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妹弟兄姉マイティブラスター  作者: 秋保嵐馬
二.フォーグナー学園都市編
22/50

22.気になるうわさ

 戦闘用サイボーグスタイルに変身した、フォーグナー学園初等部の4年生アンナ。

 ガイチュラとしての正体を現した、その担任教師ダン。

 両者は学園都市はずれの教会の敷地内で対峙していた。

 物陰からそれを見守っているのは、アンナのクラスメートでありダンのクラスの教え子でもあるサム、レン、ダイゴ。

 同学園5年生のニーナ、マイ、チャコ。

 そして臨時教員のアカネの7人だった。


「行くぞ!」

 ナナフシ型ガイチュラとなったダンは、長いリーチを生かして、パンチやキックを繰り出してきた。

 素早い動きでそれをアンナがかわす。

 そのスピードは人間のものではない。

 ハヤトを除けば、ドライバウターの兄弟たち以上だ。

 それだけの身体能力をサイボーグ化により得たのだろう。

「フッシッシーー。どうしたどうした? 逃げてばかりでは私は倒せんぞ!」

 ガイチュラの攻撃をかいくぐり、アンナのこぶしがガイチュラのボディに入った。

 直撃だ。

「フッシッシーー。今なにかしたのかな?」

 アンナのこぶしの直撃を受けても余裕のガイチュラ。

 アンナは間合いを取ろうと後ろに跳んだ。

 そこを逃さず、今度はガイチュラが、空中を跳躍中のアンナのみぞおちにこぶしを突き入れた。

「ぐ……」

 倒れる事なく着地したものの、腹部を押さえ、アンナがうめく。

 アンナが危ない。

 ダイゴが動く気配を見せたが、アカネが止めた。

 周りの者には、それを単に生徒が無謀な行動をしようとするのを教師が止めただけにしか見えなかっただろう。

 だが、そうではない。

 ここでアンナを救うためにガイチュラを倒せば、サム、レン、ニーナ、マイに、アカネたちの超能力を知られてしまう。

 アカネたちの事をまだ周囲の者たちに悟られるわけには行かないのだ。

「でも、アカネ先生、あの子を助けないと――」

 チャコもまた、アカネに言った。

「大丈夫」

「?」

 そう言う姉を、ダイゴとチャコは見上げた。

「助けは来ているわ」

 アカネは言った。

「フッシッシー。今度こそ俺の突きでオマエの胴体を貫いてやるぞ」

 ガイチュラがこぶしを構えた。

 その時。

 ガイチュラの背後から、電流と火炎による同時攻撃が行われた。

 轟音。

 ガイチュラは無防備な背後からの攻撃に前へつんのめった。

 ただ、ナナフシ型ガイチュラは手足も胴体も細いため、的が小さい。

 2つの攻撃とも直撃とならず、致命傷を与えられなかった。

「ナ、ナ、ナナフ~~シ……。ナンだ、今のは?」

 それでもかなりのダメージを負ったガイチュラは、ギロリと背後を見た。

 攻撃を放った者の姿は見つけられなかった。

「お・の・れ~~、ナニモノだ……」

 それでもガイチュラは油断なく、辺りを見回した。

 まだ敵が潜んでいるかもしれない。

 だが、どうやらすでに居なくなってしまったようだ。

「ちぃ。不意打ちだけして逃げやがったか……」

 ガイチュラは、アンナの方に向き直ったが――。

「!?」

 アンナの姿もまた消えていた。

「ちくしょう、こっちも逃げられたか……」

 ガイチュラはダンの姿に戻った。

「どうやら、この学園都市に我々の知らない敵が潜入したようだ……。仲間に知らせねば」

 背中に少なからずダメージを受けたダンは、よろよろと立ち去っていった。

 アカネたちだけになった。

「せ、先生、一体どうしよう!?」

 ニーナが不安そうにアカネに聞いた。

「いろいろな事がいっぺんに起こりすぎたわね……。取り合えず――」

 アカネは、教え子たちを見て言った。

「今回の事は黙っていた方がいいわ。周りの人たちが直ぐに信じてくれるとは限らない。あなたたちが今回の件を知った事をダン先生に知られたら、あなたたちの身が危ないから。いいわね?」

