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諸悪の根源

——センチュリオンホテル ラウンジ——


「依頼主の名はムスッコ・ビグモータル。オッヤ・ビグモータル子爵の息子よ」


ミカの調べで俺達を襲った依頼人は簡単に見つかったが、そもそも本人もあまり隠す気が無いらしい。賞金稼ぎ風情に何が出来る?ってとこだろうな。


「ビグモータル家は奴隷商の側面もあって、そっち方面で変態コレクター達に狙われたって感じだと思う」


「俺達が? コレクターに?」


「そう、どうやら私たちの【翼】がオークションにかけられたってウワサがあるの。多分スパイクの鱗もオークションじゃ無いかと私は思ってる」


まだ確証は持てないけど概ねそんなとこだろう。スパイクも俺達も貴族の悪趣味な遊びに巻き込まれた訳か。



「おや?これはこれは今話題のノワル・フェニックス殿とモルベリーナ嬢では有りませんか?」


突然身なりの良いがやたら背の低い紳士が従者を伴い声をかけて来た、見た感じ貴族だが見覚えは無い。従者の方は簡素な身なりでかなり強そうだ。100%パワータイプだとわかる体付きを見るに恐らくボディガードか。


「こちらの席でご一緒しても?」

「どうぞ」

2人がけのソファが3つ、真ん中には丸テーブル。

俺とミカ、貴族、ボディガードがそれぞれ座る。


「いやー私はあなた達の大ファンでして!お目にかかれて光栄です! 申し遅れました、私はムスッコ・ビグモータルと申します。ビグモータル子爵家の嫡男として姓を受けましたがまたまだ不詳の身、精進の最中に御座います」


ビグモータル!こいつ…よくもぬけぬけと座りやがって。俺達はジッと睨んで三竦みの状態になる。


「いやなかなか緊張感のある構図ですな!主催者、回収者、提供者が1つのテーブルを囲むとは」



ぶん殴りたいが今は殴れない。このセンチュリオンホテルに置いての絶対ルールがあり、何人もこのホテル内での暴力行為、攻撃と見なされる行為を固く禁じられている。違反者はその場で超高額賞金首になり詰むらしい。


昔一度揉め事を起こしたヤツがいたらしいがすぐに自室に逃げ込み、数日間部屋から出れず最後には薬を飲んで自害したらしい。



そしてムスッコはミカを上から下まで何往復も値踏みする。


「いや、それにしてもお美しい…貴女は生け取りに変更しておきますので次はベッドの上でお会いしましょう」


おじさん構文ど真ん中のワードチョイスで最高に気持ち悪い。


下衆な下ネタを言われたミカがブチ切れ…てはない。逆に余裕すら感じる笑みを浮かべている。


「今は貴女にこれくらいしか送れませんが次会う時は私の愛を注いで差し上げましょう」


そう言ってムスッコは胸ポケから真っ赤な薔薇を抜いてミカに手渡し、それを受け取ったミカの手の甲にキスをする。


パキキッ  ベリッ!


「いだっ!」


見るとムスッコの唇から血が出ていた。ミカは差し出した左手を氷魔法で冷やしたみたいだ。そのせいで手の甲にキスをしたムスッコの唇が引っ付いてしまい唇の皮を低温火傷したらしい。


「失礼、私低体温でして」

そう言いながらミカは真っ白になった薔薇をクシャッと握り潰した。ミカの手から落ちた薔薇はまるで固いパンを落としたような音でテーブルに散らばる。勿論これは規約違反だ、空気がピリつく。


「き、貴様ぁ…」

「あら?わたし達はトラブル上等よ?あなたみたいな雑魚がここで声を上げる勇気があるの?」


「坊ちゃんいけません。席を変えましょう」

すかさずシゴデキボディガードが割って入りお坊ちゃんを移動させた。


去り際にボディガードがぼやいた。

「お前ら…マジでイカれてんな」

「そうか?俺なんかはまだマシな方だけどな、あ!それと薔薇のお礼にコレを渡しといてくれ、普通は後に渡すんだけどお前らは特別だ」


そう言って俺は黒い羽を1枚手渡した。


ボディガードは軽く頷きながら羽を懐に仕舞い席を後にした。



「ふぅ、ミカ流石にやばいってここでは」

「大丈夫よ、翼が有るんだからすぐ逃げればいいじゃない」


ミカの翼への信頼感が天元突破している。まぁ確かに窓から飛んでそのまま隣国に行けばお仕舞いだけども。


とりあえず不明瞭だった相手が自ら姿を現してくれたお陰でミカは仕事がし易くなったようだ。




——サワール子爵邸——

「あぁモルベリーナたん可愛い可愛い…くそっ!クソクソクソ!教育してやる!教育教育教育!僕に怪我をさせやがって!刑罰だ!刑罰刑罰刑罰粛清粛清粛清!」


「坊ちゃん大変申し訳ございません、捕まえて厳しく改善指導してまいります」




——センチュリオンホテル ラウンジ——

「〜て感じでカルデモ共和国内にかなりの数の商会を抱えてるわ、その全ての商会が法律違反で莫大な利益を生み、それをビグモータル親子が吸い上げる。あの親子が通った後は草木も枯れるって言われてるわ」


ミカに聞いた印象では数は多いけど非戦闘員ばっかみたいだし、金の力で周りにモノを言わせてるって感じだ、それも親の金の力で。事実、傘下の商会は全て親名義だし、あのバカ息子はボディガードを伴い毎日各商会を視察と言う名目で回ってるだけの無能っぽい。商会に顔を出しては怒鳴り喚き散らして帰るらしい。


しかしアイツはバカに出来ても金の力はバカに出来ない。

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