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対決 その1

20分程して、港に着いた。俺達は近くの倉庫の影に車を止め、降りた。

辺りはすっかり暗闇に満ちていた。普段は船の音や仕事をしている人でにぎわっている港も、この時間帯は恐ろしく静かだった。

所長が歩きだしたと同時に、俺と一里さんもその後を追った。


「さてさて。どこにいるかなあ沃実ちゃん。呼んだら返事してくれると思う?」

「まあ、すると思いますけど・・・・。いや、やらないでくださいよ?」

「うはは。千種も突っ込みがうまくなったね・・・と。」


所長が急に動きを止めた。俺達も同じように止まる。近くにあったコンテナに隠れ、そこから顔だけを覗かせた。

視線の先には、曳船沃実と、その他数人がうろついていた。数人の男たちが手に網を持っていたり、動物を運ぶケースを持っていた。


「まだ見つかってないみたいだね。んふふ、大チャンス。」

「あれだけ時間があったのに、まだ見つからないってことはもうここにはいないんじゃ・・・?」

「それはないね。でしょ、一里。」


所長が問うと一里さんは首を縦に振った。

俺達はもう少し距離を詰めて、曳船沃実達の傍まで近づくことにした。



「・・・・まだ見つからないわけ?」

「も、申し訳ございません!只今A班、B班と共に全力で探しております!」

「貴方達の全力はこの程度なの?大したことないのね。あと5分で見つけなさい。でなければ、私から直接社長に貴方達の事をお伝えするから。」

「・・・っ!?わ、わかっています!」

「・・・それと、あそこにいるC班からの連絡は?」

「まだありません。何かあった時は連絡が入るようになっておりますので、特に不測の事態にはなっていないようです。」

「そう。まあ、あの子があそこにいるのならいいわ。」



そのあの子は今まさにあんた達の傍にいます、なんて突っ込みを声に出して言うほど俺は馬鹿じゃない。

しかし会話を聞いていると、曳船沃実は相当すごい立場の人間らしい。

あんなおっさんたちが冷や汗かいて必死に探しているんだもんな。少し同情する。


「さて、このままここにいても埒が明かないし、いきますか。」

「ど、どうやってですか?作戦とかあるんですか?」

「作戦?あるよー。その名も『強行突破』!簡単でしょ?」

「すいません俺帰りたいです。」

「ここまできて帰れる訳ないじゃん。ほらいくよいくよ!」


「沃実ちゃーん!さっきぶりー!」


所長が大声で叫ぶと、その場の全員がこちらに視線を向けた。

中でも曳船沃実は今まで顔色一つ変えなかったその顔が、盛大に驚いていたのが見えた。


「!な、ぜ!?」

「僕らがあんなところに閉じ込められてはいおわりーな訳ないじゃない。」

「っC班から連絡はなかったんでしょ!?」

「は、はい!何か不測の事態があれば監視カメラを通して我々の処に連絡が・・・!」

「監視カメラなんてどっかの誰かさんにかかればすぐにいじれるよ。残念だったね。」

「【燕】か・・・!っA、B班両方来なさい!作戦を変更、こいつらを始末なさい!」


その呼びかけに今まで猫を探していた連中が俺達を取り囲んだ。ぐるっと見渡す限り、20人はいる。

全員が手に武器を持っている。さっきの奴らとは違い、ほとんどが拳銃だった。

前門の虎、後門の狼とはまさにこのことだな。


「さあ、これで逃げ場はないわ。いくら貴方でも、この数相手に戦える訳がない。チェックメイトよ。」

「・・・・僕チェス嫌いなんだよね、難しいから。それに、言ったよね沃実ちゃん。『あの子がここにいなければいい』って。」

「・・・・それが何?」

「そこまで僕を警戒しているなら、この状況で安心しちゃいけないよ。」


がん、と何かが壊れる音がした。

後ろを振り向くと、拳銃を持っていた男の手に、拳銃が握られていなかった。

足元には、おそらくその拳銃だったものであろう部品が、見るも無残な姿になって落ちていた。


「え・・・?」


驚いている間もなかった。次々と、拳銃を持っている男たちの手から、その拳銃は破壊されていった。

気がつけば、あっというまに半数以上が丸腰になっていた。


「これは・・・!?」

「沃実ちゃん達は地上ばっか警戒してるからダメなんだよ。空だって、警戒しなきゃあ、ね?」

「・・・・まさか!!!」

「おや。これはナイスタイミング、とでもいうべきですかね。」


聞き覚えのある声に振り向く。

そこには、既に丸腰の男たちを倒した隼さんの姿があった。


「隼さん!」

「只今戻りました。と、ついでに8名程気絶させておきました。」

「んふふ、ごくろーさま。さてと、沃実ちゃん」



「今度は僕らの反撃だよ。」





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