第6話 「味方と敵」(1)
異変に気づいたのは、中間考査の二週間前だった。
図書室の参考書がなくなっていた。
リーゼがいつも使っていた棚――龍騎学と龍化理論の参考書が並ぶ一角が、ごっそりと空になっていた。アレクシスが貸出手続きを手伝ってくれた本も、貸出期限前に「上位貴族からの優先返却要請」という聞いたこともない制度で回収されていた。
「おかしいな。そんな制度、僕も初めて聞いた」
アレクシスが眉をひそめた。昼休みの図書室。いつもの窓辺で、二人は空っぽの書架を前にしていた。
「調べてみるよ。司書に聞けば――」
「いえ、大丈夫です。アレクシス様にこれ以上ご迷惑をおかけするわけには」
「迷惑じゃないよ」
「迷惑です。わたしと親しくしているだけで、アレクシス様にまで変な噂が立っています」
アレクシスは一瞬きょとんとして、それから静かに笑った。
「僕は侯爵家の次男だよ。家を継ぐのは兄で、僕は自由にやっていいと言われている。噂なんて気にしない」
琥珀色の瞳が、真っ直ぐにリーゼを見た。
「僕がきみの隣にいるのは、僕が好きでそうしているんだ。誰かに強制されたわけでも、同情でもない」
リーゼは言葉に詰まった。この人はいつもそうだ。穏やかに、けれど揺るぎなく、まっすぐなことを言う。
「……ありがとうございます」
「お礼はいいから、一緒に対策を考えよう。僕の私物を貸すよ。実家から取り寄せる。さすがにそれは回収できないからね」
アレクシスがいたずらっぽく笑った。
だが、妨害は参考書だけにとどまらなかった。




