第11話 この気持ちは何だ
「おかえりなさいませ、ヒューバート様」とルキウスが言った。
「楽しめましたか?」
「おお――やあ、みんな」と私は返した。
「寝ることにするよ」
私は彼らの横を何も言わずに通り過ぎた。
「よほど疲れているに違いないな」とルシアンが言った。
『楽しめましたか?』という考えが、ルキウスの頭に残った。
しばらくして、屋敷はゆっくりと静まり返った。
一人また一人とランプが消され、遠くの廊下で足音が薄れていき、やがて使用人の囁きすらも消え、屋敷にはただ静かな呼吸だけが残った。
朝が来た。
私は鋭く息を吸い込みながら目を覚ました。
全身は汗でべったりと濡れ、まるで眠りからではなく水中から引き上げられたかのようだった。
心臓はまだ速く打ち、指はシーツを握りしめ、天井を見つめた。
――夢か……
夢自体はすでに消え去っていた。
掴もうとした瞬間に粉々になり、手の届かないところへ散らばってしまった。
映像も声もない。ただの空白。
しかし、胸に残る感覚は頑固に張り付いており、重く、不穏で、解読できない警告のようだった。
私はベッドから体を起こし、顔を洗った。
冷たい水も残る緊張を和らげるには十分ではなかった。
着替えを済ませ、部屋を出て廊下へと向かった。
「おはようございます、ヒューバート様」
声が一斉に響いた。
振り返ると、双子のルシアンとルキウスが部屋の前に整列して立っていた。
ずっとそこにいたかのように見えた。
姿勢は真っ直ぐで、表情は整っており、目は鋭く注意深かった。
彼らが職務で待っていたのか、それとも何かを期待していたのかはわからなかった。
「おはよう、みんな」と私は答えた。
「さあ、朝食に行こう」と続けた。
「はい、すぐに」とルシアンが答えた。
テーブルに着くと、すでに皆が揃っていた。
リリが口を開いた。「ヒューバート様、早くお目覚めですね」
ヴェクサが続ける。「おはようございます、殿下」
「おはよう、みんな」
ミレイユの唇は、礼儀正しく薄く曲がっていた。
「なんてお優しいこと――まだそのような言葉を受けるに値しない下僕に」
『……彼女、どういうつもり?』
私は座り、食事を始めた。
食卓についたのは私とヴェクサ、リリだけだった。
ミレイユは座ったままだったが、皿には手をつけなかった。
セレスティーヌは椅子の後ろに立っていた。
双子は向かい側に立ち、カトラリーの音をすべて聞ける位置にいた。
『なぜ立っている?』
私はヴェクサに目をやり、笑おうとしたが、失敗した。
そして口を開いた。「料理は誰が作ったんだ?」
「ミレイユとセレスティーヌです」と彼女は答えた。
「今日作ることにこだわったのは彼女たちです」
『当然だな』
「そうか、素晴らしいな」私はミレイユに目を向けた。
「では、なぜ食べない? 料理はとても美味しいぞ」
「ご親切に感謝いたします、殿下」
『答えになっていない』
システムが私に告げる――平坦で感情のない声で。
《結論:敵意なし》
『嘘だ』
「お腹は空いていないのか?」私はセレスティーヌに尋ねた。
彼女は一瞬私を見つめすぎた。
「私たちは長時間食べずに過ごせます、殿下」
長すぎる。
「なるほど。それは吸血鬼の特性か?」
「悪魔の特性です」と彼女は答えた。
「ヴェクサとリリも同じことができます」
『そうか。悪魔か』
双子が同時に体をずらした。
私は周辺視でその動きを捉えた――鏡のように揃った動き、練習済み。
一人はささやくように身を寄せ、もう一人は笑みを浮かべて止まった。
彼らは見ている。
私は観察した。
セレスティーヌは石のように立っていた。
少し前まで、彼女は私を殺そうとしていた。
今は私のために料理を作っている。
ミレイユは落ち着き、冷静で、椅子はまるで彼女のものかのようだった。
そして双子――待っている。
何を待っているのかはわからなかった。
『悪魔を家に招き入れた』
『恐れているか?』
『いや』
十分に努力すれば勝てる。
私は無意識のうちに距離を測った。
ミレイユは手の届く距離。 一手で済む。
手が器具を握りしめた。
『まずい』
『悪魔は力を尊ぶ。私は力を示していない』
握りを緩め、前を向いて食べ続けた。
まだだ。
しかし、彼らに理解させる必要があった。
私は視線を上げ、ミレイユの目を見つめた。
必要以上に長く視線を保つようにした。
疑わしさを見せないよう最善を尽くし、抑えた。
すると、背後から手が伸び、肩を狙った。
見えなかったが、感覚で捉えた。
何かが弾けた。
視界が揺れ、意識が滑り――恐怖でもパニックでもなく――純粋な本能が支配した。
『これはもう私じゃない』
『触るな』
手を伸ばす前に反応した。
掴む。
私は手首を掴み、強く引き、攻撃者を前に引き寄せた。
背後にいたのはルキウスだった。
私はひねり、テーブルの上に投げ飛ばそうとした――しかし彼は私の手から消えた。
『ふふ……演技しておくか』ルキウスの思考。
「兄さん!」彼は叫んだ――恐怖ではなく、合図として。
「わかった」とルシアンは落ち着いて答えた。
ルキウスはすでに私の視界から消えていた。
彼に時間を使えない。
セレスティーヌが口を開く――明らかに混乱して。「殿下――」
距離が近すぎた。
私は彼女が言い終える前に平手打ちをした。
ルシアンは予想以上に速く動いた。
背後から私の腕を掴み、バランスを崩させ、私をミレイユの方へ投げた。
よし。
彼女はまだ混乱していた。
私は反応する前に彼女を掴んだ。
セレスティーヌは躊躇し、呆然と立ち尽くした。
しかしルシアンとルキウスは止まることなく、鋭く意図的に動いた。
彼らは射程内に入った。
頭がズキズキする中、私は命令を喉の奥で抑え込んだ。
「転移――」私はささやいた。
私、ミレイユ、ルシアン、ルキウスは屋敷から姿を消していた。
残されたのはセレスティーヌ、ヴェクサ、リリだけで、突然起きた混乱の原因が何だったのか、誰にも分からなかった。
沈黙を破ったのはセレスティーヌだった。
「……今の、何だったの?」
リリとヴェクサは不安そうに視線を交わしたが、どちらも答えを持っていなかった。
「……とりあえず、今は掃除でもしましょう」
ヴェクサは落ち着いた声を作ろうとしながら言った。
リリはヴェクサに手を伸ばした。
「ねえ、ヴェクサ……見て」
その手はわずかに震えていた。
「私、震えてる。……ヒューバート様って、本当に……怖い時があるから」
ぎこちなく笑った。
――屋敷から少し離れた山中――
「ミレイユ、あそこに座っていろ」
ルキウスは大きな岩を指さして言った。
「終わったら、詳しく説明する」
「説明なんていらないわ」
ミレイユは岩の方へ歩いて行き、腰を下ろした。
「もう何が起きてるか、大体分かってるもの」
「ケッ……」
ルキウスが小さく笑った。
「どれほどの間、ヒューバート様をお待たせするおつもりですか、ルキウス?」
ミレイユは岩の方へ歩いて行き、腰を下ろした。
「さて……ケッ」
もう一度、小さく笑う。
「それでは、進めてもよろしいでしょうか、我が主よ」
ルシアンは両手を背中に回し、静かに言った。
私は彼を見つめた。
……返事はない。
そして――
私は、先に跳んだ。




