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妹弟兄姉マイティブラスター  作者: 秋保嵐馬
一.ドライバウター登場編
17/50

17.炎のモモコ

 モモコが全身から炎を放っている。

 といっても、彼女自身の皮膚や髪や服が燃えているわけではない。

 彼女自身や持ち物等には一切影響を及ぼさずに、モモコは自在に炎を操る事ができるのである。

「ム? あれは何だ!」

「降りてみるぞ」

 上空のガイチュラたちは、森の中で燃えている炎に直ぐに気付いた。

 ガイチュラたちの気を引くため、モモコはわざと目立つように炎を上げたのである。

 6匹のガイチュラたちは、モモコを取り囲むように着地した。

「これはどういう事だ?」

「人間が燃えているぞ」

「動かない。生きているのか?」

 立ち姿勢のまま1人の人間が燃えている状況が何を意味するのかを、ガイチュラたちはつかめないでいた。

 炎に包まれたまま、モモコはゆっくり片腕を上げ、1匹のガイチュラに向けた。

「?」

 意味が分からず、ガイチュラたちはそれをじっと見つめている。

 突然、モモコがガイチュラに向けた手の指先から炎を放った。

 超高温の火炎放射を全身に浴び、1匹のガイチュラはあっという間に炎に包まれた。

「ギエエエエエーーッ!!」

 炎に包まれたガイチュラは黒焦げになり、ほどなく動かなくなった。

「な、なんと!?」

「さっきの電撃の奴といい、こいつといい、普通の人間ではないぞ」

 ガイチュラたちは色めきたった。

「なあに、熱いのは一瞬だ。ちょっと我慢してぶった切ってやる」

 1匹のガイチュラが前足の鎌で襲いかかってきた。

 モモコは跳躍してそれをかわすと、襲いかかってきたガイチュラを踏みつけて再跳躍し、そのガイチュラの背後に着地した。

「ぎゃあ、あじじじじ~~」

 熱い炎を帯びた足で踏みつけられ、ガイチュラは悲鳴を上げた。

 モモコは振り向き、たった今踏みつけたガイチュラに指先を向けると、炎を放った。

 炎を放たれたガイチュラは慌てて跳びのき、かろうじてモモコからの火炎放射直撃を回避した。

「うぬ~~」

 ガイチュラたちもモモコの炎攻撃を警戒し始めた。

「こいつ1人だけか?」

「あとの奴らはどこだ?」

 ガイチュラたちはミドリやヒロシ、村の娘たちを探し始めた。

「む、見ろ。足あとがあるぞ」

 1匹のガイチュラが、モモコがここへ走ってきた時の足あとを見つけた。

「この足あとを逆にたどれば、他の人間どもがいるに違いない」

「よし、追うぞ」

 何匹かのガイチュラが足あとを逆にたどろうとした。

「そうはさせないわ!」

 モモコが火炎攻撃をしかけようとしたが、別のガイチュラが鎌で襲ってきた。

 モモコはバク転でそれをかわした。

「ここは俺たち2人で引き受けた」

「あとの者は、逃げた村のやつらを追え!」

 モモコの相手に2匹のガイチュラを残し、3匹のガイチュラが、足あとを逆に辿って走り去っていってしまった。

「3匹逃がしたわね……」

 モモコがつぶやく。

 それを聞いたガイチュラの1匹が言った。

「どうせおまえはもう仲間と会う事はできん。嘆く事はないぞ」

「その言葉、そっくりそのまま返すわ」

 モモコが返した。


 動きの鈍った6人の村の娘たちを誘導しながら、ミドリとヒロシは森を抜けるべく急いでいた。

「まずいわね。もし今、ガイチュラが現れたら」

「ああ、俺たちだけなら何とかなるけど、この人たちをかばいながら戦い切るのは難しい」

 姉と弟が心配する。

 村の娘の1人が転んだ。

「大丈夫?」

 ミドリが助け起こそうとかがんだ。

 その時、ミドリの服の中から通信機が転げ落ちた。

 すっかり忘れていたが、これはファイタスから預かった通信機だった。

「姉さん、それファイタスへの通信機じゃ?」

 ヒロシに言われてミドリも思い出した。

「そうだった。すっかり忘れていたけれど」

「ちょうどいい、ファイタスを呼ぼう。あのロボットに来てもらえれば、強力な援軍になる」

「そうね」

 ミドリは通信機のスイッチを入れた。

「ファイタス聞こえる? こちらミドリ。お願い、助けに来てほしいの」

 通信機に向かってミドリが言った。

 すぐに返事が会った。

「おう、ミドリ心配するな。GPSで探知しておまえの近くまで来ている。もう直ぐ到着するぞ」

 上空より、巨大な物体が飛来する物音が響いてきた。

 ファイタスのロボットだ。

 ファイタスは、ミドリ、ヒロシ、村の娘たちの直ぐ近くにロボットを着地させた。

 ファイタスは、コクピットのモニターで地上のミドリたちを見、ロボットのスピーカーを通して聞いた。

「おや? おい、ミドリ。妹たちはどうした? 2人姿が見えないようだぜ」

「――、」

 ミドリは一瞬答えに詰まった。

 詳しく説明している時間が無い。

 そのままをファイタスに伝えた。

「詳しく説明している時間は無いの。おそらく何匹かのガイチュラがもう直ぐここへやって来る。私たちは村のみんなを誘導するから、ガイチュラたちをここで食い止めるのを頼める?」

「へ、お安い御用だぜ。もともとガイチュラどもをドライブ アウト(退治)するつもりで俺はこの島へやって来たんだ。大船に乗ったつもりで任しておきな。おっと、もっともお前らの舟は小舟だったか」

