ご紹介頂きまして誠にありがとう御座います
「ただ? 何か条件があるんですか?」
「はい、正直申し上げまして今の我々の力ではどうにもなりません。が、一つ条件をクリアして頂ければお役に立てるかと」
「我々の力の源である【ネガティブ因子】を補給出来ましたら或いは」
「??? 何でしたっけ?悪魔のエネルギーと言うかご飯と言うかそんな感じでしたっけ?」
「左様で御座います。シチュエーションは様々ですが今回ですと翔平様の復讐心などドス黒い感情が満たされた時などに産まれる黒い満足感が我々の糧となり、より強い力を使える様になります」
「だったらアイツらをボコればいいんですか?」
「はい、それも有りますがもう一つ。肉体の再構築を行うには神か悪魔の力を必要とします。なので翔平様同様に悪魔との契約が不可欠です。出来ればその辺りの事を翔平様からガヤルド様に言ってもらえれば」
・・・なるほど、それは難しい。
いくらガヤルドの足が戻るからと言っても流石に【悪魔との契約】はそう簡単に決めれる事では
(あっ♡) パンパンパンパン
・・・なんかもう決めれた様だ。
その後アスモデウス支部長から契約内容と注意事項の申し送りが有り契約書にサイン。ガヤルドはあんまり何も考えてないのか話がポンポン進む。
今回の契約も俺と同様に【眷属契約】となり俺と同格の扱いらしい。その後俺達が信者を配下に置くのは【隷属契約】でその場合、自信の支配下の者で有ればスキルツリーを弄れるらしい。支配下でもない場合は相手の粘膜に触れさえすればスキルツリーを確認出来るので、あの時ガヤルドの怪我(体内、粘膜)に触れたのでスキルツリーが見えたってワケだ。
「なぁ、お前良かったのか悪魔との契約なんて」
「あん? オメェも契約してんだろ?」
コイツはその辺本当にテキトーなヤツだ。まぁそれが良いところでもあるんだけど。
「足が生えるかもしれないし力も貰えんだろ?それによ、あんな良い女を前にして我慢出来るかよw」
「ホントそれなw」
その後未使用のソウルポイントを使いガヤルドのスキルツリーを解放、悪魔の眷属ボーナスで新たな派生が誕生しさらに解放していく。
ガヤルドは元々【土属性】を持っていて眷属ボーナスで属性強化され【鉄属性】にグレードUPした。
そしてガヤルドの頭に闘牛っぽい強そうな角が生えた。
「おいショウ!見ろよこれ!どうよ!?」
「おぉ、強そうでカッケェじゃん!」
良かった、足を失って強がってはいたが相当に凹んでいたのは見て取れた。今は何とか元気に笑ってくれているのが本当に嬉しい。それと同時に俺をボコリ、ガヤルドの足を奪ったトカーツって野郎は絶対許さねぇ。
「翔平様、これで準備は整いました。後は復讐を果たすのみです」
「ショウ!頼んだぞ!」
「任せとけ!!!」
——2週間後——
準備は整った。今回はアスモデウス支部長とメリッサさんにもお手伝いをお願いした。ここ半年でそこそこ経験も積み魔獣も結構食べた。槍も覚え潜在魔力も上がり少しだけ魔法も使える様になったが正直本物の冒険者にはまだ勝てないと思う。暗殺やハメ殺しも考えたが心から泣くほど悔しい思いをして死んで欲しい。そうしないと俺の心は晴れない。
俺の為、ガヤルドの為、その為2週間も下調べや準備を要した。
ここはドラゴニア帝国北西の最端部、北西の城門を守るトカーツ男爵の土地だ、目立った産業も無くただのド田舎で領民もほぼ居ない。統治による税収はほぼ皆無。城門の守備のみがお役目だが地理的に攻められる地形では無い為ほぼ伝令役として常駐させられている。なので給金は雀の涙程度、それではやっていけないのでトカーツ2世は冒険者の二足の草鞋を履いている。残りの3人は近くに住む領民だ。つまりトカーツ男爵と領民が今回のターゲットになる。
ただ、ド田舎だけあって牧草地にはもってこいなので近隣の領から放牧地として利用されている。その為何処にいても家畜のフンの臭いが漂う。アイツがキツい香水を付けてた理由がわかり思わずほくそ笑んでしまった。
「おっと、気を引き締めて行かないと」
俺はドラゴニア帝国領を一旦出て行商人に変装し馬車でトカーツ領に入る。漆黒に見える濃い青紫のマントを翻し馬車からおりる。やっぱり俺の顔なんて覚えちゃ居ない。検査と入国手続きを受ける、目の前にはあの憎っくきトカーツ、勿論お前が今日ここに当番でいる事がわかってて来てるんだぜ?
「カルデモ共和国から来たのか?」
「はい、新たな商材を求めてコチラに足を運びました。帝国ドラゴニアと言えばやはり武器や防具が有名ですがその装飾品も目を見張るモノがあります、今回は装飾に使えるモノがあればと」
「装飾ねぇ、宝石とか鉱石か?」
「いえ、既存のものでは無くダカール砂漠のニジイロスカラベの様な・・・失礼、あの虫はなんと言う虫ですか?」
「ん?あー、ありゃあダイダイスカラベだ。この辺は牛だの馬だのの放牧地だからあー言うフンコロガシの天国だな、フンならいくらでもあるからな」
「ダイダイスカラベ・・・素晴らしい!この光沢、この質感!すみません、トカーツ男爵!宜しければこれをお譲り頂けませんか!勿論タダとは言いません、1匹銅貨7枚…いえ今人手が無いので集めて頂けるなら10枚出します!お願いします!」
俺はフンに塗れたダイダイスカラベを両手に取り半狂乱で興奮しながらトカーツに懇願する。
(こんな虫が1匹銅貨10枚!? 10匹で銀貨1枚!しかもこの虫はそこら中にいくらでもいやがる、コイツは金になるぞ?)
トカーツ男爵は思わずほくそ笑みそうになるが気を引き締めて居直る。
「ふん、めざといな。流石はカルデモの商人と言ったところか。装飾品に置いてニジイロスカラベに遅れは取るものの最近注目を集めているこのダイダイスカラベに目を付けるとは恐れ入ったぜ」
「ふっふっふ、目利きの端が商人の腕。売りは仕入れにありです。このダイダイスカラベの仕入れを有るだけお願いしたい!!!」
行商人はニヤリと笑った。