 アカネは生徒たちに念を押した。

 サム、レン、ニーナ、マイは黙ってうなずいた。

 アカネは、この4人をそれぞれの家まで送って行った。

 チャコ、ダイゴも一緒に行った。

 チャコ、ダイゴは寮住まいだ。

 アカネもまた職員寮に入っている。

 学園内にある寮へ帰る道すがら、ダイゴがアカネに言った。

「アカネ姉さん、タダシ兄さんとモモコ姉さんが来ていた事知っていたんだね」

「ちょっと心配しちゃったわ」

 チャコも言う。

「あの場ではみんなが居たでしょ。細かく話できなかったの」

 アカネの説明に、チャコもダイゴもそれもそうかと納得した。


 翌日。

 アンナもダンも学園を休んだ。

 アカネに言われた通り、サム、レン、ニーナ、マイは口をつぐんでいたので、アンナやダンの正体について皆の話題にのぼる事はなかった。

 だが、うわさというものは広まるものだ。

 フォーグナー学園中等部1年生の教室。

 初等部は私服だが、中等部は制服が決められている。

 男子は詰襟の学生服、女子はセーラー服だ。

 休み時間。

 学生服を着て窓から外を見ていたタダシに話しかけてきた者がいた。

「おい、タダシ、知っているか?」

 話しかけてきたのは同じクラスのアランだった。

「知っているって何を?」

 タダシが聞き返す。

 妹チャコ、弟ダイゴが初等部に転入したのと同じ昨日、タダシもまた中等部のこのクラスに転入した。

 昨日からタダシにあれこれスペースコロニー「エスパシオ」やフォーグナー学園都市についての話をしてきたのがこのアランだ。

 今日もさっそく話しかけてきた。

「夕べコロニー内で落雷騒ぎがあったらしいってうわさだぞ」

 スペースコロニー内の天候状況は完璧に調整されている。

 本来、嵐や落雷などあり得ないのだ。

 アランほか皆が話題にするのも無理からぬ事だった。

「しかも場所は例の教会あたりらしいんだよな。魔界から化け物でもやってきたんじゃないかって言ってるヤツもいるくらいだぜ」

 まあたしかに化け物には違いないか、ガイチュラだしな――タダシは思った。

 言うまでもなく夕べの落雷騒ぎの張本人はタダシである。

 姉モモコと共にガイチュラを背後から攻撃した際のものが、不特定多数の者に観測されたのだろう。

「物騒な話だね。エスパシオの天候システムに不具合でもあったんじゃないの?」

 タダシは適当にはぐらかした。

「なんだよそれ。つまんねーな」

 確かにそっちの方が信憑性があるかもしれない。

 話が現実的になってしまってアランも少々テンションが下がった。

「おい、2年女子が次の授業水泳だぞ」

 別の男子たちが騒ぎ出した。

「なに、水泳?」

「見に行こうぜ!」

 急に男子たちが活気付く。

「やーねー」

と、同じクラスの1年女子たち。

「そうだ、タダシ、知っているか?」

 下がったテンションが再び上がったアランが、またまた話をタダシに振る。

「今度はなんだい?」

「2年女子にすごい可愛い子が転校してきたってうわさだぞ。ピンクの髪のショートカットの子らしい」

 アランが生き生きとしゃべりだした。

「知ってる死ってる」

「俺、昨日ちらっと見た」

 別の男子たちも2人の会話にからんできた。

「タダシも、早く見に行こうぜ」

 ピンクと聞いてピンと来た。

 それは姉のモモコだ。

「行くって言ったって、向こうが授業ならこっちだって授業じゃないか」

「授業開始前にもうプールに来て先生が来るのを待ってるんだよ。授業が始まるまでまだちょっと間がある今がチャンスだ」

「ボクはいいよ」

 タダシはのってこない。

「なんだよそれ。つまんねーな」

 アランはさっきと同じセリフを吐くと、他の男子と一緒にダッシュで教室を飛び出していった。

「ホント、男子って本能全開でサイテー」

 タダシの隣の席のマロンが言った。

「ごめん、ごめん」

 タダシが苦笑して言う。

「あ、別にタダシが謝る事じゃないよ。――タダシはちょっと他の男子と違う感じよね。」

「いやあ、どうかなーー」

「ねえ、タダシ」

「なに?」

「タダシも、その……、年上の女の人がいい?」

 マロンが、じぃーっとタダシの顔を覗き込むように見る。

「うーーん」

 言われてタダシの頭には5人の姉と1人の妹の顔が浮かんだ。

「ビミョーかもーー」

 タダシは、はははと笑ってごまかした。


 プールのフェンス際からあからさまに覗いたのでは、先生に見つかって叱られてしまう。

 アランたち男子は、上の階の空き教室に入り込み、窓からプールを覗いた。

 中には準備のいい事にオペラグラスを用意している者もいる。

 貸せ、俺にも見せろと、たちまち取り合いになった。

「お、おい誰だよ、あの先生!」

「すげぇーー、イケてる!!」

 空き教室は大騒ぎだ。


「はーーい、準備体操するわよーー。広がってーー」

 競泳用水着に身を包んだ青い髪の若い女の先生が入ってきた。

「あれ、いつもの先生じゃないんですか?」

 スクール水着姿の2年女子生徒の1人が青い髪のその先生に聞いた。

「今日は私が指導をするわ。昨日着任した体育教師のアオイです。みんな、よろしくね」

 アカネは初等部の教師、そしてアオイは中等部の教師として、フォーグナー学園都市に潜り込んだのだ。

 アオイはスクール水着姿の女子生徒たちを見た。

 中にはピンクの髪の妹、モモコの姿もあった。

 もちろん、初等部でアカネやチャコ、ダイゴがそうだったように、中等部のアオイ、モモコ、タダシも他人同士という事になっている。


「くぉらあぁーーー! 何をやっとるかあ」

 突然空き教室の扉がガラッと開いて体育教師のゴメルが入ってきた。

「げっ」

「ゴ、ゴリラ――、じゃない、ゴメル先生」

 あわててオペラグラスをしまい、アランたち男子はみな直立不動になった。

「おまえら、ここで何しとる? まさか覗きなどやっていたのではあるまいな!」

 大きな体のいかついゴメル先生は、アランの顔をじろりと見下ろした。

「そ、そんな違いますよ」

「そ、そうです。先生」

 必死に言い訳する男子たち。

「んじゃあ、何をやっとった?」

「そ、そのーー」

「えーと、あ、そうだ。この空き教室がホコリっぽいので、気を利かしてお掃除してあげちゃおうかなーーなんて……」

 口から出まかせに必死に言い訳する男子たち。

「ほぉ?」

 ゴメル先生はニヤリと笑った。

「そいつは感心だな。いや、まことに結構」

 男子たちはほっと――、するのは早かった!

「だが、もう授業が始まる。そんなに掃除がしたいというのなら、放課後学校中をみっちり掃除してもらおう」

「え、ええーー!?」

 思わぬ展開に悲鳴のような声を上げる男子たちにゴメルの大声が飛んだ。

「返事はぁ!?」

「ハ……、ハイ!!」


 放課後――。

 学校中を掃除するはめになったアランたちがいた。

「自業自得よねーー」

と、それを横目で見ている、マロンたち同じクラスの女子だった。

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