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日常は非日常へと飛ぶ

やぁ、始めまして俺は、イギリスの総合軍需産業「マウスバウテン社」に籍を置く「九十九 真崎」(つくも まさき)26歳だ。所謂、武器商人をしている。今日も今日とて東アフリカにあるソマリアに来ている。


言っておくが別にバカンスに来たわけじゃないぞ。こんな海賊や山賊などが跋扈する危険地帯でバカンスどころか一般人すら居ないフェンスに囲まれた軍事基地に何の用があるのかと言われれば俺の職業である武器ひいては兵器を売り込むことだ。どこと無く色あせたような空の色の元どこかくたびれた軍用車や朽ちた対空砲が無造作に捨て置かれている。


_______内戦時代の遺物か・・・廃棄する金すらないか。ソマリアは最貧国の1つと呼ばれていることはあるな。


先導する良く日に焼けた浅黒い肌の兵士が先を促す様に何事か話す。俺も多少だがソマリ語の心得があるのだが、早口でうまく聞き取れなかった。だが、なんとなく兵士の動きが早くと言っている様に見えたので、笑顔で頷き所々砲撃で崩れた建物に歩き始める。その後ろを俺の護衛である二人の元少年兵であるガウリとサンが無言で続く。


ガウリは現ロシアの少数民族の一族の血を引き継ぐ17歳で肌が白くはっきりとした目鼻立ちをしていてすらっとしながらも程良く筋肉で引き締まった身体から連想させるのはシベリアの北部に生息する黒き森の狼。まさしく用心深く隙を見せないガウリは口数も少なく静かに牙を剥く瞬間を待つ獣だ。


その一方で、サンは一見して判る通りその黒い肌はアフリカ系である黒人である。少し潰れ気味の鼻と笑顔に映える白い歯が印象的で歳は自称だが今年の3月で18歳に為った筈だった。そのしなやかでバネの様な身体は接近戦、しかもナイフやハンドガンを使った至近戦で絶大な効果を発揮する。その動きはまるで踊るように敵を屠る事から、少年兵時代にミニキルゾーンと呼ばれていたようだ。


砂塵が積もり掃除の行き届いていない建物の中に入ると奥にある扉迄進み、兵士がきびきびとした動作で中に「武器商人をお連れしました」と告げた。今度はなんとか聞き取れた様で内心安堵していると中から「入れ」と返ってきた。兵士は扉を開け室内へと促し我々が入ると扉の前で銅像のように直立不動で動かなくなかった。


視線を戻すとこの基地の司令官であるマウリ少佐が薄く笑みを浮かべながら大きなデスクから立ち上がりこちらへ進むと握手を求めてきた。それに答え右手を差し出し握手すると少佐は左手で応接用のソファーに座るように示した。それに従いゆっくりとした動作で座る。少佐も向かいの1人掛けのソファーに座ると流暢な英語で問いかけた。


「いきなり本題ですまないが、”あれ”の件はどうなっている?今回はその返答のために来たんだろうな」


50代前後の威厳の感じさせる恰幅の良い少佐のこの国では珍しく知性を感じさせる言葉が耳朶を打つ。多少上から見下す目線が気になるが雑多な武装勢力などこんなもんかと内心ため息を吐きながら、おくびにもその態度を見せる事無く笑顔で返答する。


事実、彼はソマリアの軍人でありながら国際的には海賊を監視および掃討するプロパガンダを掲げ援助金を受け取り裏では受け取った金で武器弾薬をさらには情報を海賊に流し海賊には上納金を収めさせているのだ。まぁ、軍事予算など無きに等しい軍隊に居る以上何かしらの資金源があるのは当たり前の事だ。でなければ、部下を養うことなど出来ないしそんな金の無い軍隊は無力だからな。


「もちろんです少佐。本社の方でも検討した結果、今回の”あれ”が正式に許可されました。つきまして正式な契約に関する書類の作成とその後の運搬までのお話をさせて頂きます。」


今回の取引であるとある武器は、俗に言う装甲車だ。もちろん只の装甲車ではなくストライカーを基にした接敵迎撃パッケージが付いた奴だ。この接敵迎撃パッケージの凄い所はその迎撃能力にある。対戦車ロケット砲で知られるRPG-7やパンツァーファウスト3などの攻撃を高確率で防ぐことが出来、単体の索的範囲が高性能センサーや武装動体感知器を360度に張りめぐらせており尚且つ秀逸なプロセッサにより同時に20個にも及ぶ飛翔物や敵戦闘員に対して市街戦では無類の強さを誇る。


