表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

前世 Antauxvivo



冬の日曜日の午後、住宅地の小公園に沿って歩いていて、ピタリ、足がとまった。

突然、わたしの頭のなかに、別の人物の体験なのにわたしのものと思える記憶が、いきおいよく湧きだしてきたのだ。

ウェブ小説ではやっている、前世の記憶のよみがえりだな、とすぐにわかった。

わたしは、これからどんな物語が自分に始まるのか期待しながら、記憶が頭にたまるのを待つ。

でもどうしたことだろう、まだすっかりたまりきらないうちに、別の人物の記憶が湧きはじめた。

前世の前世でわたしが体験したことらしい。そしてそれも湧き終わらないうちに、さらに前世の記憶が現れ、もっと前のわたしの見聞きしたことまでが混ざり……待って待って、ちょっと待って!

――ポン。

音がして頭に軽い衝撃が生じた。わたしは我にかえる。

黄色いゴムボールが近くに落ちて跳ねる。

小さい子が、公園の柵のむこうに来て、ごめんなさいと言った。わたしは、むしろ助けてもらったので、笑顔でボールをひろって返してあげた。

わたしはふたたび歩きだす。なにを思って出かけてきたのか、つい先刻の記憶がよみがえったのだ。

どら焼きが食べたい。コンビニチェーンで売っている、両手でもつほど大きなどら焼き。

前世がもたらす大冒険よりも、間近にある小さな欲望を満たすことのほうがずっとだいじだ。

明日からまた、がまんして働く生活が変わらず続いていくとしても。




Fino




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