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甘い海  作者: 砂糖 蜜姫
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天秤

坂本智、智ちゃんとの交際が始まった。

秋雄との両立ができるのか不安ではあったが。


秋雄とは長い付き合いで、週に1回会えば良かった。平日の大半は智ちゃんと過ごした。

秋雄はもともと自由な人なので、こちらから誘わないと合う日程を決めない。

この6年間、ほとんどは私が日程を決めて会っていた。


智ちゃんとの時間は私に新鮮な風を吹き込んだ。

付き合いたての彼氏と彼女ってこんな感じだったかな・・・。

でも毎日ケンカもしながら楽しく過ごしていた。


だんだん秋雄へ連絡することも減っていった。

のんきな秋雄はそれに驚くことも疑うことも無く、時間の空いた時に毎日1度電話をかけてきた。

そして私が何も言わなければ会うことについては触れてこなかった。


このときから私の気持ちは半分以上智ちゃんに傾いていたのかもしれない。



「舞、オレ今までこんなに人を好きになったことないんだ。

これから自分が好きすぎておかしくなりそうで怖いよ。」

「何を言ってるの?結婚して子供作ってる人が!そんなこと言ったら嫁と子供がかわいそうだよ。」

「本当だよ。今までスポーツ一筋できたから、今の嫁とも7,8年付き合ったけど

会ったのは月に1,2回だよ。長く付き合ってきたし、

この先恋愛することもないだろうって思ってた。

嫁は年上で子供や結婚に焦ってた。それで結婚するか、って感じで結婚したんだよ。」


そんな適当な話があるのか?二人は3年前に入籍した。

結婚式も挙げていなければ、新婚旅行もない。ドレスとタキシードで写真を撮っただけだと言う。

結婚式に大きな夢を描いている私には信じ難い話だった。

でき婚でもないのに。


彼の話では、あるとき嫁が見たことない腕時計をしていてそのことについて問い詰めたら

それは他の男性にプレゼントされたもので、最終的には彼氏がいる、と白状したらしい。


その日から彼は嫁に対して「汚い、汚らわしい女」という感じにしか見えなくなって、

会話もほとんど無く、嫁は実家に帰りっぱなし。

それから夫婦関係も途絶えたという。

それがつい2,3週間前の話なのか数年前の話なのか・・・

いつの話なのかは聞かなかった。



なんか作ったような真実味の無い話にしか聞こえなかった。

それはあの夜の彼がとても手馴れた感じで私に触れ、甘い言葉を並べていたから。


あの欲情ぶりは夫婦関係は確かに最近途絶えているのだろうが、離婚までいくような夫婦なのか?


彼の電話が鳴っていた。

「電話だよ。」

「うん。そのままでいいよ。」

なんかあやしい。女の前で取れない電話?

着信を見ると「奈美」とでていた。


「奈美さんから電話だよ。かなりしつこくかかってきてるけど出たら?」

ちょっと嫉妬して言ってみた。

「いいよ。無視してて。」と彼は携帯をバッグにしまった。


夫婦の会話が無いとか言って、ちゃっかり嫁は旦那の帰りを待っているではないか。

心配して電話して「もう、今どこなの?理奈が待ってるわよ。」なんて家族の会話があるのだろう。


だんだん私は悔しくなってきた。

「もう帰ろうか。」と言ってその日は家に帰った。




このままこの人と一緒に居ても、先に籍を入れた嫁と生まれた子供には追いつけない。

何が彼女だ・・・。

人の旦那のくせに。

私はこの人と結婚したとしても2番目の後妻だ。


秋雄とこのまま結婚したら前の人の心配なんてしなくて、二人の未来だけ考えてればいい。

二人とも初婚で新婚旅行に新婚生活に、子供に・・・。

親は孫ができたと喜んでくれるだろう。


私と秋雄は互いに実家で家を行き来しており、家族ぐるみで仲良しだった。

うちの両親は秋雄と結婚すると思っているし、秋雄の両親や兄、姉夫婦もそう思っていると思う。

秋雄の母親は私が秋雄と付き合ってくれたおかげで大学も卒業できた、

「舞さんが秋雄の尻をたたいてくれたおかげよ!本当にありがとう。」

と学生時代を思い出しては、よく私にお礼を言ってくれた。


秋雄の家族は皆ほのぼのとしていて、優しかった。

この家族となら、結婚しても嫁姑問題なさそうだし仲良くやっていけるな、と思っていた。


夜は秋雄と電話し、少し話しをして、

その後は智ちゃんと話をして、ベッドに入った。


「ねえ、オレのこと嫌いになった?」と智ちゃんから不安げな声の電話。

「さっき電話切ったばっかじゃん。なってないよ。今日は近くに嫁はいないの?」

「隣の部屋にいるけど声が聞こえてもいい。舞、愛してるよ。」

「うん。ありがと。いつもそうゆうこと女の子に言ってるの?

奥さんとエッチするときも私みたいに抱くの?」

なんかイライラして嫌味が湧いて来る。


「何を言うんだい?急に。オレは舞だけだって。」

「離婚するとか私と結婚するとか、何も始まってないのに信じられない。

何を根拠に私だけなの?何が本当か分からないよ。」

「嘘は言ってない。」


夜中の電話でのケンカは長引く・・・。

どんなカップルもそんなもんだろう。

最後は智ちゃんから

「もういい。そんなに言うなら離れよう。」の言葉が。


悲しくなって泣いた。

そんな簡単に別れようっていえる程度の愛情で

今までこんなに人を好きになったことが無い、だって?!信じた私がバカだったのね。


その夜はもめにもめて別れないという結論で眠った。



二股って大変だなぁ~。

どっちにどれくらい気持ちをかけていいか分からなくなる。

でも将来を考えれば、秋雄と結婚した方が幸せになれるかな。

でも様々な条件を外せば、

私の好みは熱いハートと厚い胸板を持った智ちゃんであった。


やばい。私どんどん智ちゃんに魅かれてるのかも。

でも熱すぎてぶつかるし別れようなんて簡単に言っちゃうし意味わかんない。




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