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卵 Ovoj
星がひとつ卵から生まれると、すぐに、まわりにある卵を空から落としてしまう。
なぜそんなことをするのか、理由はわかっていない。
地に落ちた卵は細かく砕け散り、欠片はすべて人間となる。
卵は次から次へと落下してくるので、地上はたくさんの欠片が混ざりあう場所だ。
欠片は、集まって元の卵の姿をとりもどせば空に帰れる、と皆がおなじ気持ちになるらしい。
いつも誰かをさがして、地上をさまよう。
ようやく見つけた、とたがいによろこんでも、それはほとんどの場合かんちがい。
ため息をつきながら空を見あげる生活は、変わらず続いていく。
卵からほんの少し早く生まれることができていたら、自分はどんな輝きを得られただろう?
欠片たちはやがていのち尽きて、ひとにぎりの土となる。
大地は、上空を占める星々への羨望と呪詛で、今日も肥え太っていく。
いろんな方角から、卵が砕ける澄んだ音が聞こえてくる。
Fino