残念、お宅です
「俺らのシマでおいたしてる半グレがいてさ。」
梶さんが爪を磨きながら言う。梶さんはそういうところに気が回るからモテるんだよな。
「はあ。」
「アジト見つけたから潰しといて欲しいんだわ。」
「はい。」
「あれ?いつもの子は?何だっけ?京介だっけか?」
「京也っす。あいつは…あの、今インフルでへばってて。」
昨日のことを思い出してゾワっとする。本当に箱のせいなのか?それとも俺のことが…そう言う好きなのか…馬鹿な俺には全く判断ができず、今後どうしていくか考えてないが、この場は適当にごまかすことにした。
「そーなの?うちの若えの付けようか?あの子ほど綺麗に掃除できないけど…。」
「いや、大丈夫っす。あざっす。」
いつ変身しちゃうかわからんのに誰かつけるわけにはいかない。まあ、四年前まで掃除までてめえでやってたし一人でいけんだろ。
運良く雨。
それも結構な豪雨ときてる。
こういう日はやりやすい。
俺は黒のカッパだけを着て、ウーバーイーツのカバンを背負って自転車で半グレのアジトに行った。
相手も反社会的なやつだと都合がいい。なんせ今のご時勢、どこに行っても防犯カメラがあるからな。すぐに足なんか着いちまう。その点、相手も反社会的なやつだと防犯カメラのないところにアジトを構えてくれるから、俺は何も心配しないで正面玄関から入って行ける。
「こんちゃーす。ウーバーイーツっす。」
マヌケな声を出して呼び鈴を押すと、いかにもいかにもなやつが細くドアを開けて凄んでくる。
「あぁ?うちじゃねーぞ?」
「残念、お宅です。」
俺は持ってたナイフをいかにもなやつの喉に突き立てた。いかにもなやつは魚みてーに口を開けたが声は出ず、そん代わり血がゴボゴボ吹き出して来た。ビクビク動いてて気持ち悪いから、そのまま横に引いて動脈を切った。動脈の血は元気だから噴水のようにびゅーびゅー吹き出した。俺は部屋に押し入り、ドアを閉め鍵をかけた。
だだっ広いワンルームの部屋の中には6人いる。座ってる奴が4人、立ってスマホでなんかしてる奴が1人、缶コーヒー飲んでる奴が1人。部屋の真ん中に灰色のつまんねー机が7つくっつけて置いてあって電話やスマホがわんさか乗ってる。オレオレ詐欺とかやってんのか?まあ俺にはどうでもいい。梶さんの指示は潰せだから、そういうのもぶっ壊すだけの話だ。
「おいっ!?てめえどこのもんだ?!」
6人が一斉にこっちを向いて、12個の目が俺を見た。
「どうも。ヤクザです。」
言うなり、俺はナイフの柄で電気のスイッチを叩き壊した。部屋は真っ暗になる。
「くそっ!どこだ?!」
「電気つけろ!」
俺はカッパのフードの下から暗視ゴーグルを引き下げた。インターネットで買ったやつだが、半グレ達が右往左往してるのがよく見える。スマホでなんかやってた奴がスマホのライトをつけてこっちを照らしている。まずい、目が焼ける。俺は暗視ゴーグルを首まで下ろし、身を低くしてそいつにタックルした。
「うわっ!」
頭でも打ったのか、ゴンッと鈍い音がした。スマホはツーッと床を滑って行った。俺は倒れた奴に馬乗りになり、首を掻っ捌いた。またも血の噴水。残りの5人も今殺した奴から叡智を受けたのか机の上のスマホをガサガサやっている。めんどくせえから叡智を与えた奴の死体の頭を持って机に投げつけたら千切れて体だけ飛んでった。
「ひぃっ!ひああああっ!」
5人は机から離れ、点でんばらばらに散らばってった。まあ効果はあったからいいや。
持ち主が死んでも、床を滑って行ったスマホはライトを光らせているので踏んづけてぶち壊し、俺はまた暗視ゴーグルをつけた。何も見えなくなった5人はまた右往左往している。俺は手に残った死体の頭を投げた。右往左往が一斉にそっちを向く。
「ちくしょう…どこだ?どこにいる?」
「おい!誰かそっち見…がっ!あっ!」
一番手近にいた大口開けて騒いでる奴の背後から近づき、首をナイフで切り裂く。後4人。
パンッ!
発砲音がして、肩に痛みが走った。
「バカ!チャカはやめろ!サツ呼ばれんだろうが!」
そうだそうだ!と思いながら、弾の来た方向に走り、チャカ持ってオロオロしてるやつにタックルした。そのまま馬乗りになりチャカを奪い、喉の奥まで突っ込んだ。死の恐怖からか逆襲なのかはわからんが、手に歯の圧力を感じたが、構わず引き金を引いた。床に血と脳みそが飛び散り、じわじわと広がった。残り3人。口から手を引き抜いたら手に噛み傷ができていた。
暗視スコープを通して見ても姿が見えない。どこに隠れた?部屋はワンルームだ。隠れるにしてもたかが知れてる。サッと見回すと細く光る壁がある。壁じゃなくてドアだ。俺は暗視ゴーグルを首まで下げ、光っているドアに向かった。
「はっ…早く!早くしろ!」
「開かない!」
「お前っ手ぇ震えてっからだよぉ!代われ!」
残った3人が逃げようとしてトイレの窓を開けようとしていた。
「来た!ひぃ!」
馬鹿だなあ。俺と同じくらい馬鹿だ。俺の体はでかいから出入り口が一つしかない狭い袋小路に逃げ込んだら逃げ場はないのに。俺は一番手近な奴の髪を掴んで右目にナイフを刺した。目玉が水風船みたいに割れる感触。他の2人にも血が飛び散り、わーぎゃーと叫ぶ。狭いところだから耳にキーンと突き刺さる。うるせえな。2人の頭を掴んで何度も壁に打ちつけた。最初にぎゃっと短い悲鳴をあげた後はゴッとかガッとかしか言わなくなり、最後には無言でぐんにゃりと脱力した。死んだと思うけど念の為ナイフで刺したら、びくんと体が動き、それきり動かなくなった。
終わった。
俺はカッパを脱ぎ捨て、ウーバーイーツのカバンからガソリンを出して部屋中に撒いた。部屋を出しなに火をつけ、持って来た綺麗なカッパに着替え、自転車に乗った。ほらな?1人でも何とかなる。
しかし、そうとも言えなかった。体が泥のように重い。
「やっぱ40近えとキツいな、これは。」




