夏祭り、君と見つけた夜の輝き
2人とも夏休みに入り、サッカー部は中体連の試合に臨んだ。しかし、惜しくも決勝戦で敗退し、3年生は卒部を迎えた。新チームでは1年生の蒼人と空にも期待が寄せられ、これからの活躍が注目されていた。
そんな中、校区内で開催される夏祭りの日が近づいていた。終業式で気持ちを伝え合った二人は、新たな一歩を踏み出していた。
夏祭りの前日、蒼人は家で制服を片付けながら、空からの電話を受けた。
「ソ:アオ、明日、夏祭り行くよな? 俺、楽しみでさ!」
「ア:うん、ソラと一緒なら楽しみだよ。…中体連、負けちゃったけど、大丈夫?」
「ソ:うん、悔しいけど…3年生が卒部して、また頑張ろうって決めた。アオと一緒なら、もっと強くなれるよ」
「ア:…俺も、ソラと一緒なら頑張れる。夏祭り、楽しみにしてる」
電話を切った後、蒼人は夏祭りのことを考えると胸がワクワクした。ソラとの時間がまた増える。それが、最近の何よりの喜びだった。
夏祭りの当日の夕暮れ時、町は提灯の明かりと屋台の香ばしい匂いで賑わっていた。蒼人は母が用意してくれた浴衣に袖を通し、少し緊張しながら空の家に迎えに行った。空は明るい藍色の浴衣に身を包み、笑顔で出てきた。
「ソ:アオ、浴衣似合ってるじゃん! 俺、ちょっと緊張したけど、アオと一緒なら大丈夫だろ?」
「ア:ソラも、めっちゃかっこいいよ…俺も、ソラと一緒で安心する」
二人は照れ笑いを交わし、夏祭りの会場へ向かった。提灯の明かりが道を照らし、屋台からはたこ焼きや綿菓子の香りが漂っていた。
「ソ:アオ、まずたこ焼き食べようぜ! 俺、お腹すいた!」
「ア:うん、いいよ。ソラが好きなもの、一緒に食べたい」
屋台でたこ焼きを注文し、二人は小さなベンチに座って食べ始めた。空が「熱っ!」と舌を焼いて笑うと、蒼人が「気をつけてよ」とハンカチで口元を拭いてあげた。
「ソ:アオ、優しいな…ありがとう」
「ア:…ソラが笑うと、俺も嬉しいから」
その自然なやり取りに、二人の距離がまた近づいた気がした。
夏祭りのメインイベントは花火。打ち上げ会場に向かう途中、露店で金魚すくいを試みた。
空が「アオ、俺上手いから見てて!」と意気込むも、ポイがすぐに破れて金魚を逃し、蒼人が笑い出した。
「ア:ソラ、ダメじゃん! 俺もやってみるよ」
蒼人が挑戦すると、意外にも金魚をすくえ、二人で喜び合った。
「ソ:アオ、すごい! 俺ら、チームワーク抜群だな!」
「ア:うん、ソラと一緒だと、なんでも楽しい」
金魚を袋に入れ、二人は花火の打ち上げ場所へ向かった。河川敷にシートを広げ、提灯の明かりを背に並んで座った。
花火が上がると、空が興奮して「アオ、見て! すごいな!」と手を振った。蒼人は空の横顔を見つめながら、心の中で思う。
「ア:…ソラ、こんな夜、ソラと一緒でよかった。気持ち、伝えてよかった」
花火の音が響く中、空が突然蒼人の手を握った。
「ソ:アオ、俺…花火よりアオの笑顔の方がきれいだよ。…本当、俺、アオと一緒で幸せだ」
「ア:…ソラ、俺も…ソラと一緒が一番だよ」
二人の手はしっかりと握られ、花火の光がその絆を照らした。近くにいた家族連れが「仲いいねえ」と笑う声が聞こえ、蒼人は少し照れた。
「ソ:またBL疑惑だな。でも、俺らでいいよな?」
「ア:うん、ソラと一緒なら、なんでもいい」
二人は笑い合い、花火を眺めた。
夜が更けるにつれ、祭りの喧騒が落ち着いてきた。屋台を回り、綿菓子やチョコバナナを半分こしながら、二人は町を歩いた。
「ソ:アオ、これ、めっちゃ甘いな! アオの分も食べてくれよ」
「ア:ソラ、口の周り汚れてるよ…」
蒼人がハンカチで空の口元を拭うと、空が「アオ、嫁みたいだな」と笑った。
「ア:…ソラ、からかわないでよ。恥ずかしい…」
「ソ:ごめんごめん! でも、アオがそばにいてくれるの、嬉しいよ」
その言葉に、蒼人の胸が温かくなった。
祭りの終わり、夜空に最後の大花火が上がった。二人で手を繋ぎ、静かに見上げた。
「ソ:アオ、夏休みもずっと一緒だよな? サッカーも、遊びも…全部」
「ア:うん、ソラと過ごしたい。…大好きだから」
「ソ:俺も、アオ。大好きだよ。ずっとそばにいるから」
花火が終わり、二人で家路についた。提灯の明かりが消え、夏の夜が静かに二人の未来を包んだ。
家に帰ると、母が「夏祭り、どうだった?」と聞いてきた。
「ア:楽しかったよ。ソラと一緒に見た、花火きれいだった」
「母:いいねえ。空くんと、素敵な思い出を作ったんだね」
蒼人は笑顔で頷き、部屋に戻った。夜、ベッドで今日のことを思い出しながら、蒼人は独白した。
「ア:…ソラと手をつないだ夜。俺、幸せだ。夏休み、もっとソラと一緒にいたい」
中体連の敗退と3年生の卒部を経て、新チームでの活躍が期待される中、夏祭りで二人の絆はさらに強まった。夏休みが始まったばかりの二人の未来は、輝く夜空のように広がっていた。