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「あかるちゃーん!?!」「柊士!!あんた大丈夫か!?」
ユウ、レイ、澪音の三人が駆けつけてきた。兄は困り顔でユウを抱きとめ、レイは兄の血を見て驚愕している。少し遅れてきた澪音は、妖怪の死体を検分していた。
「悪い。きちんと掃除は済ませてあったんだけど。場が歪──」。澪音は専門用語で兄に説明を始めた。「こんな歪みが巫家の──」。双子は兄の顔色を伺っていたが、柊士は何も答えず、ハンカチで血を拭った。その動作には疲労感が滲んでいた。
結局、その日は厳重に妖魔避けを施された巫邸で過ごし、翌日帰途についた。
家路に着く電車の中で、私は無言の兄の横顔を見ていた。(兄は、私の兄を演じていたのではない。人間の柊士を演じていたんだ)。
私が知っていた安穏な日常は、最初から存在しなかった。それは、狭い私の世界の中でだけだった。つまらない日常は、安穏と過ぎていく。もう二度と、そうは思えないだろう。窓の外を流れる風景を見つめながら、私の世界が塗り替えられ、非日常の中に立っていることを知った。




