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捜査 その2

「俺たちのことを、殺す?」

「そ、殺すため。」


所長の口から出てきた言葉はかなり物騒な言葉だった。

先ほどから裏の話だったり、やくざの話だったり、まあずっと物騒な会話は続いていたのだが。

おそらく、今まで会話してきた中で一番危ない言葉だと俺は思う。


「まあ、ここは言ってしまえば中間なんだよ。」

「中間・・・・?」

「表と裏の間。白と黒の間。表の人から受ける仕事が多いから表には好かれているけど、裏には僕ら結構な嫌われ者なんだよねー。」

「そうですね。以前も原組に刃物持って追いかけまわされましたものね。」

「まああの時は想定内だったから良かったけどー。彼らの作戦はお粗末だったから。」

「待って、待って下さい。俺についていけない話を始めるのは止めて下さい!」


へらへら笑いながら二人は話しているが、どう聞いてても笑って話すようなことではない。

一応この世界に足を踏み入れたとはいえ、俺はまだ一般人だ。まだそんな刺激は要らない。


「まあそんなわけだよ。曳舟数実は何らかのことがあって、宝石をもって逃げる事が不可能になった。そこで彼女は咄嗟に近くにいた野良猫に宝石を託した。でも彼女は思った。このまま逃げ回っていてもどうせ殺されるだろうと。だったらせめて、一矢報いたいと。そこで彼女は猫探しの依頼を僕ら、AMC石投事務所に依頼した。おそらくだけど、彼女は彼らに捕まった時、僕らの事務所に行った事を話したんだろうね。そして殺された。残された大蔵のところは、宝石の唯一の手がかりである僕らに話を聞くしかない。けれどあの人たち僕らのことだいっきらいだからね。話を聞いたらすぐに殺すんだろうな。今日の朝のニュース見たいのが、明日の朝も流れるんだよきっと。」


俺の頭の中には、今日の朝見たニュースのキャスターが「またまた不審死!事務所に4人の死体を発見」といったテロップが入ったニュースを読んでいる姿が浮かんだ。

縁起でもない、と頭を強く振った。そうだ、そんな簡単に殺されてたまるか。


「何かアイディア、あるんですよね?」


俺がそういうと、所長はとびっきり嫌な笑みを浮かべて笑った。


「じゃなきゃ面白くないでしょ。僕は殺すのも殺されるのも嫌いなんだ。ましてや4流なんかにね。」

「ですねえ。久しぶりに、面白くなりそうですね。」

「・・・・・・。」

「それに。」

「それに?」


「そろそろあちらさんが仕掛けてくる頃だよ。」



その時だった。

こんこん、とドアのノック音が部屋中に響き渡った。


「どーぞ。鍵なんてかかってないから入りなよ。」


所長がそういったと同時に、きいい、と古臭い音がして扉が開けられた。

俺は内心かなりどきどきしていた。俺の想像では、ここで大量の男が部屋へ押し入り、銃や刃物を突き付けてくるような、そんなことを思っていたのだ。(我ながらドラマの見すぎだと思う)

だが、そんな俺の想像は簡単に打ち砕かれた。



入ってきたのは1人の女性だった。

黒のスーツに身を包み、黒のヒール(結構高い)を履かなくても十分高くすらっとしたスタイル。

髪は黒のショートで、顔にはこれまた黒の縁取りの眼鏡。

そしてその顔は、俺たちが先ほどまで話題にしていたあの顔。曳舟数実と似ている顔。



「はじめまして、ね。曳舟沃実よ。よろしくね、石投命さん。」

「よろしくね、沃実ちゃん。」


口調は丁寧だが、俺からみた彼女は、「氷」のようだった。

口元は笑っていても、目は笑っていない。その目は、恐ろしく冷たい目だった。


「けど1人?ボディーガードはよかったの?」

「今日はそんな物騒な事を話しに来たわけじゃないもの。あくまでも、私はお話ししに来ただけなの。よくって?」

「いいよー。まあ座り話もなんだからずっと立っててよね。あ、お茶いる?」

「結構よ。何入れられるかわかったものじゃないから。」

「安心してよーうちに毒はないからー。」

「さあ、どうかしら。」

「あはははははははははは。」

「うふふふふふふふふふふ。」


・・・・・怖い。


「じゃあ、一つだけ聞くわ。何を知ってる?」

「ド直球だねえ。たまには変化球でもつければいいのに。」

「私、曲がった事は嫌いなの。」

「猫だよ。黒猫。その首にエメラルドが付いてる。まだ僕らも探し出せていない。猫の写真ももらってないからどんなのかわからない。それだけ。ご質問は?」

「無いわ。そう、そうなの。ありがとう。」


くる、と向きを変え、彼女は帰ろうとした時だった。

その背中に、所長はもう一度話しかけたのだ。


「妹さんを殺された心境ってのはどうなの?」


曳舟沃実は振り返らずに、言った。


「イモウト、って何かしら。私は一人っ子よ。」


そしてそのまま、静かに扉は閉められた。


****************************************:


怖かった。お化け屋敷よりも、ジェットコースターよりも、俺の母親よりも。

あの女は、何の感情も持っていない。

妹が殺されても、それはあの人にとって、なんともない事なんだ。


「・・・・さてと。じゃあ、こちらも動こうか。」


所長は立ち上がり、ほかの2人も立ち上がる。慌てて俺も考え事を止め、立ち上がった。


「彼らにはヒントを与えてあげたことだし、僕らも猫を探しに行くよ。僕と千種で猫探し、隼と一里はここで待機。何が起こるかわからないから、事務所を守っててちょうだい。」

「かしこまりました。」

「・・・・・・。」

「俺が、猫探すんですか?」


正直言って俺が一番役に立たないと思うのだが・・・・。

まあ事務所に待機していて敵が来てもやっつけられる自信もないしな・・・・。



「千種と僕なら大丈夫だよ。さあ、レッツゴーの前に・・・着替えてくるから10分待機ね。」


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