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22/22

究極の絵日記

夏休みが終わる

確か40日ぐらいあったはずだ。

なぜこんなに早く終わりを迎えるのだろう。

私は焦りを感じている。

なぜだかわかる人もいるだろう。

宿題が全然終わっていない。

自由工作に何を作ろうか?

計算ドリルも全然だ。

読書感想文は後書きを見て書けばいい。

 漢字の書き取りはひらがなを混ぜて書く。

もはや(漢字の)とは言えないしろものだ。

 真面目にやったのは、ラジオ体操のハンコもらうことぐらいだ。

 自由研究はそこら辺で引っこ抜いた植物を乾燥させているのでそれを画用紙にちょっと絵を描いて、セロテープで貼ってお茶を濁す。

 これが始業式3日前の状態である。

突然の腹痛で2日ぐらいは伸ばせそうな気がする。あと熱を出すのもいい。

 熱測りを両手で挟んで、火を起こすみたいに擦ると摩擦熱で一気に40度超える。

 それをちょっと振っていい塩梅にする。

そして、息を止め力むと顔が真っ赤になる。

 そして、おもむろに「熱があるみたい」

そう言って、何度勝利を勝ち取ったことか。

 私のずる休みへの情熱は、とどまることを知らなかった。

 私は夜1時2時まで、部屋の明かりをつけ、自分のだらしない生活への辻褄合わせに翻弄していた。

 ガラス窓に時折コンコン当たってくる奴がいる。

 これは多分セミだ。バタバタはばたく音もする。

 もうすぐ君たちも終わりに近づいているね。

 そう哀悼の意を捧げずにはいられなかった。そんな蝉のことを思っている暇などない。私自身が夏祭りならぬ血祭りだ。また勤勉な私の邪魔をしに来たのがいる。ガラスにバギッガギッ衝突音がした。

そう、カブトムシのメスまたはオスもしくはクワガタ。夏の終わりに1番多いのは、カブトムシのメス、中盤あたりでは、ミヤマクワガタがよく飛んでくる。

その音がすると、私はすかさず虫が入るのも構わずに、窓を開けて、2階の屋根瓦の上に落ちているはずのカブトムシをクワガタを探すのである。

当然、部屋の中は、無視できないほどの虫の大群。

そこで飛び出す金鳥の夏

ここで気をつけて欲しいことがある。噴射口を絶対に自分に向けないでいただきたい。私は以前クスサンだと思われる巨大蛾がカブトムシのせいで、部屋に突入してきたことがある。さすがに怖くて焦った。私は蛾を警戒しながら横目でおもむろに掴んだそのひんやりした質感の鶏の顔が書いてあるバスタービームの缶、その噴射口を自分のほうに向けて噴射した。あのむせかえるような夏の香りがした。おっと!今は目の前の蛍光灯に渦を巻いている虫たちに人類の恐ろしさを思い知らせねばいけなかった。確実に噴射口を確認した。私は使いすぎない、できるだけ最小限で最大の効率を考える男だ。噴射時間を的確に的確な角度で任務を遂行した。(シューーー)2.5秒だ。小さい虫からくるくると回りながら、畳に落ちていく。布団の上に落ちられると、厄介なので、布団を剥ぎ取りマットレスだけにしておくのがコツだ。そうすると掃除機をかけやすいのだ。

今考えると、掃除機の吸引ホースを右手に持ち、左手には掃除機本体を持った。仁王立ちの男。これは後に映画で一世を風靡したゴーストバスターズを先取った私の姿だったのだ。そして静けさが戻った時に、

おもむろに掃除機のスイッチを入れ、大音量で掃除するのだ。母屋の二階には私しかいなかったので出来た荒技だった。普通なら、騒音苦情が出るのは明白だ。

そうしてすべての作業は終了してーーいない。

おい、おい、私は何をしているのだ。

こんなことをしている場合では無いのだ。

このままでは、始業式の日に私が掃除されてしまう。担任と言う名のスイーパーに。

何か忘れている気がする。とても大事な何かを。

わからない。とりあえず漢字の書き取りのようなひらがなの書き取りを行う。

心情的には漢字が多いページの間にひらがなのページをはさみ、その下に漢字が多いページでサンドイッチする。

昭和男子ならこの行動が何を示すかわかるだろう。

昭和の真面目な本の買い方の一例だ。

真面目な本の間にエロ本を挟み、また真面目な本で封印する。

そして、周りの目をごまかすのだ。

どこからこの話になったのだろう。

私はひらがなの書き取りをしていたはずなのに。


どうにか、ひらがなの書き取りを終えることができた。

計算ドリルも電卓を使えば何の事はなかった。この頃の電卓は結構大きかった。

グローブぐらいあったかな?祖父が持ってたんだ。

多分野菜の値段を計算してたんだろう。

私は残り時間で全部宿題が終わるかどうかを計算したいんだが。

計算はできていないが、少し休憩をしよう。ようやく先が見えた気がするような気がする。

(トントントントン)1階に降りて行く、祖父母用の少し小さい冷蔵庫を開ける。冷蔵庫の明かりがまぶしい。キンキンに冷えているキリンレモンがあるはずなのだ。

ない。なんでない?庫内の捜索が始まる。

アンデルセンのピープと言うおいしいカステラみたいなちょっと高級なものは見つけた。それもついでにゲットした。そして野菜室にキリンレモンは眠っていた。

私は、二階にたびたびキリンレモンを持って上がっていたので、祖母が「栓抜きをあげるけん、持って上がっときんさい」そう言って、キリンビールの名前の入った栓抜きをくれた。どこまでも麒麟に占領された家だった。

