やさしい天使の作り方
僕には足がない。
生まれた時からないんだ。
どうして?って。
神様がくれなかったからだよ。
君は不幸になりなさいってね。
僕は10歳になった。
僕がもらった不幸は足がない事だけじゃない。
どうやら命も他の人より少なくしか貰えなかったようだ。
そして、どうやら今日で終わるようだ。
僕はとても不幸だ。
みんながそう教えてくれる。
僕はとても、とても不幸なんだ。
今、僕は祈っている。
早く時間が過ぎてくれ、と。
一刻も早く死んでしまいたいのだ。
お母さんは僕の手を握っている。
お父さんのしかめっ面は、いつもの事だね。
学校の先生は泣いてる。
僕はね、友達が多いんだよ。
ほら、歌が聞こえる。
病院だからさあ、静かにして欲しいんだけどね。
でも僕の好きな歌だから許しちゃおう。
みんなが教えてくれるんだ。
僕は不幸だ、ってね。
こんなにも幸せなのにね。
お母さんと、お父さんと、先生と、みんなと、
沢山、写真を撮ったんだ。
時間よ止まれ、って写真を撮ったんだ。
だけどさ、今は止まって欲しくないんだ。
みんな悲しそうだから。
だからさ、早く時間が過ぎて欲しいんだよ。
あっ、写真を一枚持って行っていいかな。
とても、お気に入りのやつなんだ。
僕が真ん中に映っててさ、お母さんと、お父さんが僕の両側から肩に手を置いてさ、先生やみんなと手を繋いでる写真なんだけどね。
なんだか、僕の肩から羽が生えてるみたいでさ。恥ずかしいけどとても好きなんだ。
足はないけどさ、みんなが羽になってくれてるから、どこにでも行けると思ったよ。
そうだ、神様。
みんなにも羽をあげてよ。
みんなきっと似合うから。
僕の足と命の分、余裕があるでしょ。
みんな天使みたいに優しいからさ、とっても似合うと思うんだ。
約束だよ。




