お品物はお気に召しましたでしょうか?
「ドラゴニア支部でお世話になっておりますショウと申します!」
俺はソファから立ち上がり獅子頭の紳士と握手を交わす。
「こちらアスモデウス支部長から」
そう言って包みを渡す。
「や、これはご丁寧にどうも!私こちらの支部長をしておりますサブナックと申します。お話は伺っております、どうぞお掛けになって下さい」
サブナック支部長に促されソファへ腰を下ろす。すると直ぐに羊角の美人秘書がお茶を運んでくれた。メリッサさんとはまた違う可愛い系の新人アイドルタイプ、これはこれで良い。
「あ、ラキュムあれ持って来て」
アイドル秘書はラキュムさんと言うらしい、指示を受けた彼女は可愛らしくて小走りで隣の部屋に駆け込む。その際チラッと隣の部屋が見えたがこちらはどピンクの内装でヒラヒラした装飾の部屋だった。て事はラキュムさんも…いかんいかん、集中!
ラキュムさんが大きな包みを持って…いやほんとデカいな、ワイド型テレビ位の大きさなんだけど…
テーブルに置かれた包みを開けると大きくシンプルな箱が現れた。箱を開けると中から見事なハルバートが姿を現した。
「ドラゴンの尾骨から作られた至高の一品で御座います、刃は逆鱗を重ね合わせた作りで反対側のハンマーは牙を贅沢に使用、刃先の槍部分は右手の爪が使われております、鉄と全てがドラゴン素材なので見た目よりかなり軽く仕上がっております」
「凄っ!やっば!!」
実際手に取ってみるがそれでも俺にはかなり重いし長い。俺にはね
「と、こちらが頼まれていた魔剣で御座います」
俺の目的はこっち、さっきのはガヤルドの分だ。アイツいつも武器をぶっ壊してるから何かいいの無いかな〜とついでに聞いてみたらたまたまコレがあった。
「すみません、こんな良いモノ2つも頂いてしまって。お役に立てるよう頑張ります!」
「いえいえ!ご活躍は耳にしておりますし久々の入団希望者で期待のホープ! 元々眷族になられた方は初回特典として武器を進呈してましたからほんとに遠慮なさらず思う存分奮って下さいまし」
ドラゴン素材なんて国宝級のお宝だ。流石に普段はこんな良いモノを進呈なんてしないらしいが数百年ぶりの大型新人2人に対しての先行投資らしい。
お礼を言ってミストニア支部を後にする。俺には重いパルチザンを抱えて必死に空を駆ける。
——帰還——
遠くに見慣れた山と森が見えて来た。帰りは大荷物のお陰で流石にヘトヘトだ。
「しかしカルデモ領の遺跡群エリア良かったな〜、冒険者になったら絶対行こっと」
あの活気と雰囲気は良かった。冒険で生きてるって感じが堪らない。取り敢えず寮に戻って一休みしたい…
翌日、魔剣を持ってイーヨの部屋を訪れた。
「イーヨ!良いモン手に入れたぜぇ〜!」
ジャジャーン!
とばかりに魔剣を見せる。
ミドルソードとショートソードの双剣で黒と銀のコントラストが美しい。剣の中央にルーン文字が刻まれていて所々に美しい装飾が施され美術的な価値も高そうなデザインだ。
「魔剣じゃないですか!? 本物ですか!??」
目を白黒させているイーヨを横目に余裕で頷いて見せる。
「これ王室に献上する様な業物に見えますけど…本当にコレを潰して素材にするんですか? 多分ですけど白金貨数枚の価値はありそうですよ?」
「ま、確かに惜しいけどなw」
例えそんな高価な代物でも従属契約をしているイーヨには安心して預けられる。その他にもサブナック支部長から細々した希少金属を小さいコンビニ袋位の量を貰って来ていた。何かの足しになればと奥の倉庫をひっくり返してかき集めてくれた。お陰でイーヨが驚きのオンパレード、さっさと部屋を追い出されて彼は研究に浸る。
さてと、次はアイツにお土産を渡しに行くかな。
——ガヤルドチーム——
彼らは苦戦していた、連日の連戦連勝に少し浮かれていたのは否めない。それが証拠に今目の前にいるロックドレイクに大苦戦を強いられている。サイ程の大きさのトカゲ、とは言え歴とした竜種であるその強さはこの森の捕食者の上位に位置する。勿論ガヤルド達は逃げる選択肢もあったが先に述べた様に連勝に浮かれていたのだろう、判断を誤ってしまった。 初手、エンカウントした直後なら距離もあり逃げる事は容易かったが、今は仲間内に手負を抱え逃げながらの攻防戦となっていた。しかしロックドレイクはしつこくいつまでも追ってくる。
いつも10本程持って来ている剣や斧、使い捨てとは言えバカにならない出費に頭を抱える。どうせ使い捨てと安物ばかりを揃えたツケ回って来た。
「武器と防具はケチるな、金で買える命は買っておけ」
ガヤルドは冒険者の教訓を軽く見たバツだなと反省した。今後が有るならこの反省を座右の銘にしようと思うがコイツらを逃すためには自分が囮になる他ない。 せっかくショウに人生2度目のチャンスを貰ったのに…自身の短慮に嫌気がさす。
と、その時ついにロックドレイクが痺れを切らせて突っ込んで来た!
ドドドドドドッ!!!!
凄まじ土煙と巨大な体をくねらせ独特な歩き方で迫ってくる。
「クソ…」
ガヤルドは腹を括り一歩前出る。素手でどうにかなる相手じゃないのは百も承知だ、しかしせめて僕達は流さないとリーダーとして名倒れだ。
バフォ!!!! ドフッ!!
その時、走るロックドレイクの横から突然突風が吹きロックドレイクの体が横へスっ飛んで木にぶち当たりくの字に折れた。
「何だよ珍しく苦戦してるじゃねぇか兄弟」
漆黒に近い青紫の羽を広げ、ただならぬ雰囲気のハルバートを肩に担いぎいつもの調子で辛口を叩く。
ロックドレイクは何故か息が荒くフラフラになっている。デバフか?アバラも折れているんだろうな、不意打ちとは言えロックドレイクを一撃で…やっぱショウにはまだまだ勝てないか…一瞬悔しさが込み上げるがガヤルドは顔を上げニヤリと笑う。
「あん?冷やかしか? 武器さえありゃあんなトカゲなんざものの数じゃねぇよ」
「じゃあ言い訳出来ない様にしてやるよw ホラよ」
そう言ってハルバートを投げて寄越す。
ガヤルドはそれを受け取り2〜3回軽く振って具合を確かめロックドレイクに向かってゆっくり歩を進める。




