プリンないのか
世界は順調に滅んでいた。
大蜥蜴が望んだように生き物達は人間を襲い、超エッチな女の体みたいなのが望んだように電波や音波が乱れ、セクハラする木が望んだように植物はすくすくと育ち、氷が望んだように凍りつく大地があり、火柱が望んだように火山が噴火したりした。
こうなるともうヤクザも公務員も研究者もあったもんじゃねえ。
生きるために生きることができるやつだけが生き延びられる。
「相楽さん、窓閉めてくださいよ。寒いです。」
どこからか手に入れたハイエースを運転する京也が言った。
「あー、うん。」
俺は窓を閉める。
こうなると、暴力が上手な俺には有利な世界だった。廃墟になってるスーパーやホームセンターから必要な物を手に入れ、奪ってこようとする奴はぶっ殺し、邪魔な物は破壊する。
多くの人が多くのものを失っていて、気持ちや感情が揺さぶられたことだろう。でも俺は元々人よりそう言うのものが少ないから、揺さぶられるものもなく結構楽しくやっていた。
「そろそろ飯にしますか?」
京也が廃墟になってるファミレスに車を乗り入れた。京也は甲斐甲斐しく俺の面倒を見ていた。
「なあ?お前、こんな世界になっちゃったけどいいの?大学まで出てて頭なんかも良くて。」
「言いましたよね?相楽さんは俺の推しで、相楽さんに幸せであってほしい、心も体も傷ついてほしくないって。」
「あー…うちわ振るやつ。」
「だからそれはしませんって。相楽さんが幸せで心も体も健康なら俺はそれでいいんです。」
「ふーん…頭いい奴の考えは俺にゃわかんねえなあ。まあ変な事してこないなら俺はいいけどな。」
多分このまま世界は滅んで人間はいなくなる。創造主も俺が殺しちまった。その時には俺も死んでるだろう。その先はどうなるか知らない。願い通り滅ぶことができて、満足した世界がやり直すかもしれない。その時には、俺はまた終焉回避システムになってしまうかもしれない。
「相楽さん、パスタできましたよー。」
京也が俺に呼びかけてる。
「プリンないのか。」
「あるわけないでしょ。あっても腐ってますよ。」
難しいことはどうでもいいや。俺が考えてもどうにもならんし。プリンが食べられないのだけが心残りだなあ。




