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海辺 Marbordo
失恋をしたから海辺にきた。
ありきたりなことをすると、すなおに泣けるのだ。
くりかえしくりかえし寄せる波。
ときおり長く伸びてくる波があって、わたしの足を濡らす。
彼とはおたがいに、恋の練習と思ってつきあいはじめた。
だから、別れることも、ひとりで涙を流すことも、未来のための練習だ。
いまごろ彼も、山でおいおい泣いているかもしれない。
きっとこれから経験する恋は、どれもうまくいかないだろうね。ふたりの意見は一致した。
わたしも彼も、自分であきれるくらい、いろんなことに不器用なのだ。
でも、人より遅れることを覚悟して、何度か失敗してみると、そのあとはブレイクスルー。
うまくいった状態を順調につづけられると、これまでのパターンでわかっている。
だから――十年のあいだ、何度も失恋してみましょう。
くりかえし、くりかえし、胸に恋ごころが寄せては去っていくのを見守りましょう。
再会したときに、きっとうまく伸びるように。
Fino