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妹弟兄姉マイティブラスター  作者: 秋保嵐馬
二.フォーグナー学園都市編
24/50

24.四人のサイボーグ

 前日のガイチュラ騒ぎは、フォーグナー学園高等部でも話題になっていた。

 中等部は学生服とセーラー服だが、高等部の制服はブレザーだ。

 授業が終わった2年生の教室。

「すごかったよねー、ミドリ。私たち間近で見ちゃったんだから」

 ミドリにジュンが話しかけてきた。

 さっそく友達になったジュンに誘われて、ミドリは放課後一緒にハンバーガーショップのアルバイトを始めていた。

 アルバイトをするのもまた情報収集のためだ。

 昨日、そこへたまたま妹のモモコが友達のサキとやって来た。

 その矢先の出来事だったのだ。

「ほんと、こわかったよねーー」

 ミドリも調子を合わせる。

「なんか、教会のユーレイのうわさといい、昨日のガイチュラの件といい、マジにこわいよね」

 口調は軽い感じだが、ジュンも真剣にこわがっている様子だった。


 一方、放課後の高等部剣道場。

 剣道部の活動中のヒロシがいた。

「めぇーーん!!」

 ヒロシの技が相手に決まった。

「ま、参った」

 今、ヒロシに面を決められた3年生の主将が面を取る。

「ヒロシ、おまえすげーな」

「先輩たちでもおまえに勝てる奴いねーぞ」

 他の1年生部員たちがヒロシの周りに集まった。

「いや、たまたままぐれさ」

 ヒロシは謙遜して防具を外そうとした。

「確かに、男子部員では勝てるのはいなそうね」

 女の声がした。

「あ、エレン先輩、カレン先輩」

 男子部員たちが見やった方をヒロシも見た。

 双子の女子剣道部員が立っていた。

 その2人とは――、前日山の中で、ダンやゴメルと話をしていた双子である。

 ガイチュラが化けているのだ。

 だが、今のヒロシにそれを知る由は無かった。

 1年生の男子部員たちがヒロシに言った。

「女子剣道部3年生のエレン先輩とカレン先輩だよ。すげーーつえーーんだ。男子部の主将もかなわねーー」

「主将を負かしたのは、エレン先輩とカレン先輩に続いておまえが3人目ってことさ」

「新入部員のヒロシ君――だったわね。自分たちで言うのもなんだけど、ウチの剣道部最強は私たち2人なの」

 エレンが言った。

 防具に名前が書いてあるので、同じ顔でもエレンとカレンの区別はできた。

「主将を負かすとは驚いたわ。どう? 今度は私たちとお手合わせ願えるかしら」

 今度はカレンがヒロシの顔を真っ直ぐ見て言った。

「いいですよ。で、俺の相手をしてくださるのはどっちですか?」

 双子は顔を見合わせてから言った。

「では、私が」

 対戦を申し出たのはエレンだった。


「はじめ!」

 部員の1人が審判を務め、ヒロシとエレンの試合が始まった。

 当初、お互いになかなか攻めに入れずにいた。

 スキをうかがい合いながら、タイミングを探る。

 ついにエレンの方が打って出てきた、その竹刀を寸前でかわし、ヒロシはエレンに「胴」を決めた。

「胴あり!」

 審判が声をかけた。

 おおーーと、見ていた部員たちがどよめいた。

 見ていたカレンが、信じられないという顔でヒロシを見た。

