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チュートリアルの途中ですが

「ガヤルド! おい! 目を開けろ!おい!」


その日、突然ギルドに血まみれのガヤルドが運ばれてきた。全身が傷だらけで満身創痍なのは誰が見ても明らかだった。


運ばれて来たガヤルドの違和感に気付く。



ガヤルドの膝から下が無い



すぐに教会からプリーストを呼び治癒魔法をかけてもらう、何とか止血は出来たがプリーストが魔力切れを起こしてしまい後はこっちで応急処置を施さねばならない。傷口を縫い薬草を塗り、出来ることは全てやり、少し軽くなってしまったガヤルドを部屋へ運ぶ。安心したのか消耗し切った彼はそのまま意識を失った。



——数時間後——

「うぅ、ぅ・・・」


「ガヤルド!具合はどうだ!?」

数時間後彼はようやく目を覚ました。


「・・・てかあれで金貨7枚ってどうよ?」

「ふっ、じゃなきゃお前死んでたぞ?」


ガヤルドは務めて平気なフリをするが無理がある、両足を失って平気なヤツはいない。


「ショウ、すまねぇが立て替えて貰った金貨7枚なんだが…返すのちょっと待ってくれ」


ガヤルドがこの半年で金貨10枚は稼いでるのは知っている。無駄遣いや散財するヤツでないのも知っている。まぁ酒と女とバクチは大好きだけど常識の範囲なのも知っている。


「なぁ、足の怪我から見て魔獣じゃ無いとは思っていたけど、もしかして誰かにやられたのか?」


「いや、負けたワケじゃねぇ! ハメられて…まぁ負けた感じではあるけど勝負には勝ってたからな」


コイツはこの期に及んで勝ち負けに拘ってやがる。まぁガヤルドらしいっちゃそうなんだけど。それだけに今後一生誰かと勝負出来ないガヤルドの気持ちを考えるとやるせない気持ちで一杯になる。


「で?誰だよお前をハメたヤツは」


「【熊殺し】ってパーティーのトカッツだがトカーツって野郎だ」



ドクン



よく知っている。いずれお礼参りをしなければならいと思っていたヤツらだ。



「討伐クエストの募集でスポット加入したんだが、今考えると最初から俺のサイフ目当てだったな」


相変わらずやり方は変わってなくお元気そうで何よりだ。忘れていた復讐心がメラメラと燃え上がるのが分かる。この世界に警察は居ない。今回の事をギルドに言った所でギルドは何もしない。衛兵に言った所でドラゴニア帝国の市民でも無い俺達の話になんか耳を傾けない。


つまりは弱肉強食。完全自己責任。

しかし、それはつまり俺達が何をしてもいいって事だ。


「あぁ〜、水くれ…痛っ!!」

ガヤルドが上体を起こして水を飲もうとした時に縫い合わせた傷口が開いて血が噴き出した。俺は慌てて布で押さえ再び傷口を縫う。



ブォン


「おあぁ!びびびっくりしたぁ!」

と言うのも突然俺の目の前にスキルツリーが現れたからだ。驚いた拍子に傷口から手を離すとスキルツリーは消えてしまった。もう一度傷口に触れると



ブォン


やはりスキルツリーは現れた。が、どうやらこれはレオンのスキルツリーみたいで、見ると筋肉バカとすぐに分かる解放の仕方だ。


「な、なんだよおいショウ、何かあるのか?」

「あーそっか、お前インテリジェンスが低いから見えないのか?」


「誰がバカだよコノ…痛っっっ」


反撃を喰らわずに済んだのは幸いだが、さて。



「ガヤルド、スキルの解放とかしてるか?」

前に俺が見たモノと同じならコイツの体内から見える魔力の塊、多分アレがソウルポイントだと思うんだが、そうすると随分溜め込んでいる様に見える。勿論あの時の俺ほどでは無いが。



取り敢えず色々試したが見るだけで操作は何も出来なかった。まぁ、仮に操作出来てスキルを上げた所で両足を失ったガヤルドの救いにはならないだろうけど…


「ガヤルド、金貨は別に気にすんな。それより明日俺に付き合ってくれ」


「明日? 付き合うっつっても文字通り今の俺は足手纏いだぜ?荷馬車でも引いてくれるってのか?」


「ああ、そのつもりだ。いいよな?」


「マジかよ、正直あんまり出かける気分じゃねぇんだけど」


「金貨7枚」


「お前性格終わってんなw わぁーたよw」



ガヤルドの致命的な傷口は塞がっているので多少無理をしてでも付き合ってもらうつもりだ。もしかしたら支部長なら何とかしてくれるかもしれない。



———翌日早朝———

「ハァハァ! ハァハァ! ンハァ!重っ!!!」


「ザマァみろwww」


森の中を歩いて行くだけでも3時間はかかる道程を巨体を荷馬車で運ぶ、到着した時には昼過ぎになっていた。


「おいおい、着いたばっかでもう今から帰らないと日が暮れちまうぜ?危険な森で夜を過ごすつもりか?」


「ハァハァ…いや、この遺跡ダンジョンで過ごすつもりだよ」


「なんで危ねぇ方で寝泊まりすんだよ」

「まぁ見てろって」


荷台からガヤルドを降ろしておんぶで遺跡の裏手に回り込み隠し扉の石戸を開けての中へ入る。


中にある台座に手を触れ「9321」を押すと光に包まれ来賓の客間へ転送される。


ブゥン



「うぉ!な、なんだこれ!うげっ、気持ち悪い…」


確かに転送は何度やっても気持ち悪い。思わずヘタリ込みそうになったが何とか踏ん張りおんぶしてる巨体をソファに放り投げる。


「えっ!? 何だこれ? どーなってんだ!?」


困惑するガヤルドを他所に対面のソファの後ろが光り、魔法陣の中から牡牛頭の支部長が出てきた。


「翔平様、お世話になっております。ご無沙汰しておりましたがお変わりはないですか?」


「はい、お陰様で順調なんですが今日はちょっと混み合ったご相談がありまして」


シゴデキ(仕事の出来る男)の支部長はガヤルドを見てすぐに察した様子だったが、先ずはお茶とお菓子を用意してくれ、その後落ち着いてソファに座り俺の話をキチンと聞いてくれた。



「なるほど、委細承知しました。何処までお力になれるか分かりませんが出来る限りをさせて頂きます」


そう言って支部長は一旦離席し魔法陣へ消えていった。



「おいショウ何だよコレ? 訳がわかんねぇぞ?」

「だろうなwまぁ悪い様にはしないから成り行きを待て」


そんなやり取りをしていると魔法陣からメリッサさんを伴って支部長が帰ってきた。


この流れは…良いなぁコイツ。


案の定ガヤルドは隣のエロい部屋へ運ばれて紙パンツを履かされ仰向けにされる。おれは隣の部屋で待つ事にした。


しばらくすると

「ちょっ、、あ! おぅふ♡」


と言う声が聞こえてきた。


先に部屋を出て来たのは支部長だった。ソファに腰掛け俺に問いかけて来た。


「ご友人の方なのですが、結論から言うと何とかなるかもしれません。ただ…」

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