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不適な侵入者

__これからよろしく。ローラ?でいいか?俺は九十九 真崎だ。


取り敢えず、名前で呼んでみる。向こうの世界では何処がミドルネームで何処がファミリーネームかわからないが語呂から行ってローラだろう。でないとニエトが名前になってしまう。


「はい。それでかまいません。私はなんとお呼びすれば宜しいですか?」


__別に何とでも呼べばいいさ。


「解りました。主様とお呼びします」


__主様はちょっと・・・


主様ってそれはなんでもあんまりな名称に面食らって変更を求める。


「では、ご主人様の方が宜しかったですか?」


__普通に名前で呼んでくれ。頼む。


「仕方ありません。真崎様とお呼びしますね」


俺の懇願に渋々と言った感じでローラは了承した。俺はご主人様と呼ばれて喜ぶ性質ではないからそこんとこヨロシクなローラ。


__そういえば・・・なぁ、ひとつ聞きたいんだが、今すぐにその向こうの世界に行かなければ為らないのか?


「出来ればそうしていだだけると良いのですが真崎様も準備が必要でしょうからお待ちします。」


それはそうだ。いきなり向こうの世界に行った所で何が出来るかわからないしな。となると、向こうに持って行く物を色々と準備しなくちゃ為らないし、何より抱えている仕事を片付けないと会社での今の地位が危ない。


__取り敢えず、あと二週間程あれば今の仕事が終わるから、その後、向こうの世界に行ける筈。あと、本に物が入れられると言っていたが本にどれだけの量の物が入るんだ?


「解りました。1000年以上待ち続けた私です。二週間でしょうが1年でしょうが最早余り変わりません。あっ本にですか?多分幾らでも入ると思いますが正確な数は試してみないと解りません。なら、今試してみませんか?」


__試すって如何すれば良いんだ?


「何か手に持って『収納』と念じてみてください。声に出した方が確実ですがこの状態ではあまりブツブツと独り言を言う危ない人に真崎様が為ってしまいますので。あと基本的に触ってないと収納できません」


__・・・わかった。やってみよう。


やはり、声を出さないで話して正解だった様だ。思ったよりローラはいい性格をしているみたいだ。


何か無いかと服を手探りワイシャツの胸ポケットから煙草の箱を取り出す。赤と白のパッケージの米国ではかなりメジャーな煙草だ。俺自身余り煙草はあまり吸う方ではないが戦場や紛争地域では好まれる。戦闘と煙草はセットみたいな物だ。話を聞くのに煙草を恵んでやる事も多い。


__これでいいか?


「はい。大丈夫です」


取り出した煙草を掌に載せて瞼を閉じて『収納』と念じる。念じた次の瞬間には掌から煙草の箱の感触が消えて無くなる。瞼を開けて掌を見るとやはり煙草の箱が消えて無くなっていた。


__消えたが、何処に行ったんだ?


「それは本を開いて見てください。載っていますから」


本を開いてページを捲る。1ページ目にモノクロの煙草が写実調で描かれていた。


__取り出すのは如何すればいい?


「取り出したいものを思い浮かべながら『開放』と念じてくだされば出て来ますが、ひとつ注意点があります。出す所をはっきり認識していないと手に持つ様に出て来る事になりますのでお気を付けてください」


__そうか。『開放』


頭の中で煙草の箱を思い出しながら開放をしてみると手の中にいきなり質量の持って存在していた。ふっと湧いたような感覚に戸惑いながらも出て来た煙草の箱を眺める。蓋を開けて中を見ても紙巻煙草の茶色いフィルターが覗いているだけだ。特に変わった事が無い事を確認して、取り敢えずは使えそうだと安心する。


後は、大物の収納の実験をしてみようか。まぁ、それは向こうに着いてからの方が色々と試すのに都合が良さそうだ。いきなり、物が消えたり出てきたりしたら誤魔化すのが面倒だしな。もうこれの考察は此処までにして次の疑問を解決しておこう。


__先程、身を守ると言っていたが、それはどうやるんだ?


「魔法を使って行います。簡単に言うと対物理対魔法の防護壁ですがこれのメリットは防護壁の厚みが無く体と完全に一体になって違和感無く行動できる事です。デメリットは防護壁を張ったままですと触れても感触が解りませんのでその点のご注意を」


__その防護壁はどの程度防げるんだ?もしかして銃弾とかも防げるのか?


「ええ多分。その銃弾がどの程度の物か解りませんが、300メートル程を殲滅できる雷系小範囲殲滅魔法を直撃しても問題ありませんのでそれ以上でなければ大丈夫なはずです」


