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妹弟兄姉マイティブラスター  作者: 秋保嵐馬
一.ドライバウター登場編
18/50

18.水のヒロシ

 やって来た2匹のガイチュラたちの進路をふさぐようにヒロシは立ちはだかった。

 ガイチュラたちは進路前方に立つ紺色の髪の少年に気付き、進むのを止めた。

「また、やつらの仲間だ」

「気をつけろ。こいつも何かを仕掛けてくるぞ」

 ガイチュラたちは、既にタダシの電撃とモモコの火炎放射を目の当たりにしている。

 ヒロシに対しても警戒した。

 ヒロシと2匹のガイチュラたちは、対峙したまま動かない。

 雨がぽつりぽつりと降ってきた。

 ヒロシを、ガイチュラを、雨が濡らした。

 それでも両者は動かなかった。

 雨は次第に量を増し、激しくなってきた。

 ガイチュラの1匹が異変に気付いた。

 雨が降っているのは――

 ヒロシやガイチュラたちを囲む20~30メートル四方だけだったからだ。

「この雨おかしいぞ!」

 1匹のガイチュラがもう1匹に言った。

「雨が降っているのは我々の周りだけだ。よく見ろ!」

「何?」

 言われてもう1匹のガイチュラが周囲をよく見回した。

 夜が明けてきて周囲が明るくなってきている。

 よくよく注意してみると、30~40メートル向こうには雨は落ちていない。

「これは一体?」

「気をつけろ! こいつだ、こいつが雨が降らせているんだ」

 2匹のガイチュラたちがヒロシを見た。

 ヒロシは右手を水平に上げ、指先を1匹のガイチュラに向けた。

「!」

 ガイチュラは、とっさにこれがヒロシの攻撃態勢である事を悟った。

 既にタダシやモモコが同じポーズから攻撃を放っているのを見ていたからだ。

 ガイチュラはヒロシの指先の軸線上から逃れようとしたが、ヒロシの攻撃の方が早かった。

 ヒロシは指先から超高圧の水流を放った。

 といっても、ヒロシの体内から水を供給しているわけではない。

 ヒロシは周囲の水分を指先に集め、超高圧水流として放つ事ができるのである。

 ガイチュラは超高圧水流により、額から臀部までを貫通された。

 ヒロシもまた、妹モモコ、弟タダシ同様、1匹のガイチュラを一撃で倒した。

「ぬぬ……、貴様……」

 残り1匹となったガイチュラが焦る。


 電撃で黒焦げになり動かなくなったガイチュラが転がっていた。

 タダシが倒したのだ。

 残りは1匹。

「さあ、残りはおまえだけだ!」

 タダシが、残った1匹のガイチュラに叫んだ。

「く……、しゃくにさわるが、貴様との勝負はお預けだ。おまえと戦ってもこちらに大したメリットは無い。逃げた奴らを追いかけて餌食にした方がましだぜ」

 ガイチュラはそう吐き捨てると、突然上空に飛翔した。

「むっ! 逃げる気か?」

「ダガダガ~~。何とでも言え~~。ひとっ飛びでお前の仲間に追いつき、俺の餌食にしてやるぜ」

 ガイチュラはあっという間にミドリたちが逃げた方に向かって飛び去って行った。

「そうはさせないぞ! 待てーー」

 タダシも走ってガイチュラを追った。


 火炎放射で黒焦げになり動かなくなったガイチュラが転がっていた。

 モモコが倒したのだ。

 こちらも残りは1匹になっていたが、

「おまえとの勝負はやめだ。村の人間どもを襲った方が、はるかにこっちは得だからな」

 モモコと戦っていたガイチュラもまた、仲間の1匹を倒されると、戦いを放棄して村の娘を襲いに飛び去っていった。

「逃げるのか? 待て!」

 モモコも叫んだ。

 モモコの頭上、明け方の空を別の1匹のガイチュラが通過していった。

「?」

 モモコは事情が分からない。

「姉さん!」

 背後から声がした。

 タダシだった。

 たった今モモコの上空を通過して飛んでいったのは、ついさっきまでタダシと戦っていたガイチュラだったのだ。

「今、ガイチュラが来なかった? 1匹逃がしちゃって――」

「あっちへ行ったわ!」

 タダシと並んで一緒に走りながらモモコが言った。

「あと、あの1匹だけだったんだけど……」

 そう言うタダシにモモコも言った。

「おそろいね。私も1匹取り逃がしたわ」

「姉さんも!? 気が合うね」

「ミドリ姉さんとヒロシ兄さんのところへ急がないと。2人は大丈夫だとしても、村のみんなを守りながら戦うのは厳しいはずだから」

「確かにそうだ」

 モモコとタダシは先を急いだ。


 ヒロシの水流攻撃を警戒し、ガイチュラは素早く動き回りながらヒロシに襲いかかってきた。

 その鎌の切っ先をかわし、ヒロシが反撃の水流を放つ。

 それをまたかわし、ガイチュラが襲いかかる。

 両者の攻防は一進一退となった。

 両者がドライ バウト(冷徹な戦い)を繰り広げる上空に、2匹のガイチュラが現れた。

 それぞれ、タダシ、モモコとの戦いを放棄してやって来た奴らだ。

「む? いかん!」

「このままではあいつも危ないかもしれん」

 2匹のガイチュラは上空から叫んだ。

「おい、上昇しろ! 3人で合体だ!」

 呼ばれて下のガイチュラも応じた。

「あのテを使うのか!?」

 地上のガイチュラからの問いに上空のガイチュラたちが答える。

