徹底的合理主義
——サウスザハリアの離れ領地——
辺境の騎士ガヤルド公が治める【ディアブロオアシス】はサウスザハリアから5キロ離れた所にある。元々は古代王のリゾート地として愛用されていた場所でザハリア中央とは水源が違い、その水質も去ることながらこの地方にのみ生息する水草の薬草が繁殖していてその水質に影響を及ぼしていた。本来ポーションは塗り薬で飲むとお腹を壊してしまうが、ここのオアシスの水は飲めてしまうので体内から効く神聖な水として崇められていた。
そして日々散財を繰り返すゴアブルスタンピード騎士団の会計係として頭を悩まされるアイリーンはこれに目を付けた。
【ポーション内服液】
・滋養強壮
・虚弱体質
・病中病後の回復
・肉体疲労の栄養補給
・肌の改善、美白、美肌、美容
領地運営から僅か3日で飛ぶように売れる特産品を作ってしまったディアブロ商会のアイリーンは他の商会から嫉妬の的にされる事になる。それは領主のガヤルドも同じだった。
「はぁ、ホント貴族ってめんどくせぇな…」
「申し訳ありません、内側のゴタゴタはなるべく私で対処しますのでご主人は領地防衛に御注力下さい」
このオアシスは常に魔獣がナワバリにと狙ってくる事でも有名で、過去の歴史を見ても魔獣の侵略とザハリア王国の奪還を繰り返していた。
その為、この問題に対処すべくアルゴノーツ商会から大量の石材を購入し、オアシスを丸ごと隠してしまう施設を建設予定している。
まず空の魔獣が水場を見つけ、空の魔獣について行けば水場にありつける事を知っている魔獣が集まり、それらをエサとする大型魔獣がまた集まると言う自然のサイクルが出来上がっている事にアイリーンは気付いた。
なら隠してしまえと。
現在オアシスを囲むように足場建設が進んでいる。ドラゴニアの建設資材は有名で、高級家具、石壁など貴族に非常に人気が高い。ドラゴニア素材を贅沢に使った三角形の石造りの建物を予定している。それを高級ホテルとしての運用計画でもあるので一石二鳥だ。
赤字カツカツ運営に何とか歯止めをかけたいアイリーンと、頭痛の種を常に提供してくるうかれポンチのゴアブルスタンピード騎士団の戦いは続く。
——宴——
「貴方達は宴をしないと死ぬんですか?」
「まぁまぁアイリーン、ドラゴンワームの討伐だしちったぁ多めに見てやれよ」
現在従属契約の騎士団の総勢10人。
女性眷属契約6名(1名不在)
男性眷属契約1名 ランボ団長
これらが現在のガヤルド騎士の配下となる。なので宴となると毎回17名の酒と食事が必要になり、それが連日となると本当に財政を圧迫している。そして極め付けはこれだ。
「よーし!宴もたけなわ、そろそろアレだなヤロウども!」
「うぉぉぉぉぉぉ!!!!」
デリバリー娼婦だ。サウスザハリア内から呼び寄せる運送代金。男12名分の料金、延長料金、指名料金、オプション料金etc…
「お待ち下さいご主人」
アイリーンが立ち上がりガヤルドに詰め寄る。
「な、何だよ、もう盛り上がってるし今からヤメろったって無理だぞ!」
アイリーンには頭が上がらないガヤルドだがココは譲れない。
「ご提案がございます、私を含めた6名で全員を相手しますのでデリバリーはお控え下さい。勿論満足行くまで相手しますので」
突然のアイリーンのとんでもない提案に場内が騒然となる。ここにいる女達はガヤルドが口説いてきただけあってみんな粒揃いの美人だ。中でもアイリーンは本物の貴族令嬢、本来なら一般の男、いや騎士団ごときなんか話もしてもらえない程の高嶺の花だ。それを好き放題していい…
ヤロウどもは生唾を飲み込みガヤルドに注目が集まる。
「いや、俺は構わねぇがそれだと女1人で2人の男を相手する計算になるぜ?」
「お言葉ですが私はいつもご主人と何故か混ざってくるランボの相手を務めております。それと正直申し上げましてご主人様お一人のお相手を努める事を考えればこれらのザコちんぽ数本の方が遥かに楽です」
そう言ってアイリーンは5人の女達を壇上に上げ横一列に並ばせた。
ガヤルドは自分のモノに余り執着がない。唯一執着が有るのはショウから貰ったあのパルチザン
【チェルノベイン】だけだ。
とは言えしかし、ガヤルドの大切な女達だ。その場の全員にかつてない緊張が走る。ぶっちゃけ娼婦より遥かにコッチがいいと皆んな思っている。ガヤルドの返答や如何に…
「テメェら…」
ゴクッ…
「ヤロウども!遠慮は無しだぁ!!!」
(うぉぉぉぉぉ!!!!)
ここにゴアブルスタンピード騎士団専属の癒し軍団【ゴアビッチ】が誕生した。
ガヤルドの合図と共に自身のカラダに男達が集まりしゃぶりつかれ貪らながら安堵の息をつくアイリーン。これで1番の難問だった財政赤字からの脱却を完全クリアし、一転して超黒字に。
(よし、これで後は建材を…いやポーションの市場拡大が先か…)
——アルゴノーツ領——
「凄い!飲めるポーション!これを独占販売…他の商会と一悶着起きそうなくらいの案件だよ…」
「ご主人様のお心遣いを悪魔に感謝します」
そう言ってベルリネッタはザハリア方面に向かって祈りを捧げる。
「ん? もう一通手紙…発注書? 石材!? と木材!? しかも凄い量じゃないか!?」
〜拝啓〜
いつもお世話になっております、口上は割愛させて頂きます。近くこちらの品を発注する予定です。今はまだ財政が赤字なので現金の用意が難しい所ですが、数日後には必ず黒字に転換しますのでしばらくお待ちください。 アイリーン 〜
「財政赤字を必ず黒字にって…何をどうしたらいきなり黒字になるんだ?ホント凄いなアイリーンさんは。取り敢えず知り合いの木材と石材商会に声をかけておこう」