__殲滅って凄まじいな。だが、それは魔法の事だろう?物理攻撃だとどうなんだ?


「物理攻撃ですと、電磁速射砲程度であれば1000発程度なら耐えられますがどうでしょうか?」


__電磁速射砲ってのはなんだ?


「電磁速射砲は非空艇に積まれた兵器で威力は確か10センチ程の厚さの鉄の板を貫通出来ます。原理は魔術で電流を起こし磁場を発生させて二本の特殊な金属の棒の間で弾体を毎秒2800メートルに加速させて放つ物です。因みに非空艇は戦争ショーに用いられていた物で実弾を使った弩派手なパフォーマンスで人気がありましたね」


それってまんまレールガン(電磁投射砲)じゃないか。しかも、そんな物騒な物をショーに使っていたなんてどれだけ文明が進んでいたんだか。


__そうか、取り敢えずは銃弾程度では話になら無そうと言う事は解った。この障壁を貫通出来る物ってのはあるのか?


「周囲1キロ程の隕石なら不味いですが」


__それは実に頼もしいな。まず生活してて隕石に当たるなんて事は無いはずだし今や向こうの世界は中世程度の文化水準ならまず持って怪我などの心配は無さそうだ。


「そうですか。それは良かったです」


__あとは、何か伝える事はあったか?


「あとは・・・」


 バンッっと与圧室の後部ドアが開け放たれ何かが飛び込んできた。瞬間的に与圧室の気圧が下がり耳鳴りが起こる。音に気づいてイスから乗り出しながら振り返る。そこには10歳くらいの少年が二人拳銃と手に声を張り上げた。


「今すぐひこうきを国へ引きかえせっ!!」


「かっかえせっ!」


先に声を上げた右側の少年は薄汚れた黄色の半袖のTシャツに裾が擦り切れた半ズボン片手に自動拳銃のトカレフのチャイナコピー品である黒星を此方に向けていて、後から震える声を上げた左側の少年は右側の少年と同じような格好をして両手でコルト・ガバメントを持ち銃口をカチャカチャと鳴らしながら前に突き出していた。


後ろの方でチャキッと小銃を構える音がふたつ聞こえ、ガウリとサンが少年二人に銃口を向けた。一触即発の中俺は立ち上がり少年達に向かって威圧的に為らないように問いかける。


「何故君達みたいな少年がこの輸送機に乗っているんだい?」


「どうだっていいだろ。そんな事よりはやく国にひこうきを戻せっ!」


右側の少年が叫ぶように言った。


「ふむ。そうか、話す気は無いと、なら、此方も取り敢えず警告しておこうか。お前等の頭をライフルが狙っているぞ。悪い事は言わん銃を下ろして投降しろ」


そう言いながら、ゆっくりと少年達に近づいて行く。


「ボス。危ないから下がって」


サンが鋭く言った。


俺は片手を上げてサンを黙らせて座席の中央を通って少年達に近づいて行き、あと、数歩の所まで来た。右側の少年はトカレフを俺に銃口を向けて引き金に指を掛けたままそれ以上近づくなと、警告した。左側の少年は怯えた目つきで此方を見ていて、銃を人に向けたことが無さそうだった。


「おい」


そう声を掛けて視線を誘導した瞬間、手を伸ばし少年達の拳銃のスライドを握り少年側へとスライドさせた。スライドされた拳銃はチェンバーに装弾された銃弾を排莢口から落として拳銃を無力化させるとトカレフは右に捻って奪い同時にガバメントは持ち上げながら銃口を下にするように捻りを加えて奪った。奪った銃は心の中で収納を唱え消し去った。


収納がちゃんと出来た事に安堵しながら、拳銃を消し去って空いた手を右側の少年の右腕を取り、引きながら相手のバランスを崩して足払いを仕掛けて背中から受身を取らせない様に落とした。落とされた少年は息が出来ないのか顔に苦悶の表情を浮かべのた打ち回る。


それを横目に捕らえつつすぐさま腰の裏、スーツの裾ぎりぎりに水平に取り付けられたホルスターからコルトガバメントM1911を抜き滑らかな動作で左側の少年に突きつけた。同時にのた打ち回る少年に軽く蹴りを入れて鎖骨を上から圧迫するように踏みつけて押さえ込んだ。


「床に伏せろ」


少年はいきなりの出来事に硬直したままだったが、もう一度同じ言葉を繰り返すと這い蹲って両手を頭の裏で組んだ。これで少年達のささやかな抵抗は終わった。後に残されたのは何とも言いがたい弛緩した空気と安堵の声を上げる部下達だった。




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