 互いに礼をし、ヒロシとエレンの試合は終わった。

「次はカレン先輩ですか」

 ヒロシはもう1人の双子の先輩に言った。

「フ、やめておくわ」

 正座していたカレンは立ち上がった。

「エレン、今日は調子が悪かったみたいね」

 カレンはエレンに声をかけた。

「カレン……」

 防具の中で、エレンは悔しそうな顔をしている。

「邪魔をして悪かったわ」

 そう言い、エレンとカレンは道場を去って行った。

 男子部員たちが、わぁっとヒロシの周りに集まってきた。

「ヒロシ、すげー。ホントにおまえすげーよ」

「見たかよ、さっきのカレン先輩達の悔しそうな顔」

「いっつも大きな顔されてちょっといやだったからなーー、すっきりしたぜ」

 どうもエレン、カレンは、男子部員たちからあまり評判が良くないようだ。

 ヒロシは今、エレンと手合わせして、妙な感覚を覚えていた。

 まるでガイチュラと戦っている時のような、尋常ならざる殺気を感じたからである。


「お花を頂こうかしら」

 フラワーショップに入って来たのは、山の中でダンやゴメル、エレン、カレンらと一緒にいた、もう1人の20才ぐらいの女だった。

 同じく一緒だった20才ぐらいの男もいる。

「いらっしゃい。どれになさいます」

 接客している深緑色の髪の少年は――コウジだった。

 ミドリがハンバーガーショップなら、コウジはフラワーショップでアルバイトがてら情報収集をしていたのである。

 昨日街にガイチュラが現れた騒ぎの時していたエプロンもフラワーショップのものだった。

「お部屋にアレンジメントを飾りたいの。適当に見繕ってくださる?」

「わかりました」

 女に言われてコウジはアレンジメントを作り始めた。

「ふん、花など何にする気だ?」

 男に問われ、女が言った。

「あら、花は気持ちをリラックスさせるのにとてもいいのよ」


 コウジのフラワーショップからアレンジメントを買った女と男は、ある建物に入って行った。

 鍵を開けて、部屋に入る。

 殺風景な部屋だ。

 そこに無表情な顔をした、2人の少年と2人の少女がいた。

 年齢はみな10代か。

 女は何も置かれていないテーブルにアレンジメントを置いた。

「どう? 少しは部屋が華やいだかしら」

 女が言う。

 少年少女は無表情だった。

「人間は花を見ると、心が癒されると聞いたけど――。やっぱりサイボーグじゃそんな事ないのかしらねぇ?」

 女は挑発するような口調で言った。

 この時ばかりは、無表情だった4人の顔に怒りが浮かんだのが見てとれた。

 キッと、女と男をにらんだのだ。

「おおーー、こわい事」

 女は椅子にかけた。

 男はそのかたわらに立ったままだ。

「さてと――。決心はついたかしら?」

 女が4人の少年少女に聞いた。

「ホントに……、ホントに言う事を聞けば、アンナやオレたちの家族に手出しはしないんだな?」

 少年の1人が口を開いた。

「もちろんよ。ガイチュラの誇りにかけて誓うわ」

 思惑通りになる事に女はほくそ笑んだ。

「では決まりね。あらためて確認するわ。このエスパシオ内に、我々ガイチュラ『シャドウセブン』に仇をなす者がいる。おまえたち4人は、そいつらを探し出して始末するのよ」


