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出会い その2の2

自分の身にどうしようもない出来事が起きて、「あれ?これは夢だろうか?」と思ったとき。

よく昔から頬をつねってみて痛かったら現実、痛くなかったら夢の中だと両親やら先生やらに教わった気がする。


そして現在、普通に痛い。

どうやら夢ではないらしい。




「なにぼーっとしてんの。あと3秒で扉しめるぞ。」



つねって現実に戻ってきた俺は、その言葉に今が絶賛就職活動中のまっただ中であることを思い出した。


「あ、は、入ります!」


そうして俺は、この事務所に文字通り足を踏み入れてしまったのだ。






「お帰りなさいませ、所長。」



扉を開けるとそこには執事がいた。

所長と呼ばれた少女、石投命はそれがいつもの日常風景で慣れているのか普通に「たっだいまー」とその執事に返事をする。


俺は考えた。現在は2011年だ。そしてここは日本である。でぃすいずじゃぱん。

例え執事がいるとしても、それはどこかの大金持ちの家くらいだろう。

それが何故か、事務所の中にいる。言い方は悪いが結構ぼろい事務所にだ。

そんな固まっている俺を無視して二人は会話を続けていく。



「この人がね、昨日電話してきた日比野千種くん。真面目ボーイだよ。」

「嗚呼、彼がですか。本当だったんですね、所長が言っていたことは。」

「僕が嘘つくわけないじゃんよー。」

「それもそうでしたね、失礼致しました。」


執事は会話を切り上げえると、俺の方に歩み寄ってくる。

そしてすっと綺麗に頭を下げた。おお、俺が面接でするお辞儀よりもなんだか上品だ。



「初めまして、日比野千種さん。俺はこの事務所の副所長を務めさせていただいております綿貫隼わたぬきはやぶさと申します。以後、よろしくお願い致します。」

「あ、どうも・・・ってえと、俺、あ、いや私は日比野千種と申します!こちらこそよろしくお願い致します!」

「そんなに固くならずともいいですよ、俺のこれは趣味のようなものですから。貴方は普段通りにしていて下さい。俺の事は気軽に隼とお呼び下さい。」


にこり、と綿貫隼さんは上品な笑顔で言った。

改めて見ると、かなりのイケメンだった。

執事の制服(燕尾服、だっけか)をさらりと着こなし、長い手足に背も175ある俺よりも更に高い。

おまけに顔もかっこよくて、プラス眼鏡。そして声もいい。完璧とはまさにこの人のことだと思う。



「さあ、こちらへどうぞおかけ下さい。今お茶を持ってきてもらいますので。」

「あ、はい。」



隼さんに案内され、所長の机の前にある椅子に座る。

周りを見てみると、至って普通の事務所だ。

広さは学校の教室くらいで、壁には本棚やら棚、真ん中には長テーブルが2つ。

そして俺の目の前には所長が一人で使っているデスクと、更に所長の横の方には部屋がもう一つある。

しゅうしゅうとやかんの音が聞こえるということは、おそらくは給湯室なのだろう。

簡単に言ってしまえば某団長の部室とか某名探偵の事務所と似ている。(これでわかるのかも微妙だが)

と、その時がちゃ、と扉が開く音が聞こえた。

音のする方を見て、俺はまた思考回路が止まることになってしまった。



大男だった。

俺と隼さんを並べても隠れるんじゃないかという巨体。

オールバックでサングラス。体もごつく、着ているスーツの下からでもそのごつさがわかるくらいだ。

俺は思った。普通に怖すぎるこの人。


その人はゆっくり歩いてくると俺と所長の目の前に先ほど沸かしていたお湯でいれたであろう、紅茶の入ったティーカップをことん、と置いてくれた。

ものすごくいい香りだ。紅茶は飲んだことはあるが、ここまで香りがいいものは飲んだことがない。


大男はそれを置くと自分のデスクに向かい、静かに腰かけた。

・・・・なんだかちょっと拍子抜けだが、まあ何事もなくて良かった。


「うん、やっぱ一里の紅茶がいちばんだね。君も飲んで飲んで。」

「は、はい、いただきます。」



所長に促されティーカップに口付けた。

香りもいいが、味も良かった。こんなうまい紅茶がこの世にあるなんて、驚きだ。



「彼はねえ、東条一里とうじょういちり。彼の淹れる紅茶とかコーヒーは世界一美味しいんだよ。料理も上手だし。」

「はい、すっごいうまいです!」

「だって一里!よかったねえ。」


一里さんは座りながらす、っと頭を下げた。あまりしゃべらない人なんだな。

しかし、あの巨体で料理とは・・・・世の中にはいろんな人間がいるな。



「さてと、そろそろ話しよーか、きみ。」

「あ、はい!あの、履歴書を・・・。」

「必要ないよそんなの。」

「はい?」



「だって君もう採用だもの。今この時社員になりましたーおめでっとーござーますーいえい!」



俺はもう一度自分の頬をつねってみた。

痛かった。


おそらく次の話で彼らの仕事がわかります。

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