そして、キリンレモンの炭酸で脳を攪拌したその時に、体に電流が走った。

完全なる忘れ物だ。

絵日記を忘れてる。

ただの日記じゃない。

絵が入るのだ。

どこに置いたかすらわからなかった。絵日記のノートを探し当てた私は愕然とした。

真っ白だった。もしかして反対から書いているかもしれないと思って、逆さから見ても真っ白だった。

私はこれで全てを諦めた。

何日かして、私と3歳差の真ん中の弟の話を母親と祖母がしていた。母が「参観日行った時に担任の先生が空がつく言葉を挙げてください。て言ったんだよね。他の子たちは青空とか空色とかそういう感じに捉えてたみたいだけど、うちの子は空豆って

言ったんです。みんなも、先生も爆笑してた」そう言って笑っていたんだ。なるほど今度そういう質問が来たら使ってやろうとぼんやり思っていたのは覚えてる。その後母が「あの子の絵日記見てみます?」そう言って絵日記を持ってきた。祖母と、私と母でその絵日記を覗き込んだ。毎回なんか人間ぽいのが二人位書かれていて、地面は茶色の線、空は青い線が1本だけ引いてあった。

そして何かいろいろちょっとしたことが書いてあったと思うけど、一番印象的だったのは日記の部分で「今日、おにいさんが、うん、といったので、はい、といいました」素晴らしいコメントが書いてあった。

私はこれを超える究極のコメントを未だ見たことがない。 

絵日記を一度は諦めた彼だったが、そこから思い直した。やはり書こうと。

私は考えた。ページ数が多いからいけないのだと。昔のノートはホッチキスの針で止めてあった。私は、そのホッチキスの針を丁寧に爪で引き起こした。

そこから半分ぐらい紙を抜いた。

そして、ノートを持ち上げてみるとペラッペラだった。

これはすぐばれてしまう。そう思った私は抜いたものの半分ほど戻した。

そして、ホッチキスの針を元の位置に戻すと、そこから私の夏休みは始まった。

私は一生懸命書いたよ。あらゆる架空の遊びを一心不乱に描いた。ふと、私は気づく。日付はどうするんだ!普通に書いていたのでは辻褄が合わなくなってくる。そんな私は画期的な方法を考えた。例えば2と3だ。小さい字でシャッ!と汚く書けば、多分わからないだろう。どういうことかと言うと8月2日、次の日は、8月3日、その次の日は8月2日、そしてもう一度8月3日だ

そのように、過去の未来を行きつ戻りつしながら彼は夏休みを堪能した。最後のほうはかなりどうでも良くなった。クオリティーが下がったと言うことだ。それが悲劇を招くことを彼は知らない。それと自由工作はどこだ。

私は素晴らしく前衛芸術の先端を走った。

用意するものは、ティッシュペーパー、数枚、水、トイレットペーパーの芯、たったこれだけだ。

まず、ティッシュペーパーを水に浸す。

そして、1部はそのままでトイレットペーパーの芯に巻いていく。入り口と出口のあたりは入念に巻く。他の部分と段差をつけるんだ。そして少し細かく切った濡れたティッシュをその周りにくるくると巻きつけていく。入り口と出口を指でつまんで段差をきれいに整形するとーー

ジャイアンが泣いて喜ぶ土管の完成だ。

これで全ては揃ったもう何も思い残す事は無い。私は安らかな眠りについた。

夏休みも終わり、学校が始まった。

提出物の提出が終わった。

みんなの工作と、私の前衛芸術は教室の後ろの下駄箱の上に飾られることになった。

先生から呼ばれた。先生は、私の漢字の書き取り、いや、ひらがなの書き取りを見て「日狩君、これは漢字の書き取りとは言えないよ」

次は、絵日記についてだった。「ページ数も少ないようだし、同じ日付が何度も出てくるのは、なぜ」私が答えれずにいると、「こんなに悪知恵を働かせるんなら、普通に書いたらどう」

ぐうの音も出ない。私の敗北だ。

それと土管だが、乾燥して軽くなった分、風に吹かれて下駄箱から再々落ちるようになっていた。ある日と見ると、セロテープで止められていた。

展示が終わった後、持って帰れと言うので、前衛芸術を持って帰った。

そして、ゴミ箱に捨てた。

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