第三話:次の行動
朝は幽霊のように忍び寄ってきた。
壊れた窓から差し込む光は、現実のものとは思えなかった。ただの薄い模倣品だ。
体中が痛み、頭は重く、喉は焼けつくように荒れていた。
ほとんど眠れていない。
ベッドの横の床に座り込み、自分の手を見つめる。
まだ震えていた。
長い間、床を見つめ続けた。
小さな息が漏れる。ぎこちなく、震えた――半分は笑い、半分は咳のような音。
もう一度。
さらにもう一度。
そして突然、笑っていた。
本当に、大声で。制御不能なほどに。
体が痙攣する。涙が溢れ、肺が焼け、胸が痛む。それでも止まらなかった。
ただ、笑いが流れ続けた。
痛み――罪悪感、頭の中で叫び続ける声――それらが少しずつ薄れていった。
軽くなった気がした。空っぽだが、静かだった。まるで、内側の雑音がすべて消し去られたように。
思わず、ほんの少しだけ笑顔になりそうになった。
もしかしたら、これがやり方なのかもしれない。
もしかしたら、こうやって生き続けるのかもしれない――
痛みが自分を見失うまで、笑い続ける。
泣いて自分を臆病者のように感じ、笑って正気――あるいはその残骸――に戻った後、俺はこの場所を片付けることにした。
俺の新しい住処。人里離れた、放棄された屋敷だ。
俺は九体のゴーレムを創り出した。
小さく、石でできていて、驚くほど活発だった。
形を与えた後、俺はただ一つの命令を下した。
「屋敷を掃除しろ。終わったら、消えていい。安らかに休め」
彼らは迷いなく了承した。
それはシステムのおかげだろう。
あれがなければ、俺は今も埃と口論していたに違いない。
彼らの動きを見ながら、思った。
一人だったら、どれほど時間がかかっただろうか。
――きっと、永遠に。
その時、ふと気づいた。
俺はシステムのことを何も知らない。
ただそこにある。話しかけてくる。導き、救ってくる。
思考の中に。心の奥に。
――そこに属しているようで、属してはいけない声。
「なあ、システム」
俺はゴーレムを見つめながら言った。
「お前は……何だ?」
《結論:私はあなたの能力を管理・統括する内部システムです》
「それだけとは思えないな」
《肯定》
「お、こいつ、煽りもできるのか」
俺は口元に笑みを浮かべた。
椅子に深くもたれ、ひび割れた天井を見上げる。
「少なくとも二か月は訓練だな。
また無茶をする前に」
《結論:二か月の集中的な訓練により、著しい成長が見込まれます》
そうして、次の二か月を過ごした。
血を流し、汗を流し、壊れては、作り直した。
すべてが終わった時、俺は屋敷の外に立ち、世界を見渡していた。
「泣くのも、燃えるのも乗り越えた。次は基本だ」
「一つ目――服。ちゃんとした服が必要だ。
できる人間に見える服」
《一。了解》
「二つ目――食料。葉っぱを食って生き延びてるフリはもう飽きた。
三つ目は……」
屋敷を振り返る。
「この場所を維持してくれる人間。
でもそれは最後でいい。今は気にすることじゃない」
久しぶりに、少しだけ安定していると感じた。
《結論:習得した技能を試す時です》
「お?」
「何かあるのか……」
《結論:資本獲得が目的である場合、想定支出に基づき、多額の資金が必要です。
推奨行動:冥界下層に存在する指定財宝施設へ向かってください》
「……悪魔?
本物の悪魔と戦えって?」
《肯定》
「ちょっと待て! 冥界って――」
《肯定。実技試験だと考えてください》
俺は空を見上げた。
「ソウル・テザー」
そう囁き、スキルを起動する。
衝撃は即座に来た。
中毒的で、麻薬のようだった。
すべてが研ぎ澄まされる。
音が鮮明に、心臓は落ち着き、恐怖は消え、集中だけが残る。
「シフト」
《結論:転移成功》
一瞬だった。
瞬きをする前に、俺はそこにいた。
――冥界――
本当に、冥界だった。
宝を守る悪魔が三体。
女が二人、男が一人。
見た目は不気味なほど人間に近い。
彼らは俺を見るなり、歪んだ笑みを浮かべた。
「人間?