ではなぜ、最貧民国の一つであるソマリアの一司令官でしかない彼がなぜまだアメリカ軍ですら導入していない機体を欲しがるのか、それはハッキリとは判っていない。だからと言って本人に聞くことは自殺行為だ。何より武器商人は売る物を何に使うかなどいちいち詮索などしない。どうせ武器、兵器で行うことなど、示威行為に殺戮など挙げたらキリが無いし第一興味も無いからだ。


でもこの仕事に一番大切なことは相手が何を欲しがるか見極め、尚且つ相手にその代価が払えるか知ること。つまり情報戦も大事って事なのだが、俺はその方面に才能が無いらしくその辺は会社の(マウスバウテン社)情報部にまかせっきりなのだ。


一応、交渉はうまい事行っているので俺の貢献度は会社の中でも、上位に入っているから色々便宜を図ってもらっているが。思考の一部でそんな事を考えつつ書類に付いて説明したり承諾に必要なサインを少佐に求めたりしているうちに交渉は終わり、結局マウリ少佐はストライカーSGPを8台と補填兼改修キット5個を購入した。


それを空輸で納入する旨を伝え、ソファーから立ち上がり入って来た時と同じように笑顔で握手をして基地を辞去する。扉の前に居た兵士が基地の入口まで送ってくれた。入口のそばに見た目には判らない防弾のぼろく見せたセダンに乗り込んで町の方に向かって走り出した。


町に用事は無いがその先に空港があるために仕方なく向かったのだ。空港に向かう途中、懐から衛星携帯電話を取り出し電話を掛ける。掛けた先は会社の直属の上司であるジョージ課長へだった。


短い報告を済ませて、ふと、後部座席の窓から見える町の様子に違和感を覚えた。なにやら活気が無い、いや、これでは正確ではないな。なぜなら、町の中心地に差し掛かった所だというのに人1人も居ないのだ。まるで廃墟の様な姿に眉に皺を寄せ不穏な空気を感じていると、ガウリが緊張した声を上げる。


「前方11時、アンノウンが1」


端的な説明にフロントガラス越しに視線を向ける。ボロボロに剥げたアスファルトの上にフードを被った小柄な人間が立っていた。男か女かは判らないが見える範囲に武器を携帯しておらず、その姿は余りにも無防備に見えた。


俺は、取り敢えず危険は無いと判断し警戒しつつ、速度を上げて通り過ぎろとガウリに伝えて、シートに座りなおした。ぼろく偽装したセダンは5リッターのV8エンジンに鞭を入れる。鈍重なエンジンが唸りを上げて2センチの鉄板がボディに溶接された総重量2、5トンを超える車体を加速させ始める。


正体不明の人間の傍まで来た時に、それは起こった。不意に正体不明の人間が倒れるように此方に進むと其処から短距離走者の世界記録保持者も真っ青な速度で我々が乗るセダンの前に躍り出たのだ。それを見たサンが短い悲鳴を上げる。俺は舌打ちをひとつ打ち、人間爆弾。と言う思いが脳裏を過ぎる。ガウリはブレーキを踏まずハンドルを右に切るが間に合わずぶつかる。


と思ったが、今際の瞬間正体不明の人間が掻き消えた。それを受けてガウリが急ブレーキを踏むとタイヤが嫌なノイズを発しつつ徐々に速度が落ちて完全に停止した。即座にセダンを降りて周りを見渡すが、轢き殺した筈の肉片も無ければ、正体不明の人間も居ない。その間にサンとガウリがセダンを降りて周りを警戒するように小銃の銃口を上げて威嚇するが、我々以外誰も居ないこの場では、逆に滑稽だった。


轢き掛けた?場所まで歩き何か無いかと地面を見ていると、黒皮で出来た表紙の本が無造作に落ちていた。黒皮の本は見た事も無いような文字で題名と思わしき物が紡がれており少しも放置されていた様な埃さえ付いてなく綺麗な状態だった。


手を伸ばし拾い上げて見る。その瞬間、なんと言うか、映像が脳の中を駆け巡り、様々な言語で語り掛けている様な幻聴が濁流の様に押し寄せた。余りの情報の渦に処理高荷になった頭は早々に役目を放棄し目の前が真っ暗になって、膝から崩れ落ちた。


遠くか近くなのか判らないサンとガウリの慌てた声が聞こえたのを最後に、意識が途絶えた。

前々から構想のあった物を修正して出します。一応、他の物語の布石の為の投稿です。余り、長期連載を予定していませんが、さて、どうなることやら。では、稚拙な文ですがよろしくお願いします。

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