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オタクに厳しいギャルが隣になった

作者: 荒三水

「あ~オタクぶっ殺して~」

 

 ギャルと隣の席になってしまった。

 彼女は五秒に一回はオタクぶっ殺したいと言っている。

 かくいうぼくはゴリゴリのオタクである。やばいよ、オタクだってバレたらぶっ殺されるよ。


「ねえ、オタクぶっ殺したくない?」

「そ、そうっすね」

「だよね~」


 急に同意を求められたのでうなずいてしまった。

 しかしなるほど、ぼくもそっち側に擬態していけばいいのか。

 

「オタクとか絶滅すればいいのにね」

「そうそう、マジでそれ」

「紐で逆さにつるし上げて顔面から冷水に出し入れしたいよね」

「いやそこまでは言ってない」


 そこまでする気はないようだ。意外に優しいのかもしれない。

 

「と、ところでなんでそんなにオタクを毛嫌いしてるんですかね?」

「だってギャルはオタクに優しいと思ってるからキモいじゃん? そういう奴いたらマジでぶっ殺したいわ。許さねえ」


 やばい、今ぼくのカバンの中には『オタクにだけ超絶優しいギャル子さん』の6巻が入っている。

 1巻ならちょっと間違って買ったも通じるけど6巻とかお前完全にやってんだろと詰められる。

 しかも昨日発売したばかりの新刊である。


 しかしここは逆転の発想だ。

 あえてこれを見せつけ興味をもたせそして読ませることにより、彼女をそっちの道に目覚めさせることができるかもしれない。

 オタクを気持ちよくさせてくれる素晴らしいマンガなのだ。彼女にもオタクに優しいギャルの良さを布教したい。


「ああっ、手が滑ったぁ!」


 ぼくの手が滑ってギャル子さんの六巻を床に落とした。

 すぐに隣のギャルは本を拾い上げた。表紙に目を留めて、じっと見つめたかと思うと、 

 

 ーービリイイイイッ!!


 あああっ!?

 勝利ポーズで服を破くときのスト2バイソンのように本を破ったぁあああ!


「な、なんてことするんだ!」

「え? あっ、ごめんつい! オタクに優しいギャルって文字を見た瞬間に無意識のうちに破ってた!」

「いやどんだけだよ! どうしてくれるんだよ、まだ読んでないのに! 昨日買ったばっかりなんだぞ!」


 これにはさすがのオタクくんもブチギレである。

 この女本当にギャルとしての心がないのか。


「当然弁償してくれるよね?」

「え?」

「本屋で買ってきてくれる? 今日中に」

「む、無理に決まってんだろ! ギャルが自分でそんな本買ってたらやばすぎるだろ!」


 オタクに優しいギャルの漫画を買うオタクを毛嫌いしているギャル。

 これは相当な羞恥プレイである。一体どんな顔でレジに持っていくのか見ものだ。

 

「ぼくも一緒に行ってあげるから。ね?」

「いまここで金渡すからいいだろ、多めに出すから! 千円でいいだろ、ほら!」

「いやむしろ千円渡すから買ってきて! 買うところを見せて!」

「なんなんだよお前その勢いやべえよ!」


 ぼくは勢い余って千円を二枚押し付けようとしたが拒まれた。

 ギャルは思い出したように冷静な顔になった。 


「てかちょっと待って。だいたいさ、あんたなんでそんな本持ってるわけ?」

「な、なんでって?」

「もしかしてオタクなん? オタクに優しいギャルが好きなオタク?」


 ここにきて一気に形勢逆転である。

 まずい、このままではぶっ殺されてしまう。


「と、友達に試しに読んでみろって無理やり押し付けられて……」

「昨日買ったばっかって言わなかった?」

「いや? 言ってないっす、言ってない」

「ふ~ん? でもいきなり六巻っておかしくない? 普通一巻読ませるよね」

「そ、それは六と一を間違えた……」

「これ最終巻って書いてあるし」

「え? ええっ!?」


 ぼくは身を乗り出して破けた本を奪い取る。


「う、嘘だろ!? ここで終わるのかよ! なんでだよぉ、どうしてなんだよおおぉお!! 馬鹿野郎ーっ!! 松田ァ! ふざけるなーっ!」


 ちなみに松田はマンガの作者の名前であって最後に銃を撃つ人ではない。

 

「うるせえよお前! めちゃめちゃ好きじゃねえかよ!」

「うっ、うぅっ……」

「お、おい、泣くなって」


 ギャルはあやすように優しくぼくの背中をさすってくる。

 

 

 計 画 通 り


 ご覧いただけましたでしょうか。

 結局ギャルはオタクに優しい。これにて証明終了。


 オタクが本が出るまで完結するのを知らないわけないだろう。

 半年以上前に知ってすでに泣きわめいたわ。


「だから泣くなって……」


 ここまで来たら彼女もオタク落ち待ったなし。

 こうしてまた世に一人、オタクに優しいギャルが生まれた。


 本を抱えてうずくまりながら、ぼくはちらりと横目で様子をうかがう。

 ギャルはやれやれと肩をすくめたあと、ポケットからスマホを取り出した。

 

「なんかずっと泣いてるしマジキモいわこいつ。動画撮ってアップしよ」


 えっ。

 

 その後、ぼくは彼女と目が合うたびに肩パンされるようになってしまった。ありがとうございます。


調子がよくて30分ぐらいでかけた

とりあえずパロネタが古い


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