しかも普通の? こんなところで?」
一人が嘲笑した。
「何しに来たのよ、人間?」
女の悪魔が言う。
「迷子の魂じゃない?」
醜い男が首を傾げた。
「ママが夢から起こし忘れたのか?」
俺は無言で立っていた。
笑い声が響く。鋭く、不快な音。
本来なら恐怖を感じるはずだった。
だが、何も感じなかった。
ガラス越しに見ているような感覚。
彼らを観察した。
指の動き、視線の逸れ、無意識の一歩。
すべてが示していた。
――慢心。
武器はない。
剣も短剣も、石一つない。
あるのは、この体と両手だけ。
決めた。
素手でも、殺す。
軽く見る余裕はない。
殺意を抱いた以上、迅速に終わらせる。
早く殺して、すぐ離脱。
それが計画だった。
面白いことに――
彼らは俺を見誤った。
人間だと判断し、獲物だと決めつけた。
その傲慢さに、感謝した。
完璧な隙を与えてくれたからだ。
「名前は?」
女の悪魔が聞いた。
三人の中で、リーダー格らしい。
俺は黙ったまま見返す。
彼女は首を傾げ、薄く笑った。
「無言? 無礼ね」
優雅な仕草で他の二人を示す。
「私はヴェクサ。
こっちがリリ。
あっちの馬鹿がドロク」
ドロクと呼ばれた男が、狂気を含んだ笑い声を上げた。
リリはため息をつくだけだった。
「で?」
ヴェクサが促す。
「……ヒューバート」
「へえ、ヒューバート」
彼女の声は柔らかくなったが、目は笑っていない。
「目的は分かってる。宝でしょう?
残念だけど、私たちは命令で守ってるの」
微笑みが広がる。
「だから、あなたはここで死ぬ」
ドロクが再び笑い、指を鳴らす。
リリが前に出た。
一瞬、互いを測る。
最初に血を流すのは、どちらか。
――リリが先に動いた。
短剣が閃く。
予想以上に速い。
俺はその腕を掴んだ。
骨が軋む感触。
ひねる。
乾いた木が折れるような音。
悲鳴。
短剣が落ちる。
躊躇はしなかった。
襟を掴み、頭を壁に叩きつける。
ヴェクサはすでに動いていた。
落ち着いた足運び。冷静な目。
――危険なタイプ。
俺は彼女が読む前に突っ込んだ。
彼女は完璧に防いだ。
次の一撃で、爪が黒く変形し、前腕を裂いた。
肉が裂け、血が飛ぶ。
だが、傷はすぐに塞がった。
皮膚が泡立ち、再生する。
彼女の手が光り、鱗に覆われる。
ドラゴンのような硬質さ。
だが、使わせなかった。
潜り込み、背後へ。
首を掴み、捻る。
鈍い音。
ヴェクサの体が倒れる。
――だが。
骨が再配置される。
首が、あり得ない角度から元に戻った。
時間はない。
俺はドロクへ跳んだ。
彼は笑っていた。
手には炎が絡みつく。
拳が頬を掠め、熱が走る。
無視した。
肋に拳を叩き込み、何かが砕ける。
何度も殴る。
血が噴き、胸を染める。
彼は折れた腕でも振り続けた。
煙が晴れた時、分かっていた。
――最初に殺すのは、こいつだ。
三体同時に襲いかかる。
爪、炎、刃。
武器が必要だった。
俺はヴェクサを掴み、腕を引きちぎった。
躊躇はない。
そのままクラブのように振り、ドロクの首へ叩き込む。
衝撃で裂ける。
首が転がり、目を見開いたまま。
残りは二体。
「システム」
「この手をコピーしろ」
一瞬で――
《処理完了》
右手に同じ鱗が広がる。
黒く、鈍く光る。
ヴェクサが悲鳴を上げた。
「なんなのよ、こいつ!」
リリが後ずさる。
「間違ってた……!
こいつ、普通じゃない!」
俺は爪を上げ、とどめを刺そうとした。
その時――
必死な叫びが響いた。
「待って! お願い!」
ヴェクサが叫び、膝をつく。
「もう分かったでしょう!
全部持っていって! お願い!」
声が震える。
「私たちは……死ぬ。
あの人――ファルドラム様に殺される!」
リリの短剣が床に落ちた。
「お願い……連れて行って」
恐怖に見開かれた目。
「何でもする。忠誠を誓う。
だから――!」