「そうだ。仲間が何人もやられた」

「我々の消耗も激しいが、やむをえん!」

「よーし、分かった」

 ヒロシと対峙していたガイチュラも、地上から飛翔した。

「何をする気だ?」

 ヒロシが油断なく宙空の3匹のガイチュラを見上げた。

「合体!!」

 閃光と共に、3匹のガイチュラたちが1つになった。

 光がやむと、そこには全長40メートルほどの巨大タガメ型ガイチュラが居た。

 3匹のガイチュラが合体し、同型でビッグサイズの1つのガイチュラになったのだ。

「くらえ!」

 1匹となった巨大ガイチュラは急降下して鎌で襲いかかってきた。

 跳躍してかわすヒロシ。

 水流を射つ。

 しかし、巨大ガイチュラの外甲に弾かれた。

 巨大ガイチュラは笑った。

「ダッガッダッガッ。3体が合体した我々は、パワーもスピードも強度も3倍よ!!」

 確かに巨体にもかかわらず動きが速い。

「厄介な事になったな」

 攻撃をかわしながらヒロシ。

「どうだ、どうだ? 合体した我々は無敵なのよ!」

 ヒロシは巨大ガイチュラと距離を取った。

「村の人間どもはどこへ行った?」

 巨大ガイチュラはミドリや村の娘たちを探した。

 ところが見当たらない。

 目で足あとをたどる。

 なんと、途中で足あとが消えていた。

「これはどういう事だ? 人間どもが煙のように消えてしまった。やつらは瞬間移動でもできるのか……」

 巨大ガイチュラは周囲を見回す。

 しかし、やはりミドリと村の娘たちの姿は見当たらない。

 居る人間はヒロシ1人だけだ。

「よそ見してるんじゃないぜ!」

 ヒロシが再び水流を放った。

「うっとうしいわ!」

 体に命中した水流をものともせず、ガイチュラが猛スピードで鎌で切りかかってきた。

 ヒロシは跳躍したが、足にガイチュラの攻撃がかすってしまった。

「くっ……」

 着地したものの、足に傷を受け、膝をつくヒロシ。

「我々が本気になれば、人間どもなどイチコロよ!」

 巨大ガイチュラがとどめを刺そうと、ヒロシに向き合った。

 雨はやんでいた。

 傷を受け、ヒロシの力が弱まったのだ。

 昇り始めた朝日を受け、水に濡れた木々の葉が、地上が、巨大ガイチュラの外甲が光った。

 その時、どこからともなく一直線にレーザー光線が放たれた。

 レーザーは巨大ガイチュラの片目に直撃し、破壊した。

「ぐわっ!」

 ヒロシだけに注意を取られていた巨大ガイチュラは他からの攻撃を全く想定しておらず、片目を失った。

「く……、どこだ!」

 巨大ガイチュラは残った片目で周囲を見渡した。

 しかし、やはり視界に入る人間はヒロシだけだ。

「今の攻撃はおまえからではない……。だが、他の人間の姿が見えん。どういう事だ……?」

 巨大ガイチュラはヒロシに注意を払いつつも、周辺の気配に神経を張り巡らした。

 そこへ声がした。

「ヒロシ兄さん!」

 モモコとタダシが現れた。

「兄さん、大丈夫?」

 直ぐにヒロシの足の傷に気付き、妹モモコが言った。

「ああ、かすり傷だ」

 ヒロシが答える。

「こいつ、いつの間にかでかくなっている!」

 タダシが巨大ガイチュラを見て驚いた。

「気をつけろ! ただでかいだけじゃない。スピードもパワーも強度も何もかも3倍になっている」

 ヒロシが弟妹たちに注意を促した。

「3倍だって?」

「タダシ、同時攻撃よ!」

 モモコとタダシが火炎放射と高圧電撃を同時に放った。

 巨大ガイチュラは、それを体の真正面から受け止め弾き返すと、モモコとタダシに襲いかかってきた。

「うわっ」

「速い!」

 モモコとタダシは左右に跳びのいた。

「目だけはそうじゃない。みんな、目を狙うんだ!」

 ヒロシが弟妹たちに伝える。

 ヒロシが水流で、モモコが火炎放射で、タダシが電撃で、それぞれ巨大ガイチュラの残った片目を狙い撃ちした。

 巨大ガイチュラもさすがにそこは警戒しており、当たらない。

 そして、3倍となったスピードで3人に襲いかかってきた。

 それをかわしながら巨大ガイチュラへの反撃を試みるヒロシ、モモコ、タダシだったが、なかなか有効なダメージを与えられずにいた。

 一進一退の攻防が続く。

 かなり、日が昇ってきた。

「ヒロシ、モモコ、タダシ。3人ともガイチュラから離れて!」

 声がした。

 ミドリだ。

 だが、姿は見えない。

「む、どこだ?」

 巨大ガイチュラも辺りを見回す。

 声がしたのは――、どうやら足あとが消えている辺りからだ。

 姿は見えないが、あそこにミドリがいるのではないか?

 巨大ガイチュラはそう見当をつけ、足あとの消えた辺りに突進してきた。

 そこにスキがあった。

 真正面の何も無い空間から、巨大ガイチュラの残った片目めがけてレーザー光線が放たれたのだ。

「!」

 しまったと巨大ガイチュラが気付いた時は遅かった。

 残った片目もレーザー光線で吹き飛ばされていた。

 ヒロシ15歳。

 12兄弟姉妹の8番目、四男。

 身長170cm。

 髪の色、紺。

 水を操る。

 雨を降らせたり、高圧水流を放ったりして武器とする。

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