 そう言うと、ファイタスはがっはっはっと大声で笑った。

 が、その笑い声は途中で途切れた。

 ガイチュラの1匹がロボットの背後から体当たり攻撃をしかけてきたのだ。

 不意をつかれて、ファイタスのロボットは転倒した。

「来た!」

 ヒロシが叫んだ。

「急ぎましょう」

 ミドリも皆を促した。

 3匹のガイチュラたちが、ファイタスのロボットを取り囲んでいた。

「なんだなんだ。たった3匹か。この俺様の敵じゃねーな」

 ロボットの態勢を立て直す。

 不意をつかれはしたものの、ファイタスは余裕だ。

「このロボット知ってるぞ」

「テレパシーで送られてきた映像で見た」

「ああ、海で仲間をやったやつだ」

 ガイチュラたちは言った。

 3匹のガイチュラたちは、前足の鎌で次々襲いかかってきた。

 しかし、ロボットの外装には傷一つ付かない。

「そんなもの効きはしないぜ!」

 ロボットはパンチを繰り出した。

 ガイチュラたちが跳びのいてかわす。

「このロボット、パワーはあるぞ」

「装甲も我々の鎌が通じない」

「気をつけろ」

 3匹のガイチュラたちは油断なくロボットを取り囲んだ。

「どうした、おらおら!」

 ロボットが、ガイチュラに拳や蹴りを繰り出した。

 ロボットより小柄なガイチュラたちは、器用にかわしながら、弱点を探すようにロボットのあちこちに鎌で攻撃を仕掛けた。

「ちい、ちょこまかと」

 有効なダメージを与えられず、ファイタスは少々焦り始めた。

 マシンガンを放った。

 しかし当たらない。

 昼間の仲間との戦いの様子をテレパシーで受信しているので、ガイチュラたちにはファイタスのロボットの手の内が分かっているのだ。

 ガイチュラの鎌の一撃が、ロボットの左肘の関節部に当たった。

 ビキッ!!

 なんと!

 ロボットの関節部分にひびが入った。

「おお、やったぞ!」

 ロボットにひびを入れたガイチュラが叫んだ。

「ち、やべぇ!」

 ファイタスが焦りを増す。

「このロボット、固いのは装甲だけだ」

「内部の金属には我々の鎌が通じるぞ」

「時々露出する関節部を狙え」

 ネビュラメタルは希少金属だ。

 ファイタスのロボットはオールネビュラメタル製ではない。

 装甲は確かにネビュラメタルだが、内部金属は地球の通常の合金なのだ。

 肘や膝、腕や足の付け根の関節部品は、手足を曲げ伸ばしするとどうしても露出してしまう。

 そこをガイチュラに気付かれてしまった。

「ロボットの関節を狙え」

 ガイチュラたちが、ロボットの関節に攻撃を集中してきた。

「け、弱点が分かったからって、攻撃をくらわなければ問題は無え!」

 ファイタスも居直って、反撃した。

 関節を狙う事ばかりに気を取られていたガイチュラの1匹をついに、ファイタスのロボットが捕らえた。

「捕まえたぜ……」

 コクピットでファイタスが勝利の笑みを浮かべた。

「し、しまった!!」

 ガイチュラの1匹が叫ぶ。

「おりゃあああ!」

 気合の叫びと共に、ファイタスのロボットはガイチュラを引き裂いた。

 だが、そこへファイタスにも油断があった。

 ガイチュラを引き裂くのにロボットの両手がふさがっていたのだ。

「仲間の犠牲を無駄にするな!」

 残った2匹のガイチュラは、仲間を引き裂き終えようとするロボットの両腕を、それぞれ肩関節から鎌で切断した。

 ロボットの右手と左手は、それぞれに引き裂いたガイチュラの半身ずつをつかんだまま、地上にドスンと落下した。

「やったぞ!」

「次は両足だ」

 ガイチュラたちはさらに攻勢を強めた。

「く、おのれ……」

 両腕を落とされ、ファイタスの形勢は一気に不利になった。

 2匹のガイチュラたちが前足の釜を差し込んで胸のコクピットのハッチをこじ開けようとした。

 ファイタスはロボットの上体を振ったり、膝で胸元を蹴ろうとしたりして、ガイチュラたちを何とか払い落とそうとしたが、ガイチュラたちは食らいついたまま離れない。

 ガシャンッ!!

 ついにファイタスのロボットは、地面に仰向けに倒されてしまった。

 ガイチュラたちがしつこく胸のハッチを開けようとしている。

 だが、ロボットのハッチはしっかり閉じられたままだった。

 その辺りのガイチュラへの備えは、このロボットもきっちりなされていたようだ。

「ふん、まあいい。こいつは放っておこう」

「ああ、人間どもを追いかけるのが先決だな」

 2匹のガイチュラは、再び足あとをたどり、ミドリやヒロシたちを追いかけ始めた。


 ミドリとヒロシは村の娘たちと森を進んでいた。

 娘たちの歩みが遅く、なかなかペースが上がらない。

 ヒロシが言った。

「ミドリ姉さん。もし、今度ガイチュラどもが追いついてきたら、次は俺が対応する。姉さんは、この人たちを少しでもガイチュラどもから引き離してくれ」

 ミドリは、弟のヒロシを頼もしく思った。

 女装していて顔にばっちりメイクされてしまっているヒロシではあったが。

「ありがとう。――さっそくお願いしなきゃいけないみたい」

 2匹のガイチュラたちが向こうからやって来た。

 モモコ13歳。

 12兄弟姉妹の9番目、五女。

 身長155cm。

 髪の色、ピンク。

 能力は火炎攻撃。

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