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依頼 その3

「ついたー!」


所長に連れられ着いた場所は、事務所から車で20分くらいの所だった。

(どうやって行くのかと思ったら、八百屋のおじさんに軽トラで送ってもらった。荷台に乗ったのは初体験だ。所長は助手席。)

そして「また今度も手伝いよろしく頼むよ!」と言い残して、俺達を残し軽トラは走り去って行った。

あれ、これは帰りは自力で帰ってこいということなのかな。


「どしたの千種、ぼーっとなって。」

「ああ、いや、なんかもう、何でもいいです。それより、本当にここに情報屋がいるんですか?」


建物の前に降ろされた時、俺は思わず二度見どころか三度見してしまった。

何故なら目の前に映ったのは、築何十年というかなりの年季が入った木造建築のボロアパートだったからだ。

窓ガラスは所々割れており、壁の板は所々外れている。

震度1でも揺すったら崩れるんじゃないかというおんぼろだった。


「そーだよ。さ、いきましょー。」


俺の考えもむなしく、所長はがんがん先へと進んでいく。

はあ、と小さな溜息を心の中でつき、俺もそのあとを追った。


しかし、事務所の3人といい、このアパートといい。

ここ最近かなりの変わり種に出会いまくっている。

願わくば、情報屋とやらが多少まともな人間でありますように・・・・。



「えっと、103号室・・・。ここだ。千種、準備いい?」

「はい、・・・ってなんの準備?」

「心の準備と反射神経の準備だよ。んでわ、あけまーす。」


ぎぎぎ、と古臭い音を立てて「103号室 P」というプレートがある扉が開けられた。

その瞬間。


目の前に何かが飛んできた。


何かとしか言えないのはそれはあまりにも早すぎて。

俺の顔面にクリーンヒットしたからだ。

ぼふ、っと目の前で音がして一瞬真っ暗になる。

慌てて目の前にある何かを手で引き剥がした。


ふわふわやわらか、ビーズクッションだった(某ねずみのキャラクターの)


「ほあー・・・よかったねえクッションで。」

「・・・・全然よくないです。」

「前はねえ、やかんとか、リモコンとか、テレビとかだったんだよ。優しいのきてよかったねえ」


うふふーと所長は笑うが、それはヘタをすれば死んでしまうのではないだろうか。

てゆうかこの人、そんなん投げてこられて怪我ひとつしてないのか。

それに、思っているよりクッションは痛かった。



「さてさて・・・・おっ邪魔するよう、つっくん。」


俺の事はお構いなしに所長は部屋の中へと入っていった。

俺はとりあえず手に持っているクッションを一回叩いてから、一緒に中に入っていく。

見かけと同じく中も6畳くらいの小さな部屋だった。

おそらくトイレもお風呂もないであろう、ドアのそばに小さなシンクがあるだけだ。

けれどその部屋の内装は見かけとは全然違った。


部屋中にコードが張り巡らされていた。

部屋の中央には大きなパソコンと、その隣にも4、5台パソコンがある。

ゲームに出てくるような機械室とか、研究室みたいな感じだ。

そしてその大きなパソコンの前に、一つの影。


無造作にはねている短い黒髪。

茶色の甚平を身にまとっているその人は。


どうみたって所長と同じ位の年の少年だった。

少年はこちらをじーっと見て、小さな溜息を吐く。

そして開口一番。


「つっくんはやめろっつってんだろーがこの馬鹿、殺すぞ。消すぞ。潰すぞ。てめーがそうやって呼ぶから他の奴らもそう呼んでくるじゃねーか。てめえは一回死んで生き返ってまた死んで二度とこの世に這い上がってくんじゃねえ。この屑野郎が。」


『願わくば、情報屋とやらが多少まともな人間でありますように・・・・。』


俺の願いはいつだって儚く砕け散ってしまうのだ。

この人、かなり口が悪い。










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