2日目の夏祭り、
夏祭り2日目。
私は、黒田先生と夏祭りに行くことになり、校門の前で待ち合わせをすることになった。
わざわざ、学校の前にしようと言った際、黒田先生は
「え~、わざわざ休みの日に学校に行くんですか?」
なんて言っていたが、二人の移動の中間点を考えると納得してくれた。
そんな私は、待ち合わせの時間より1時間早く学校にいた。
昨日花火を見た、自分の受け持つクラスの教室の扉を開けた。
「ねぇ、いる?」
誰もいない教室に私の声が消えていった。
外からはヒグラシ……だっけ。
夏の夕方の音がしている。
「……じゃぁ、いいや。」
昔は、私もこの教室で授業を聞く側だった。
窓際の……そう三番目のここ。
夏休み前の席替えでこの席になったから、日光が当たってすんごい暑かったっけ。
七瀬は確か、私の斜め前だった。
あの子はいつも授業中、ずっと黒板を見ていたけど、ほとんど聞いてなさそうだったな。
でも、授業態度としてはいい方だったんだと、授業をする側になって思う。
たまに何かを必死になってノートに書いていて、あとで聞いたら何も見ないで有名なキャラクターとか
猫を描いていたって言ってた。
本当にしょうもない。
だからか、テスト前はよく私に、
「ねぇ、解説読んでもわかんないんだけど!!ゆりちゃん、ヘルプ!」
なんて私の机にワークを持ってきてたっけ。
そういえば、あの時はまだタブレットなんて使ってなかったから、教科書が重いはずなのに七瀬のかばんはいつも軽かった。
「家で勉強なんてしないよ!持って帰っても意味ない!」
って七瀬は言って、次の日になって、
「やばい!宿題のワーク忘れた!見せて……はダメよね……。」
結局、一緒に七瀬の宿題を朝にやってたっけ。
結構私、七瀬と過ごしてたな。
「……七瀬、好きだよ。」
「呼んだ?」
消えかけた自分の声耳にが入ると同時に、先程まで思い出していた彼女の声が入ってきた。
「な!?」
「ゆりちゃ~ん!私も大好きだよ~!」
大きい声を出しながら七瀬は私に抱き着こうとして、すかっと通り抜けていった。
「ありゃ、やっぱりだめか~。まだ、生きてるんだけどな~。」
「実体がないんだから無理でしょ。というか、また急に出てきて!」
「えへへ、だって玄関見たらゆりちゃんの下駄箱に靴があったからさ!飛んできたよ~!」
飛んできた、たぶん比喩とかではなく本当のことだろう。
「ゆりちゃん、やっぱり私のこと大好きなんだね♪」
「……大好きとは言ってない。」
「えぇ!言ってたじゃん、七瀬~大好き~会いたいよ~!って」
「耳どうなってんのさ。」
「えへへ♪あ、そういえばゆりちゃんは今日もお仕事?」
「いいえ、今日は黒田先生…はら昨日一緒にいた先生と夏祭りに行くの。」
「なにそれ!!いいなぁ、私も行きたい~!ねぇ、連れてってよ!」
「いけないんでしょ?」
「えへへ、地縛霊みたいでしょ?」
「なんかリアルすぎて全然笑えないんだけど……。」
「えへ♪」
彼女の明るい声は、懐かしいあの頃のままだった。
楽しかった、まだ七瀬がいなくなる前の。
「ねぇ、やっぱりさ、探そうよ。」
「ん~何を?」
「七瀬が目を覚ます方法。一緒に。」
「…………無理だよ、ゆりちゃん。」
「無理じゃない!なんで?私は七瀬とこれからも一緒にいたい。」
「……いるじゃん、今一緒に。」
「そうじゃない。七瀬と一緒にちゃんと夏祭りに行きたい。一緒に年を取りたい。」
「……私もそうだよ?でもさ…」
「お願い、何年かかってでも七瀬を幸せにする。だから、私と一緒にいて。」
私が話し終えると、七瀬は目を見開いた後、嬉しそうに目を細めた。
「なにそれ笑 プロポーズじゃん笑」
「ちがっ!!」
「ふふ、いいよ。私も、一緒にいたいもん。」
「……ありがとう。」
「えへへ、たのしみだなぁ百合ちゃんとお祭り♪」
「あ!」
「え、なに?」
「ごめん!私行かなきゃ、黒田先生待たせてる!!」
「え、あ、うん。」
急いで教室を出ようとすると、後ろから、七瀬が私を呼んできた。
「ゆりちゃん!またね!」
「うん!また!」
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そのまま走って校門の前に行くと、まだ黒田先生は来てなかった。
「間に合った…。」
私が外に出ると同時に、黒田先生が来た。
「夏目先生、すみません!遅れました!」
「いえ、大丈夫ですよ、ちょうど私も今来たので。」
「夏目先生ってイケメン度高いですよね、さらっとそういうこと言っちゃうんですもん。」
