人生にログインボーナスがあるとは知らずに溜め込んでいたようなので星5の超レアキャラに生まれ変わって異世界人生楽しみます。
前回は失礼しましたm(_ _)m
経験を活かして挑みたい所存です。
「おぉっ!!お宝発見〜w たまんねーなw」
ここは弱肉強食な異世界、パンゲア大陸の東に位置するドラゴニア王国の端の端、
俺は32歳の日本人「翔平」
29歳で憧れの異世界に転移して早3年、只今半殺しにされて全財産を無くしたばかりだ。
お宝をGETして喜んでいるのはこの遺跡ダンジョンを一緒に攻略していた4人組の冒険者パーティーだ。その冒険者達はダンジョンを出た瞬間強盗に変わり、逆に俺は獲物に変わった。そして今俺は鼻血を出し冷たい地面に突っ伏している。俺からドロップしたお宝を得意げに掲げ虫唾の走る高笑い声が遠くで聞こえる…
「んあ…痛っ…」
気が付くともう夕方だった。体のアチコチが痛い上に寒い。冬を思わせる灰色の曇り空が延々と続いている。まるで今の俺の気持ちを表している様な陰鬱とした空の色だ。そんな俺の気持ちにとどめを刺しに来たのか小雨まで降り出した。一体俺が何をしたって言うんだ?
取り敢えずここに居たって凍えるだけだ、金が無い、痛い、腹が減ったは後で考えよう。この世界では優先順位を間違えるとソッコーで死に直結する。とにかくまず暖を取れる場所を…
「いや、先に雨宿りが出来る場所の確保だ!」
先刻の自分の考えを否定する様に声に出して行動する。そんな俺を急かす様にやがて灰色の曇り空は雷を伴い強い風が木々を揺らし始めた。
辺りの気温が一気に下がるのがわかる、もうすぐ雨が来る。
ここから街まで約3時間、ダメだ到底間に合わない。この気温で雨に濡れるのはマジでヤバい。ダンジョン攻略直後に暴行を受け俺のHPはゼロ寸前、さらに間も無く夜になろうとしている。
雨風を凌げて助かる道はただ一つ。危険だが先程の遺跡ダンジョンに戻るしか無い。勿論ダンジョンは危険だが夜の森ほど危険では無い…と思いたい。とにかく今は雨と寒さだけでも回避しないと死は免れない。
意を決して再び遺跡ダンジョンに足を運ぶ。ロクな武器も装備も無いのは俺がポーターだからだ。今はこの松明の灯りだけが少しの温もりを与えてくれた。
遺跡ダンジョンの入り口は地下鉄の様に下に伸びているので雨も自然とダンジョンへ流れ込む。勿論地下鉄の様に雨除けの為に一段上がった造りでは無い為フロアへ続く入り口の洞窟は水浸しだ。
やむなく最初の入り口洞窟を抜け遺跡ダンジョン地下一階フロアへ足を踏み入れる。
通常なら冒険者パーティーにいるプリーストかウィザードがライトの魔法を使ってくれるが今はこの松明の灯りを頼りにする他ない。何故ならこの世界の住人なら誰もが使える魔法を俺には使えないからだ。
頼りにする他ない松明の灯りはライトと比較にならない程頼りない。部屋の電気で言えば豆球程度の視界しか確保出来ない。しかしモンスター側からも発見されにくいと言うメリットもある。今の俺にはその方が都合がいい。
何故ならこの世界の戦士の平均的なフィジカルはレスリングのメダリストの軽く3〜4倍は有るだろう。ヒグマは無理だとしてもツキノワグマならマジで素手で勝てると思う。武器有りならヒグマにも勝てそうだ。いや、装備有りでヒグマ程度に勝てない様ではモンスター討伐なんてとてもとても。
そんなヒグマより怖いモンスターが居るダンジョンに包丁程度のナイフと松明だけでここに居る俺のヤバさが伝わると幸いだ。
とにかく雨風と寒さは凌げたが、ぶっちゃけ生存率はどっこいどっこいかもしれない。夜の森にもモンスターはうじゃうじゃ居るから濡れないだけこっちの方がマシかもしれない。とにかく気を緩める事なく聞き耳と神経を尖らせてとにかく朝まで…は無理かもしれない。
もう疲労が限界に近い。
ただでさえ先刻のダンジョン攻略に丸一日かけていて体力も限界な上に寝不足、その上空腹と寒さに加え暴行まで受けている。
最悪な事にここも雨が流れ込み地面が所々濡れ出して来ている。危険だがもう少し奥に移動しなければならなくなった。
ついに一階入り口フロアに来てしまった。縦横30メートルの円形フロア、奥にはさらに5つの道に別れている。ここからはいよいよ本格的にモンスターとエンカウントするが勿論その時は俺の最後だ。ここの最弱モンスターですらツキノワグマより強い事はわかっている。その時は濡れてでも入り口まで走って戻るしか選択肢が無い。とにかくこの先5つの道には絶対に踏み込めない、このフロアが唯一のセーフティエリア…
「嘘だろ」
考えてなかった。
雨宿りをしたがるのは人だけではないと。
俺が来た入り口から大きな影が見える。壁にはほんの少しのヒカリゴケが生えているが灯りにはならない。しかしヒカリゴケを遮る影はハッキリとわかる。左右に揺れながら近づくその影から「ゴフッゴフッ」と言う息遣いと足音まで聞こえ出した。何かは分からないが人でない事だけは分かる。
頭が真っ白だ。痛い、寒い、空腹は何処かへすっ飛び緊張感が一気にMAXになる。頭の中の警鐘が鳴り響く。生存に対する渇望が爆発し、あんなに嫌がっていた奥の道へと静かに足を運ぶ…
「いやいやいや」
先程頭が真っ白と言ったのは取り消す、今度こそ本当の真っ白だ。頭の中の警鐘も何も無い真っ白。
俺の視線の先にいる奴は分かる、人喰いのオークだ。身の丈2メートル超えの醜悪な豚顔に下から突き出した大きな牙、ステロイドを打ちまくったかの様なバッキバキの肉体、その手には錆だらけ斧が握られている。
完全に俺に気付いている、俺はとにかく後退りをするが反対側からは「ゴフッゴフッ!」と荒い息遣いが聞こえる。ついに先程のフロアで三つ巴のご対面の時が来た。ゴフッゴフッの主はミノタウロスだった。血走った真っ赤な目、牛顔のクセにライオンの様な牙が並んでいる。水牛の様な大きな角が生えていてこちらもステロイドバッキバキボディで手には斧。
「ンモオォォォ!!!」
「プギィィーー!!!」
「ヒイィィィィ!!!」
三者三様の雄叫び(内一名は悲鳴)がダンジョン内に響き渡り生き残りを賭けたバトルロワイヤルが今始まる!