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神様とお社と

公園につき、私は真っ先にあの木のもとへ行った。

走ったせいでせっかくまとめていた髪も、ぐちゃぐちゃだろう。


「七瀬、今行くからね。」


一人で手をつないだふりをし、先程の七瀬が言った言葉を思い出して口に出した。

一言一句あっているかわからない。

それでも、七瀬のもとに行けるなら。


「遊びましょ、遊びましょ。

みんなで一緒に、遊びましょ。

おいでください、アオイさん。

一緒に、一緒に、遊びましょう。」




____だれ?



言い終わると、さっきの女の子の声ではなく、七瀬の声が聞こえてきた。


「七瀬!!私だよ?ゆり、一緒に帰ろう?」



__________



先程とは違い、無言が返ってきた。


「七瀬…?」


_____ふふふ、嬉しい。一緒においで。


声は七瀬だが、七瀬じゃない。

一瞬で私はわかった。

そのことに気が付いた瞬間、まばゆい光が周りに出てきて、私は目をつぶった。




**********


あおちゃんと村の人から呼ばれる少女は、今日も一人で遊んでいた。

ただ、彼女を見た大人はいつも「一人で遊んでいる。」「一人でしゃべっている。」という。

そしてしばらくすると、「あおちゃんは特別だ。」なんて妄信的になるのだった。

今日もあおちゃんは、神社にある椅子に腰かけ、一人で話すのだ。


「あおちゃんね、今日ね選ばれたんだって。」

____選ばれたって?

「次のお祭りで、あおちゃん神様のとこに行くの。もう一緒に遊べないね。」

______

「すごいことなんだって。あおちゃん、いろんな人に褒められちゃった。」

_____うん。

「でもね、あおちゃん神様のとこにお引越しする前に、友達と一緒に遊んでみたかったな。」

_____じゃぁ、友達になろう。

「いいの?」

_____うん。こっちにおいで____



その日から、あおちゃんはいなくなった。

村の大人は必死に探した。

あおちゃんは次のお祭りで、村の守り神である”狐の神様”と呼ばれる神様に生贄としてささげるつもりだった。

大人は言った。


「あの子は特別だ。」


子供は口々に言った。


「あいつは化け物だ。」


**********


光に包まれてから、不思議な夢を見た。

よく考えれば夢というより、私が日誌で見た”あおちゃん”という生徒が消えたときのことだろう。

あおちゃんは、一人でいたわけじゃない。

私は、あおちゃんの横に白い靄があったのを見た。

でもあの声は……あおちゃんと似ていた。

目の前がまたほんのりと明るくなってきた。

赤い鳥居が見えてくる。


「これって……。」


私の前には不思議な雰囲気をまとった神社が出てきた。

じっと見ていると、中から誰かが出てきた。


「……七瀬?」


小さい女の子の横に七瀬が立っていた。

その女の子は私に気づくと話しかけてきた。


____だぁれ?

「……夏目ゆり。七瀬、その横に立っているこの友達。」

____違うよ。

「え……?」

____葵ちゃんは私の友達。

「…………。」

____あなたも友達になってくれるの?

「……ごめんなさい。すぐにとは言えない。」

____どおして?

「友達って口約束でなるものじゃないから。」

_______でも葵ちゃんは言ってくれたよ?ゆりちゃんじゃなくて私が友達になるって。


私の代わり?

七瀬は私の代わりにこの子と友達になる約束をしたということなのだろうか。


「……どういうこと?」

______あおちゃんが死んじゃったの。だから私、ずっと1人で寂しかった。そしたらふたりが来てくれたんだよ。

「……2人?」

_______うん、あそっか覚えてないのか。


女の子の言っていることがよく理解できなかった。

覚えてない。

七瀬と私の記憶の違いに関係がありそうだった。


______ゆりちゃん、私本当はあなたと友達になりたかったの。でもね、葵ちゃんがゆりちゃんの代わりに私を連れて行っていいって言ったから葵ちゃんにしたんだよ。

ふふ言っちゃったー♪


いたずらっ子な笑顔を見せて楽しそうに女の子は言った。


______ふふ、でもまさかゆりちゃんまで来てくれるなんて、私嬉しい。

これからずっと一緒に遊びましょう。


女の子の言葉と同時に隣にいた七瀬は消えて、私と女の子のふたりになった。


______ねぇ、何して遊ぶ?おままごと?それともかくれんぼ?

「……七瀬は?どこに行ったの?」

______なんかね、やっぱりダメだったからあおちゃんのお部屋に行ったの。ゆりちゃんは大丈夫だもんね♪

「……貴方は誰なの。」

______私?んーとね、みんな狐の神様って呼ぶよ?あ、あおちゃんは狐ちゃんって呼んでた!

「…ダメになったってどういうこと?」

______うごかなくなっちゃったの。だんだん元気がなくなって、なんにも話してくれないの。あおちゃんも同じだったなぁ。

「……七瀬は戻るの!?」

______わかんない。でも、元の場所に戻ればいいんじゃない?

「……七瀬を連れて帰る。返して。」

______無理だよ。だって君、お願い使い切っちゃったでしょ。だぁめ。お願いは1人1回ね。

「……出る方法はないの?」

______わかんな〜い。あおちゃんも帰らなかったし


言い方がものすごくムカついたが、大人の冷静さが落ち着きを取り戻させた。


「あおちゃんってだれなの。」

______んーとね、この子だよ!


そういうと神様は自分のことを指した。


「……どういうこと?」

______えー、わかんない?私の体、あおちゃんなんだ!!


微笑む姿は子供の笑顔そのものだったが、私には恐怖を感じた。


「七瀬もあなたの体にするつもりなの。」

______わかんない。あおちゃんが壊れたらそうかもね。

「七瀬はどこ。」

______あの中だよ。


意外と神様は素直に教えてくれ、私はお社に向かった。





______遊びましょ、ゆりちゃん一緒に遊びましょ。ふふ、帰らないで欲しいなぁ





最後まで呼んでくださりありがとうございます!

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