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辞める時も健やかなる時も

「え待って待って、キャー!!」

ミカを抱きかかえて何とか木の上に来た。正直言うと風魔法が無いと持ち上げられない。いや、ミカが重いとかでは無く俺の翼はそこまで力が無い。


昨日、夢の様な時間を過ごした後ミカの背中に蝙蝠の翼が生えた。だからと言って俺が用無しの様な事は無く昨日と同じ様に楽しく、いやミカは昨日よりも楽しそうにしている。


分かる、翼を手に入れた日は正直眠れなかったもんな〜w もう一回記憶を消してあの感動を味わいたいと何度も思ったもんだ。ミカが羨ましく、はしゃぐ姿が微笑ましい。


「行くよ? せーのっ」

「キャーーーー!!!」


フワッ


初めてのフライト、まぁ最初は飛ぶと言うより滑空からだけどミカには産まれて初めての体験だ


「凄ぉーい!!!!!!」



滑空だけでおよそ100メートルは進んだ。回数を重ねるごとに飛行距離は伸びて行き、最終的に滑空だけで300メートル以上飛べる様になった。


それから滑空に少しづつ羽ばたく練習も重ね遂には地面から飛べる様にもなった。ただ、俺の様に風魔法が無いから急な動きは出来ない。


後、俺の羽根と違って被膜の翼はまた違う特性が沢山ある。

①防御力が高い

②空気を掴む力が強い

③翼に爪が有る

④マントにした時に超かっこいい


などなど。とにかくミカはゴキゲンで俺も思わずニヤニヤしてしまう。【翼あるある】と言うかなりニッチなネタをミカと共有出来るのがまた嬉しい。


切り立った崖の上で休憩がてら昼食を取ることにした。ホテルで買った名物の弁当【ドワーフのこう言うのでいいんだよ無骨弁当】は骨付き肉とサラダと言うシンプルながら腹を満たすボリュームだった。



「なるほどね〜こう言う事か」

突然ミカが何かに納得した。


「なにが?」

「前に私が『飛ぶってどんな感じ?』って聞いた時ショウが【解き放たれた感じ】って。後は水の中を泳ぐ感じとか」


ミカは妖艶な青紫の被膜の翼を嬉しそうに眺めている。【妖艶】とはまさにこの事だ。


空路を行けるので本当はもっと早く帰れるハズだったけど、飛行訓練にハマったミカの提案でもう一泊する事になった。その日は2人とも、とくにミカは飛行訓練と、前日俺にめちゃくちゃにされているのもありクタクタなのかすぐに寝てしまった。


俺には分かる、実は翼を手に入れた時より飛んだその日の夜の方が楽しい。今日飛んだ感触に浸りながら「明日も早く飛びたいな〜」とか考えながら寝るのが最高に楽しいのだ。


可愛い寝顔を横目にニヤニヤしてしまう。

その時ミカの左手の違和感に気が付いた。


「あ、これは…」



———ベルリネッタの指輪———

無事ガヤルドを隣国に逃した後、程なくしてイーヨが名誉男爵に叙爵された。引っ越しをして間も無く角を生やした金髪の美少女がやって来た。ベルリネッタだ。ガヤルドのせいでエンツォ家から勘当された彼女が気の毒で匿うことにした。彼女は真底ガヤルドを慕っていて身も心も捧げると誓い合ったらしい。ある日、彼女の左手の薬指が黒くなっている事に気付き怪我をしたのかと聞くと角が生えた日に指もこうなったと言っていた。何かの魔法か呪いかもと思いアスモデウス支部長に聞いた所、隷属契約の際に【魂の屈服】の先に有る【魂の婚姻】に辿り着くと左手の薬指の爪が黒くなり【悪魔の花嫁】になると説明された。

それは俺やガヤルドの()()契約者の一族と見なされる【()()契約】になると。



翼の為だけじゃ無かったのかな?

ちょっとくらい勘違いしても良いのかな?昨日からなるべく考えない様にしていたけど、この薬指に心が救われた気がした。



——翌日——

ミカは相変わらずゴキゲンで空の散歩を楽しんでいた。俺もミカもマジで12時間以上も寝たのは久々だ。寝覚めの気持ち良さがハンパなかったよ。お陰で今日は体力満タン、飛行訓練ついでにカルデモ方面に飛んで行く。


空の寄り道をしまくっても昼過ぎにはカルデモに着いてしまいお昼ご飯を食べる事にした。


「そういや属性もちょっと変わってるんだよ」

「え、そうなの?」

俺とガヤルド、つまり悪魔の使徒は相手の粘膜部分に触れる事によってスキルツリーを閲覧できる様になる。


実は今朝起きてからちょっとイチャつく雰囲気があってそのまま始まってしまったんだが、その時スキルツリーが現れて操作できる事に気が付いた、と言うか思い出した。確認したミカのスキルツリーはインテリジェンス寄りで【水属性】だった。そして俺の眷族となった彼女のスキルツリーを操作して解放し【氷属性】に進化した。



「氷!? そーなの?!」

驚くのも無理は無い。【氷】は一部の魔獣にしか確認されていない属性で、人間では歴史上【雪原の魔女】だけのレア中のレア、激レアURだ。



「勿論水も使えるから合わせて使う事でより強力になると思うよ」


と言い終わる前にミカは目の前のグラスの水を冷え冷えにしてみせ「どう?」みたいな顔で自慢して来た。


可愛すぎて死にそうなんだが?



取り敢えずしばらくは飛行訓練と氷魔法訓練をしたいとのご要望なので仰せのままに。



夜はそれぞれの宿に帰るので少し寂しいが【次】の約束が2人を結んでくれている。俺との【次】を喜んでくれて期待してくれている事に充実と安心と様々な気持ちが入り組んでよく分からない感情になっている。


上手く言えないが【次】を受け入れてくれるのは俺を受け入れてくれている感じがして嬉しい…なんかやっぱり上手く言えない。



とにかく今は楽しいって事。

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