第7話「味方と敵」(2)
自習室が使えなくなった。リーゼが入ろうとすると、いつも「満席」だと言われる。中を覗けば空席があるのに。
寮の自室で勉強しようとすれば、隣室から壁を叩く音が夜通し続いた。
授業のノートを貸してくれる生徒もいなくなった。
じわじわと、確実に、勉強する手段が奪われていく。
それでもリーゼは諦めなかった。中庭のベンチで勉強し、早朝に起きて勉強した。日に日に目の下の隈が濃くなった。
「おい白龍ちゃん、お前いつ寝てんの?」
カイルが昼休みに声をかけてきた。
「寝てますよ。ちゃんと」
「嘘つけ。顔色最悪じゃん。ほら、これ食え」
焼き菓子を差し出され、断ろうとしたリーゼの腕をカイルが掴んだ。
「いいから来い」
連れて行かれたのは、本館裏手の小さなテラスだった。テーブルが二つだけの、ほとんど知られていない場所。
「ここ、四龍の裏メシ処。俺が混む食堂嫌な時に使ってんの。ここなら誰も来ない」
テーブルには二人分の食事が並んでいた。肉料理、サラダ、スープ、パン、デザートまで。
「厨房のおばちゃんに頼んどいた。白龍ちゃん、ろくに食ってないだろうなと思ってさ」
リーゼは椅子に座った。温かい食事だった。ここ数日、冷たいパンしか食べていなかった。
スープを一口飲んだ。温かさが体に染み渡って、危うく涙が出そうになった。
「美味いだろ。ここの厨房のおばちゃん、元は王宮の料理人なんだぜ」
「……美味しいです」
「だろー。あ、デザートのプリンは絶品だから最後まで取っとけよ」
カイルの軽い口調が心地よかった。そして不意に、蒼い瞳が真剣になった。
「一つだけ言っとく。一人で全部抱え込むなよ。助けてって言えるのも強さだぞ」
それだけ言って、またにかっと笑った。
「じゃ、俺行くわ。白龍ちゃんも早く食えよー」
去っていくカイルの背中を見送りながら、リーゼは思った。
カイルの手は、温かかった。