「本当に今来ただけですから。」
「ふふ、ありがとうございます!じゃぁ、行きましょうか!」
本当に今来ただけなのだが、カッコつけたみたいになってしまった。
別にそういうつもりはなかったのだが……。
「夏目先生、何食べます?」
「私はたこ焼きとか好きですかね。」
「いいですよね~!焼きそばも外せないですし、チョコバナナも!あ、りんご飴とかいちごあめもあったらいいですね!」
「食べ物ばかりですね…笑」
「はい!今日はいっぱい食べますよ!!」
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「ふふ、いっぱい買えました♪」
黒田先生は、あの後結局、焼きそば・たこ焼き・りんご飴・チョコバナナ・くるくるしたポテト?を買っていた。
彼女曰く、家で焼きそばとたこ焼きは家でゆっくり食べるんだとか。
「夏目先生、今日はありがとうございました!では」
「こちらこそ、また。」
黒田先生と別れて、グラウンドの知覚にあるベンチの方に行った。
学校はもうしまっているだろう。
ベンチに座ってから、私はポリ袋から、先程買ったたこ焼きを出した。
「お!たこ焼きだ!」
「やっぱり来た。」
「やっぱりって?」
「七瀬が来るかなって思って、たこ焼き出したら案の定。」
「えへへ!まんまとつられちゃった♪」
「たこ焼き、ほんとに好きだよね~」
「うん♪タコが大きいといいんだよね!」
「で、なんで口を開けて待機しているわけ?」
「いけるかなって?」
「幽霊って、香りを食べるらしいよ。」
「え!食感楽しめないじゃん!!」
「ということで、これは私が食べます。」
「えぇ~。」
私がたこ焼きを食べ始めると、うらやましそうな顔でこちらを見てきた。
「うらめしやってこういう時に言うのか!」
「多分違うと思うし、時々幽霊ギャグみたいなの挟んでくるよね。」
「えへ、ばれた?戻るって決めたからには、今しかできないじゃん?」
「そうね、で、いままで戻る方法って何試したの?」
私が聞くと、彼女はわざとらしく腕を組み、悩むそぶりを見せた。
「ん~と、全力ダッシュで外に出る、もう一回飛び降りてみる、寝てみる!」
「……まじめにやってたの?」
「うん!この頭でしっかり!」
「……そっか。」
「なんか哀れまれている気がするんだけど!」
「気のせいよ。」
「ん~でもこれ以上なんか案ある?私は思いつかない!」
「……そうね。」
七瀬が戻る方法……。
正直、私もなにも思いついていなかった。
「あ!ゆりちゃんに引っ張ってもらうのは?」
「私たち触れないでしょ。」
「あ、そうか……ん~。」
「あ。」
「ん?なんか思いついた?」
「前に、聞いたことない?この学校の七不思議的な話。」
「七不思議?なにそれ、え、ゆりちゃんもしかして怖い話しようとしてる?」
「まぁ、そうなんだけどさ。お化けとかじゃなくて、この学校ってもともと近くに神社があってそこの神様が学校の子供たちを守っているって話。」
「あぁ、なんか聞いたことあるかも?」
「その神社のお社に入る方法があるらしくて、もし神様に会えたら願いをかなえてくれってやつ。」
「あ!やったことある!」
「え。」
「一緒にやったじゃん!覚えてない?」
「……えぇ。」
「高2の時、ほら、夏休みが終わった後!」
「ごめん、覚えてない。」
「えぇ、おかしいな…」
七瀬は不思議そうな顔をして悩んだ様子を見せた。
一緒にやったことがあるといわれても、私はその方法が思い出せなかった。
たこ焼きを食べ終え、時計を見ると夜の22時を指していた。
「もうこんな時間。」
「あ、ほんとだ~ゆりちゃん大丈夫?」
「えぇ。ごめん、明日また来る。」
「うん、気を付けてね。」
七瀬と別れ、帰り道には、先程まで行われていたお祭りの提灯がまだともされていた。
この光も明日には片づけられるのだろう。
明日は、図書室に行って、あるかわからないが、資料とか探してみることにしよう。
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___遊びましょ。遊びましょ。
___一緒に、こちらで、遊びましょ。
___さぁ、おいでください××さん、一緒に一緒に遊びましょ。
_______だれ、?
最後まで読んでくださりありがとうございます!!
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