 4人の少年少女は建物を出た。

 彼らの名前はヤン、ビリー、オウカ、ハルノ。

 ヤンは男子大学生。

 ビリーは男子高校生。

 オウカは女子中学生。

 ハルノは女子小学生。

 いずれもフォーグナー学園の生徒だ。

 女が言ったように、彼ら4人もまた、アンナ同様サイボーグだった。

 彼らは口を開く事無く、体内に内蔵された専用の通信機で会話を始めた。

 傍目にはただ黙って歩いている4人連れにしか見えなかっただろう。

ビリー『ヤン、一体どうする気だ?』

ヤン『どうもこうもない。ガイチュラどもが言っていた“敵”というのを探し出して対決するしかあるまい』

ハルノ『でも、その人たちはガイチュラの敵なんでしょう? ガイチュラの敵という事は――』

オウカ『――ガイチュラの敵という事は、人間の――つまり私たちの味方という事になるんじゃないの? 現に、アンナを助けてくれたらしいじゃない』

ヤン『そうだな』

ハルノ『それなのに、その人たちと戦うの?』

ヤン『仕方あるまい。俺たちの家族の命がかかっているんだ』

 ヤンの言葉に3人は沈黙した。

 通信機による会話をやめ、ヤンは肉声を発した。

「何か、簡単に食べていくか」

 ヤン、ビリー、オウカ、ハルノの4人はハンバーガーショップに入った。

 それはたまたまミドリがアルバイトしているハンバーガーショップであった。

 各自はそれぞれ好みセットを注文し、テーブルに着いた。

『口を開かず、黙って座っていたら変だ。ここでは通信機ではなく実際に口を使ってしゃべるぞ』

 ヤンは通信機で3人にそう指示してから、口を開いた。

「で、宿題の方だが、どうしようか」

 ヤンの言葉に、ビリーが調子を合わせた。

「俺は教会の辺りを見に行ってみる。何か手がかりが得られるかもしれないしな」

「声が大きいぞ。もう少し小声でしゃべれ」

「あ、すまん」

 ヤンにたしなめられ、ビリーは謝った。

 オウカが言った。

「私は寮を見てみるわ。最近新しく入った子がいないか、調べてみる」

「私は――、私はどうすればいいかな……?」

 小学生のハルノは、何をすべきか直ぐに思いつけないようだった。

「ハルノは俺と一緒に来い。大学の研究室で調べ物をするから手伝ってくれ」

「うん、分かった」

 彼らは小声で会話していたが、その唇の動きをそっと読んでいる者がいた。

 ミドリだった。


 ビリーは教会に来ていた。

 先日、ガイチュラであるダンと、アンナが対峙していた場所だ。

 ビリーは、地面を見て言った。

「地表に高温で焼け焦げたような跡が残っている……。やはり、落雷騒ぎというのは事実だったのだ。だが、一体、誰が――?」

 ビリーは、あちこちを見回し始めた。

「む? 足あと」

 ビリーは建物を曲がったところにある足あとに気付いた。

 ビリーは足あとを分析し始めた。

「足あとの古さや、サイズ、深さから計算して……、大人1人に子どもが6人。どうやら、ここで隠れてダンとアンナの様子を見ていたようだな」

 ビリーの電子頭脳が、7人の身長、体重を計算し始めた。

「何をしているの?」

 どこからか声がした。

 驚いてビリーは振り向いた。

 しかし、誰もいない。

「探しても無駄よ。私の姿は見えないわ」

「誰だ!」

 ビリーは身構えた。

「私はあなたの敵じゃない。もっとも今の時点では味方かどうかも分からないけどね」

 声は続けた。

「あなたは、先日の落雷事件を調べているわね。なぜなの?」

「おまえは誰だ? 見ず知らずの奴にそんな事、答える筋合いは無い」

「私たちは、女の子を1人探しているの。落雷事件の時以来、行方不明になっている――」

「なんだって――?」

 ビリーには直ぐに検討がついた。

 それはアンナの事に違いない。

「どうやら、誰の事か分かっているようね? その子の居場所知っている?」

「さあな、何の事か検討もつかん」

 ビリーは話しながら、声の聞こえてくる方向を分析した。

 どうやら上だ!

 姿は見えないが、声の主は樹上に居る。

「そこか!」

 ビリーは樹上をにらみつけると、両眼から破壊光線を発射した。

 ババババッという轟音が響き、光線は枝と枝の間を抜けていった。

 静かになった。

「やったか――?」

 ビリーはまだ油断する事無く、周辺に注意を怠らない。

 ――と

 さきほどビリーが射った空間よりやや下の位置から今度はビリーめがけてレーザー光線が放たれてきた。

 ビリーは避ける間も無かったが、ビリーにとって幸いな事に、レーザー光線はビリーの服の肩の辺りをちょっと焦がしただけだった。

 わざと外したのか?

 分が悪い。

「ち、勝負は預ける!」

 ビリーはそう言い捨てると、猛スピードであっという間に走り去ってしまった。

 枝から両足を引っ掛けて逆さにぶら下がっているミドリが姿を現した。

 さきほど、ビリーから破壊光線を打ち込まれた時、透明になっていたミドリは枝に座っていたのだが、背後にぐるんと半回転してぶら下がる形でかわしていたのだ。

 そしてその体勢からレーザーでビリーに威嚇攻撃を放ったのである。

 ミドリは両足を枝から外すと、くるんと回転して地上に着地した。

「あのハンバーガーショップの4人。何か知っているようね」

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