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お買い上げ有難う御座います

三日後にまた来るので、その時は有るだけ全て買い取ると約束をして立ち去る。


それからトカーツと3人は朝から晩までフンに塗れ死に物狂いでダイダイスカラベを集めた。



——3日後——

トカーツ達が集めたその2000匹

金貨にして20枚


俺は大袈裟に喜んで見せた。

「おおおお!!! 宝の山! 素晴らしい!」


トカーツに約束の金貨を払い更に受注をする、もっともっとくれと。


しかし1匹が大人の拳ほどの大きさの虫も、これだけ乱獲すると流石に見当たらなくなって来た。更にはフンを処理する虫が減ってあちらこちらで分解されないフンが悪臭を放つ。


「いや、流石にもう殆ど捕まえちまったよ。俺らもクタクタだし」


「倍お出しします」


「え?」


「今迄の倍お支払いします!それで何とかお願いします!!!」


そして俺はまた3日後に来ると言って立ち去った。



「おいどーするよ、もう取り尽くした感じだぜトカーツ」

パーティーメンバーの1人が疲れ果てながら言う。



「まぁかなりの金になったから今回はこれでいいかもな、また来年にでも・・・」


「すみません失礼します、コチラにトカーツ男爵はいらっしゃいますか?」


トカーツの検問所を訪れたのは身なりの良いダンディなイケオジと超絶美人のメイド、勿論アスモデウスとメリッサだ。


「お初お目にかかります男爵、私カルデモ共和国から来たアスモ商会の者です」


その笑みはまるで悪魔の微笑みだった。


「先のお取引業者の関係者で御座います、ダイダイスカラベの件でご提案が御座いまして」


みんなメリッサさんの美貌に釘付けで話半分になっていた。オタオタしながらも取り敢えず平静を装う。


「あぁなんだっけ?で、話ってのは?」


「メリッサ、頼みます」 「はい」

そう言ってメリッサが一歩前へ出ると男達は舐め回す様にメリッサの身体を見た。



「実は我々はあの行商人からダイダイスカラベの保管を頼まれている商会です。今手元に2000匹のスカラベが御座います。これを金貨20枚で買い取って貰えませんか?」


唐突な提案にトカーツ達はキャトンとする。そこはアスモデウスが口火を切る。



「それを倍の値段でお売りになれば宜しい、互いに利益のあるお話では御座いませんか?」

アスモデウスは務めて悪巧みの笑みを浮かべた。


直ぐに状況を察しトカーツもいやらしく口の端を上げる。


商談はあっさり成立した




——3日後——

「ありがとうございます!」

俺は約束の倍額、金貨40枚を支払う。


「トカーツ男爵、まだまだ足りません!もっと集めて頂けませんか!」


「いや流石にもう虫が居ねぇ、これ以上は」


「5倍」


「え?」  


「いや、6倍でも利益がでます!男爵が苦しいのは分かりますが商人として一世一代の大チャンスなのです!どうかお願い致します!」


「ろ、6倍……!!」


俺の渾身のお願いは通じた。まぁ金貨に釣られただけだろうけど。そしてまた3日後と約束をしてその場を立ち去った。



——翌日——

アスモデウスが明日出発するのでとトカーツの所へ挨拶に伺った。


「待ってくれアスモの旦那!もう一回スカラベを売ってくんねぇか?」


「いや、流石に品質管理も有りますしこれだけ大量の運搬となると今からここに置いて帰るわけには」


「倍払う、この前の倍額金貨40枚払うから頼む!」


「いやいや、そう言われましても流石に」


「わかった! 3倍の金貨60枚!頼む!! な!頼むよ!! 一生のおねがいだ!」



「・・・はぁ、分かりました。でも今回限りで本当にお願い致しますね」


「ありがてぇ!恩にきる!! 金は明日までに集めるから明日また来てくれ!」


翌日、トカーツ達は私財を売り払い、借りれるだけ借りまくり、ついには裏組織にまで借りて何とか金貨60枚を作った。アスモデウスは約束通りダイダイスカラベ2000匹を渡して金貨60枚を受け取る。


その夜、トカーツ達は宴を開いていた。

明日には大金持ちになる前祝いだ。


「ケッ、こんな帝国の端っこ警備なんざヤめてやらぁ!何が男爵だ!クソ喰らえだ!」


「そうだそうだ!大した給金もよこさねえでケチケチ帝国がよ!」


「まぁまぁ良いじゃねぇかもう、それより城壁の中街でよ、商会でもブチ上げてよ、お貴族様相手にボロ儲けでもしようぜ!!」


「おぉ!良いじゃねぇか! じゃあ役職決めねぇとな! お高い店で飯食ってよ、地方貴族の若い嫁でももらうか!」



彼らは目が覚めながら夢を見ている。それはそれは心地の良い甘美な夢を。





——約束の3日後——

トカーツ達は青ざめていた。もう日が暮れて夜になろうとしているのに商人がやって来ないからだ。


彼らは目が覚めながら悪夢を見ている。それはそれは心地の悪い吐き気を催す悪夢を。



トカーツ領の1番高い楓の木、その頂上から彼らの様子を見ている。漆黒に近い青紫の翼を持つ悪魔の使徒


「ふっふっふ、悪夢ならよかったのになw 現実なんだな〜コレが」



閉ざされた未来だと知る由もなく無駄に騒いだ宴の後。辺りを見ると悪臭を放つ大量のフンとダイダイスカラベの大量の死骸、それに金貨30枚の借金だけが残った。




——数日後——

無事復讐を終えて俺とガヤルドのドス黒い復讐心はこれ以上ない程の清々しい気持ちだった。


今日は奴隷商の近くの高級レストランの一等席を借り4人で祝杯を上げている。


「イェーーー!カンパーイ!!」

「いやはや、我々悪魔より悪魔的とは恐れ入りました翔平様」

「ほんとやる事エグいよなオメェはw」


復讐心が満たされてザマァ気分の負のエネルギーを食べたアスモデウス達はガヤルドに新たな足を与えてくれた。流石に元通りは無理だったが代わりに牡牛の逞しい足が生えている。靴を履けないが蹄がゴツいブーツに見えて牛の足とは全然分からない。


「お!来た来た!」  ガラガラガラ

今日このテラスを予約したのは、美味しい料理に舌鼓を打ちながら奴隷商から運送されるトカーツ達を見送る為だ。


「ガヤルド、アイツら出産奴隷だってさ」

「マジか! あぁ〜心が晴れて行くw」


出産奴隷とは文字通り子供を出産する為だけの苗床として扱われ産まされ続ける奴隷だ。この世で最も過酷な奴隷と言っても差し支え無い。

ゴブリンは実は男でも種付け出来てしまう。勿論ケツの穴から産むわけだが食事中なので汚い話は辞めておこうね。



ガタゴトガタゴト荷馬車が揺れる


「トカーツ!! うぇ〜いw」

「トカーツ!いってらっしゃ〜いw」


トカーツに向かって乾杯をすると、ヤツは唖然となってこっちを見ていた。


人生の最高潮から真っ逆様、奈落の底へ落ちた時ってあんな顔をするだな人って。


「あの時お前らが俺を騙し討ちしてくれたお陰で今の俺がある、ホントに感謝してるんだぜ」

俺は改めて心からの乾杯をした後食事を楽しんだ。

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