトムが薄ら笑いを浮かべた。

「こうするのさ!」

 タダシは両手を伸ばして前に構えると、両手のひらから一気に放電した。

 稲妻が水平に走り、ガイチュラトムのボディに直撃した。

 サキは思い出した。

 屋上で自分は貧血を起こしたのではなかった。

 確かオウカが自分のところに急に現れ、みぞおちにこぶしを入れられたのだ。

 そして、薄れいく意識の中で、今と同じ電撃の音を聞いていた。

 あの時も、そして今も、自分を抱きかかえて救ってくれたのは、目の前の1つ年下の少年タダシだったに違いない。

 タダシの放った電撃は、ガイチュラトムのボディ表面を舐めるように拡がり散ってしまった。

「クックックック……。電撃かい? 無駄だね。ボクのボディは光や電気の類はみんな弾いちゃうのさ」

 ガイチュラトムは余裕でタダシをあざ笑った。

「仲間のガイチュラダンに背中から電撃を食らわせた奴はひょっとしてお前だったんだね」

 タダシは答えない。

「あの時は、電撃と一緒に火炎攻撃も受けている。――という事は仲間がいるよねぇー」

 タダシは腕時計を胸に構えた。

 スイッチオン。

 タダシの姿はブラストゴールドに変貌した。

「お前も変身するのか? アンナと同じサイボーグなのかい」

 ブラストゴールドの姿を見て、サキは確信した。

 やっぱりあれはタダシだったのだ。

 ブラストゴールドは銃を抜いた。

「光線銃かい? ムダムダ」

 ゴールドはガイチュラトムの言葉には取り合わず、銃の引き金を引いた。

 銃口から放たれたのは、光線ではなく、火炎だった。

 火炎攻撃がガイチュラトムのボディに炸裂した。

 だが、強固なボディを誇るガイチュラトムは余裕で火炎攻撃を受けている。

「クックックッ……、人間は愚かだねぇ、学習しないねぇ。ムダだと言っているだろう」

「……」

 ゴールドは無言で火炎を放射し続けた。

「――しつこいな。いい加減に……」

 ガイチュラトムは「しな!」と叫びながらゴールドに襲いかかってきた。

 ゴールドは跳躍してかわした。

 かわしながら、ゴールドはサキの場所を確認した。

 大丈夫。

 逃げてはいなかったが、だいぶ離れた場所からこちらを見ていた。

「ほらほら、逃げてばかりいるんじゃないよ!」

 ガイチュラトムは体を球体状に丸めると、高速で転がりながらゴールドに襲いかかってきた。

 ゴールドは再び銃を射った。

 銃口から放たれたのは、火炎ではなく、高圧冷水だった。

 水流が転がりくるガイチュラトムに当たりしぶきを上げた。

 だが、ガイチュラトムの勢いは全く弱まらない。

 ゴールドはまたも跳躍してガイチュラトムをかわした。

「ちょこまか逃げてばかりいるんじゃないよ!」

 ガイチュラトムは方向を変え、またもゴールドに襲いかかってきた。

 ゴールドは三たびガイチュラトムに銃口を向けた。

 今度はレーザー光線が放たれた。

「ムダだと言って……、ウ!?」

 レーザー光線が転がりくるガイチュラトムに直撃。

 ところが、レーザー光線はガイチュラトムのボディに弾かれること無く、その内部に突き刺さっていた。

「ぐ……、ぐああ!!」

 激痛に悲鳴を上げ、ガイチュラトムは球体状態を解いた。

 自慢の黄金ボディには無数の亀裂が走り、肩には今ゴールドに射ち抜かれたレーザーの穴が開き、煙が出ていた。

「う……、うわ、なぜ?」

「いちいち質問の多い奴だな」

 ゴールドが口を開いた。

「学校で習わなかったのかい? 熱したものを急激に冷やすと壊れてしまうという事を」

「な……、なんだと。それで、最初に火炎、次に冷水で攻撃してきたのか……」

 ガイチュラトムは人間の男児の姿に戻った。

 顔にはヒビが走っている。

「もっともガイチュラは学校になんか通わないか。姿は人間でも、その正体は宇宙害虫だからな」

 ブラストゴールドもまたタダシの姿に戻った。

 そして、人差し指をトムに向けて構えた。

 電撃を放つ構えだ。

「終わりだ」

 タダシが電撃を放とうとしたその時、

「お待ち、人間」

 タダシは背後からの声に振り向いた。

「タ、タダシ……」

 不安げなサキの声。

 サキは、20歳ぐらいの男女2人に拘束されていた。

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